多和田萌花さん

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多和田萌花さんプロフィール
茨城県の公立高校出身。2017年に文科三類に入学し、後期教養学部教養学科総合社会科学分科国際関係論コースに進学。3年次にスウェーデンのウプサラ大学に留学し、平和学や政治学を中心に学ぶ。
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1. 東大を目指したきっかけ

ーまず、多和田さんの高校時代のお話について聞かせてください。多和田さんはなぜ東大を目指すようになったんですか?

実は、元々は東大進学は全然考えていませんでした。目指し始めたのは高校1年生の春でした。その時に、学内で選抜されてハーバードやMITを見学できるプログラムに参加したんです。そこには、地方の高校の中でも優秀な人たちが集まっていました。本当に頭がいい人たちと共同生活することによって、普段自分がしている会話よりも深い話をしました。幸せとはとか、宗教についてとか。その時に、自分はすごく周りの環境に左右される人間だなと感じたんです。また、「こういう優秀な人たちと一緒に勉強できたら楽しいんじゃないかな」とも感じました。そこで進路を決めるとなった時に、先生からの進めもあって東大に決めました。

ーということは、東大で何をしたいか、入学当初に決まっていましたか?

全く考えてなかったです(笑) 「とにかく海外に行きたい」っていうそれだけでした。 私は、元々すごく海外に染まっている人間なんです。中学校の頃はアメリカのドラマと音楽にめちゃめちゃハマってて、「なんでアメリカ人の女の子に生まれなかったんだろう」と思いながら中学生活を送ってました。アメリカ行きたい欲は中3と高1の時にアメリカに行ったことで満たされたので、大学生活ではもう少し違う国に行ってみたいなと思ってました。

ー「優秀な人が多いところに行きたいから東大!」っておっしゃってたと思うのですが、実際に東大入ってみて、周りの環境をどういうふうに感じましたか?

私はアイセックという団体に入っていたんですけど、アイセックの中には「この人すごいなあ」と感じた人はいっぱいいます。彼らに共通していたのは、今の社会を今の形のまま受け入れるのではなくて、「自分がやりたいことがこれだから、社会をこう変えていきたい」という考え方をするということです。「今ないなら作ればいい、『できない』はやってみてから言えばいい。」っていう起業家精神を持った人がすごくたくさんいて。そんなスピリットを私は持ち合わせていなかったので、すごく感心しました。

2. 国連訪問で感じた違和感、難民ボランティアで見つけた社会問題への関わり方

ー次は、大学時代について聞かせてください。多和田さんが大学で行った活動の中で、自分の転機になったものを教えてください。

1つ目は、イタリアとスイスの国際機関を訪問して国連について学ぶ国際研修です。私は入学当初は将来国連で働きたいと思っていたのでこの研修に参加しました。国連について研究している人や、国連で働いている人同士の勉強会にオブザーバー参加して、日本の移民問題について発表をしました。ジュネーヴでは、国連機関のガイドツアーにも参加しました。

そこで思ったことは、国連は舞台に過ぎないので、そこで何をしたいのか考えなければいけないということです。国連で働くというのはステータスとしてはかっこいいけれど、それだけでは手段が目的化していると思うので、まず自分がどのフィールドに関わりたいか決めようと感じました。 また、国連は「社交の場」なんだなとも思いました。というのも、国連では、「この人と関係を持っておくと有利だから」というふうに考えて人付き合いをすることがあるみたいなんです。私はそういう人間関係の作り方が嫌だなと思ってしまうタイプなので、国連でよっぽどやりたいことがあって、それを実現させるための仲間を増やしていくという発想で国連で働くのであれば楽しめるかもしれないけど、あまりやりたいことが明確じゃない段階でこの場に来ても楽しめないだろうなと思いました。なので、国連を目指してキャリア形成するのはやめようと思いました。

2つ目は、アイセックの海外インターンシップに参加したことです。私は当時難民問題に関心があって、クロアチアの首都ザグレブにある難民キャンプで6週間働きました。 その目的は2つあって、まず草の根で働いている人たちや難民の人たちが実際にどういう生活を送っているかをリアルに知ること、そして自分がマクロな視点で難民問題について関わりたいのか、課題のそばにいて草の根で支援していく側になりたいのかを見つけることでした。6週間働いてみたところ、結論としてはマクロな視点で難民問題に関わりたいなと思うようになりました。

