「東大関連スタートアップでインターン!?」は、東京大学の完全子会社のベンチャーキャピタルである東大IPCと、東大の学生メディアUT-BASEが連携して執筆する連載記事です。
東大関連スタートアップでインターンをする現役学生と、その企業の創業者やCEOの方などをゲストにお迎えし、どんな思いでどんなお仕事をされているのかを率直にお聞きして記事にしました。
この記事を読んでくださっている皆さんに「スタートアップで働くこと」の魅力が伝われば幸いです。どうしてこのような記事を執筆することになったかについてはこのシリーズの第0弾の記事をこちらからお読みください!
※広報等を含め、当企画において、UT-BASE及び東大IPCはあらゆる機関から一切の金銭その他の報酬を受け取っておりません。事実に基づき客観的に記事執筆を行っていますが、事実誤認等がありましたら早急にお知らせください。
はじめに
東京大学工学系研究科航空宇宙工学専攻の修士2年の西河さん。LeadXの創業者(CEO)の前田さんが部活の先輩だったこともあり、1年ほど前からエンジニアとしてインターンを始めました。しかし西河さんは総合商社にビジネス職として内定を貰っているそうです。エンジニアとしてのインターン経験は総合商社のビジネス職にどう活きていくのでしょうか。また、そうではなく大企業への就業経験などがないまま起業をした前田CEOはどのようなキャリア観を持っているのでしょうか。「社会へのインパクト」を強調するお2人の思いが伝わってきました。
⓪基本情報
CEO:前田さん
東京大学法学部卒。東京大学大学院法学政治学研究科中退。
学部時代は、4年間運動会ラクロス部に所属していた。弁護士を志しロースクールに進学するも、東京大学の講座「アントレプレナー道場」で刺激を受け、スタートアップ起業の道を歩むことを決意。100社以上の製造現場を訪問する中で、幾多もの根深い課題を抱えている現実に直面したことが、事業に邁進する原体験となっている。
学生インターン:西河さん
東京大学工学系研究科航空宇宙工学専攻修士2年在籍。
学部時代はラクロス部に所属していた。
学生生活の中で、日本の宇宙業界が官需中心であることに課題を感じ、宇宙事業がより世の中の役に立ち、民需中心の業界にするために、総合商社への入社を決意。
大学院卒業までは、研究やインターンに全力を注ぐことで、技術者側の知識・経験を積み、将来に活かしたいと考えている。
LeadXでは、研究開発やフロントエンドの開発に従事。
取材先:株式会社LeadX
中小製造業のDXを推進するSaaS「匠フォース」を開発している、東大発ベンチャー企業。2020年に東大ラクロス部の同期メンバーにより創業された。
「フェアで持続可能な、誇れるモノづくりを。」をミッションに掲げ、現在は適正価格での取引を推進するための見積支援システムを、中小部品メーカー向けに提供している。今後も、”匠の力を拡張する”ソリューションを継続的にリリース予定。
募集職種:エンジニア・ビジネス(経営企画)
表記:CEOの前田さん - (M)・インターンの西河さん -(N)
①どんなスタートアップ?
ーーーはじめまして。前田さん、西河さん、今日は宜しくお願いします。スタートアップで働く楽しさややりがいをいっぱいお聞きできればと思います。早速なのですが、まずはLeadXさんがどんな会社なのか簡単に教えてください!
(M)宜しくお願いします。私たちは、中小製造業、いわゆる「町工場」向けの業務システムを開発しています。日本はものづくりの国ですが、日本の製造業は技術承継の難しさや国際競争力の低下といった問題を抱えています。実際、そうした中小製造業業界では、今やその7割が赤字企業になってしまっているんです。
ーーー「下町ロケット」とかの世界ですよね。思ったより赤字企業の割合が多いんですね。
(M)もっと中小製造業で働く人たちの努力が正当に報われて欲しいという思いを持った私たちは、彼らが抱える課題を解決する業務システムを開発することとなりました。
中小製造業が抱える具体的な課題として、経験や勘に頼って値決め(※編集部注:製品を販売する価格の意思決定のこと)をしていることがあります。見積もりや値決めの際に、社内で標準化が進められていないとも言えると思います。
そこで私たちは、中小企業が儲かるような値決めをしていこうというプロダクトを作っているわけです。最終的には町工場の管理業務を一気通貫して自動化・省力化するソフトウェアを開発したいと考えています。なので、カッコよくまとめると、「中小製造業のフェアトレードを促進する」サービスを開発している会社ということになると思います。
ーーーありがとうございます。儲かるような値決めができない背景には、下請け業務が多いからという理由もあるんでしょうか?
(M)あると思います。ものづくりの世界では「毎年原価を下げる」雰囲気があります。しかし今のような、ものの値段が上がっていかざるを得ない状況下で原価を下げるのは大変難しいわけです。ですから、説明可能な値決めをして、発注元ともきちんと交渉・対峙をすることが必要だと思います。
ーーーちなみに、値決めを適正化するには何が必要なんでしょうか?
(M)値決めは大変複雑で、多くの要素から成り立っています。例えば原価、市場価格、過去の受注価格などです。
私たちが開発しているプロダクトは、各社で標準化されたルールに基づいて、見積算出を行うことができます。それだけでなく、AIがレコメンドする過去の類似案件情報を参考に、価格の適切さを判断することが可能です。こうして、適正かつしっかり儲けることができる値決めができるようなサポートをするわけです。
ーーーなるほど!ありがとうございます。LeadXさんのご活動とその背景事情がよくわかりました。
②CEOと学生インターン、それぞれのやりがいとは…?
ーーーさて次に、お二人がどんなやりがいを感じて今のお仕事をされているかをお聞きできたらと思います。まずは西河さんからお願いします。
(N)私の行う業務としては、画像処理を行うAIの研究開発と、フロントエンド、つまりプロダクトのUIの開発の2つが主です。やりがいという点では、やはり人数が少ないからこそのやりがいを感じることが多いですね。例えば、組織全体を俯瞰することができるので、学生インターンでも「ビジネス+プロダクト」という事業の全体像を認識することができるんです。あと、お客さんからのフィードバックを貰えることもやりがいの1つですね。
自分が開発したAIの機能をお客さんに見せたら、「まさにこれを求めてたんだよ」と言って貰えた時は本当に嬉しかったです。
ーーーなるほど。自分の書いたコードがプロダクトにすぐに反映され、それがお客さんにもすぐ届くというのはスタートアップだからこそのやりがいかもしれませんね。前田さんはいかがでしょうか。
(M)私はCEOなのでビジネス全般を見ているという感じです。具体的には営業・ファイナンス・採用・カスタマーサクセス(※編集部注:満足度を向上させることをはじめ、顧客の「成功」に向けて働きかけをすること)などですね。やっていることはこれと言って1つには定まらないですね。やりがいについては大きく分けて3つあります。
まずは、お客さんに喜んで貰えることですね。120社くらいのお客さんと話す中で、「これは困っている、解決して欲しい」という声を聞きます。そんな中で、自分たちのプロダクトを「いいね」「ありがたいね」と喜んで貰えるのが一番大きなやりがいです。2つ目としては、一緒に働くメンバーが優秀で逞しく、刺激を貰える点ですね。スタートアップは「死ぬ気で努力しないと成長しない」世界です。ヒリヒリと緊張した毎日を仲間と共有できるのは本当に楽しいですね。
ーーーヒリヒリ…ですか!一見厳しい世界にも見えますが、「だからこそ」の部分も大きそうですね。
(M)そうですね。そして3つ目はこの事業を大きく成長させることができた時に、私たちが日本社会に与える影響がとても大きいという点です。ちょっと傲慢かもしれませんが、自分たちの存在があれば、日本のものづくりの競争力が向上するのではないかとすら思えています。自分たちの会社が存在した時と、そうでない時の社会における「差分」が大きいことにワクワクしますね。
ーーーやはり社会へのインパクトの大きさはやりがいの1つなんですね。ありがとうございました。
③インターン生の「ホンネ」
ーーーさて、ここからは西河さんが普段思っていらっしゃることを、是非とも率直にお伺いできればと思います。西河さんは総合商社に内定されているとお聞きしましたが、LeadXさんのインターンでは、総合商社でのビジネス周りのお仕事をするこれからに向けてどんな経験を得られたと思いますか?
(N)そうですね。どんな会社であれプロダクトがあるわけですが、フロントエンド(UI/UX)・バックエンドがどのようなシステムで動いているのかを知った上でビジネス職に就くのと、そうでないのとでは全然違うだろうと思いますね。
それに加えて、ビジネスにおける大切なことを学べたことも大きいです。CEOの前田さんと直接議論する機会が多かったので、事業がどういう風に動いているのかがわかりました。前田さんを見ていて、「仮説検証」・「足を動かすという泥臭さ」は特に大事だと前田さんを見ていて痛感しましたね。
ーーーなるほど、ありがとうございます。前田さんにも率直なお気持ちを伺いたいことがあります。西河さんは新卒で総合商社に内定されていますが、正直「LeadXに来て欲しい」という気持ちはあったんですか?
(M)実はそれはあまりなかったんですよ。新卒の際に「東大卒です」と言えるのは人生で一回だけなわけですよ。この新卒切符はとても大事ですね。それに加えスタートアップのうちはまだまだ教育体制もしっかりしていません。まずは大企業で働いてスケールの大きいビジネスを学んでみるのも良いんじゃないかなと本気で思います。
ーーーでもご自身はその「切符」を放棄して起業されましたよね(笑)。
(M)そうなんですよ。正直、学生起業は成功確率が低いので、社会人として揉まれて(編集部注:新卒で大企業に入るなど)から起業した方が良いのかなとは思いました(笑)。しかし、起業に必要なスキルは、実際起業していくことでしか得られないと思い、まずは実践してみるのが一番早いと感じました。もちろんそれだけでなく、自分の気持ちに素直に生きていたいという渇望や、共同創業者の2人とチームで何かしてみたいという気持ちも大きかったのですが。
ーーーなるほど、そんな思いがあったんですね。さて、再び西河さんにお伺いします。西河さんはまた別のスタートアップでもインターンをされているそうですね。同じスタートアップで比べ際にLeadXさんとの違いはどんな点にありますか?
(N)私は宇宙開発に関わるスタートアップでインターンとして仕事をしていますが、「フェーズ」(※編集部注:スタートアップはその成長段階や規模などによって区分されることが多い)の違いは非常に大きいなと感じます。LeadXは数人しか働いていない一方、そこでは50人程度の社員・インターンが動いていました。なので、LeadXでの仕事と違い、自分が関わる仕事の範囲は小さく、経営層との距離の近さはあまり感じません。
ーーーなるほど。経営層を間近で見ることができるのは、LeadXさんが創業して間もないからこそなのではないかということですね。他にもLeadXさんで働いて「ここが良いな」と感じる点はありますか?
(N)やはり、自分のペースで勉強できたり、自分の意見が結構通ったりするという風通しの良さはありますね。実際、フロントエンドについては自分で勉強していくことで学びましたし。
ーーー価値観や課題感といった「想い」の部分でも影響は受けましたか?
(N)それはありましたね。私も「製造業はどうにかしないといけないな」と思うようになりました。こう思うようになった背景としては、実際に工場に足を運び現場の方がお話する中で「解決せねばならない課題」を目の当たりにしたことが大きかったと思います。
(M)西河くんはもともと製造業やAIに深い関心や知見があったわけではないのですが、成長率が半端なかったんですよね(笑)。僕も一緒に仕事をしていて多くの刺激を受けました。
ーーー前田さんとして「こんな学生をインターンとして採用したい」みたいな感覚や基準はあるんでしょうか。
(M)もちろんエンジニアとしてのスキルも重要です。しかし、優秀な学生であればスキルは後追いで何とでもなるのではないかと思っています。なので、カルチャーやモチベーションがマッチする方と一緒に働けたら良いなと思います。
ーーー製造業へのパッションや、大きな課題を解決したいというマインドセットといったところでしょうか。よくわかりました、ありがとうございました。
④それぞれの将来の展望を教えてください!
ーーーそれではお二方が今後、どんなことにチャレンジしたいか、どんなことを達成したいかについて教えてください!
(M)正直言って、今作っているプロダクトはやりたいことの1%に満たないと思っています。今できることを1つずつ積み上げてLeadXの事業を成長させ、日本のモノづくり業界が「努力が正当に報われて、グローバルに飛躍していく」ようになる未来を実現したいです。
私個人としては、刺激的なメンバーと一緒に面白い事業を作っていければ良いかなと思っています。
ーーーありがとうございます。西河さんはいかがでしょうか。
(N)私は航空宇宙工学科に所属していますが、日本の航空宇宙産業は官需中心の業界ということもあり「技術職にお金が流れていないな」と感じる場面がとても多かったんです。そのため、航空宇宙工学科の先輩方も、コンサルなどの違う業界に進まれる方も多かったと記憶しています。
ーーー確かに、JAXAの技術職でさえ、あまりお給料が良くないという話を聞いたことがあります。
(N)そうなんです。そして民需をもっと盛り上げるためにもビジネス側で頑張りたいなという気持ちが芽生え、航空宇宙産業に強い総合商社に進むことにしたんです。航空宇宙産業の技術・研究における「努力が正当に報われて欲しい」という私の「展望」は、LeadXないしは前田さんと重なる部分もかなりあるかと思います(笑)。
ーーーお二人ともステキな展望をお持ちですね!ありがとうございました。
⑤学生へのメッセージ
ーーー最後に、現役の東大生にメッセージをお願いします!
(N)LeadXは先月に「匠フォース」をリリースし、これからますます開発がスピードアップしていきます!スピード感のある開発の中でどんどん自分の力を磨きたい、自分が書いたコードで日本のモノづくりの世界を変えていきたい、そういった向上心や熱い気持ちを持った人と一緒に働けると嬉しいです。情熱に満ちた社員さんと共にお待ちしております!
また、うちの会社でなくても学生のうちからインターンで社会に近い場所で働けるのは、貴重な経験だと感じています。ぜひ皆さんもどんどんインターンをして、学業・研究とはまた違った刺激で充実した学生生活を送ってください!
(M)私もまだまだ挑戦の真っ只中ですので、偉そうにお伝えできることはないのですが、日頃から意識をしているのは、「①志を高く掲げ続けること」、そして、「②多くの手数を打ち続けること」です。
自分自身が人生で何を成し遂げたいかという壮大な問いの答えは、すぐに見つかるものではないと思いますので、焦る必要はありません。
私自身、スタートアップに興味を抱いたのは大学院に進学してからですし、現在の事業領域に挑戦しようと覚悟を決めるまでは、2年弱かかりました。志高く手数を打ち続けられれば、自ずと道は拓かれると信じています。ぜひより良い社会を創造していきましょう!起業やスタートアップに関するご相談があれば、お気軽にご連絡ください!
ーーーお2人とも本日はありがとうございました。
⑥おわりに
ここまで記事を読んで頂き、ありがとうございました。LeadXさん、またはこうした東大関連スタートアップでインターンをしてみたいと思ったそこのあなた!
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