私は赤十字のボランティアとして働きました。赤十字のボランティアの人って、難民の人と同じ目線で、UNHCRから届く物資を家族分袋に分けて難民に運ぶとか、難民の子供たちに、学校がない夏休みの間クロアチア語を教えるとか、すごく地味な仕事を毎日やっているんです。それを実際にやってみた時に、「私はこれを毎日ずっとはできないな」と思って。「その仕事は根本的な解決になってないけど、でも必要だからやる」っていうのをずっと続けることはできないなと感じたんです。赤十字の人に自分の難民支援の強みをインタビューした時も、「私たちの強みは忍耐力です」って言っていました。それは純粋にすごいなと思って心から尊敬の念を抱いたのですが、東大生として国の制度に携われる立場にあるから、もう少しマクロに課題を捉えた上で、広く根本的に課題解決する立場になりたいなと思いました。それが今のキャリア選択にも繋がっているかなと思います。

3. 留学と「平和」, スウェーデンの生き方

ー多和田さんは、スウェーデンのウプサラ大学に、平和学を学びに留学されてましたよね?そもそも留学しようと思ったきっかけは何ですか?

きっかけは特になくて、「大学生になったら留学する」と昔から決めていたんですよね(笑)ウプサラ大学を選んだのは、平和学で有名な大学だということもありますが、北欧に住んでみたかったという理由もあります。

ー留学先ではどんなことを学びましたか?

前期は平和学を学びました。後期はスウェーデンの政治や、サステナビリティを学んでいました。留学前は、平和というと紛争がない世界を思い浮かべていました。でも、難民の人を見ていて、紛争がない社会に逃れることがゴールなんじゃなくて、そこからどんな生活を送れるかがスタートなんだなって思って。「紛争がない」という状態の先にどんな社会を作っていくかが平和の定義になる。それが「積極的平和」って言われることだと思うんですけど、どういうふうな国づくりをしていくかに興味を持つようになりました。

ー留学先で出会った人との交流で面白かった経験はありますか?

スウェーデン人は1日1日を生きてるって感じがしました。日本人は、将来の夢を定めてそのために逆算して生きることが多いと思います。スウェーデンで「日本では将来の夢をよく考えるんだよ」って言ったら、「それってすごくアメリカンドリームみたいだね笑」って言われて(笑)。スウェーデン人は毎日をどのように充実させるかってところに重点を置いていて、だからこそIKEAみたいに家具を充実させたり、美味しいコーヒーを飲んだりしているんです。

でも、日々を楽しく生きることが必ずしもいいことじゃないなとも感じました。私もスウェーデンに行ってから、毎日を大事に生きるようになったんですけど、毎日の満足感が高いと、極論明日死んでも構わないと考えるひとが出てきてしまうんです。一方で、「将来的にこういうことを達成したい」という目標があると、それに向かって頑張る過程が生まれるから、人生に意味が生まれてくると思います。スウェーデン人は、そういった長期的な目標は良くも悪くも持たない傾向があるので、それもスウェーデンで自殺率が高いというところに繋がっているのかなって思います。

ー多和田さんは、そのようなスウェーデンの風潮に対してどう思いましたか?

大学までは「こういう大学に行く」っていう選択肢があってそれから選べばべいいだけだと思うんです。でも、就職活動をしていて思うのは、全く正解がない中で自分で正解を作っていかないといけないとなると、目標から逆算するやり方が全く通用しないということです。目標が見つからなくて苦しくなって精神病んじゃう人も周りにいます。だからスウェーデンの人々のように、日々を積み重ねていく中で、「振り返ってみればこう言う人生になっていた」という意思決定の仕方もあるのかもしれないなと思いました。

ー留学先で大変だったことってありますか?

私は良くも悪くも「日本人である」と言うことをアイデンティティとして持っているので、クラスメイトが全員スウェーデン人だったり、留学生が多くてもヨーロッパ人ばかりという状況が最初は辛かったです。その人たちと自分が仲良くなっているビジョンが見えなかったんですよね。最初は自分から距離作っちゃったりしました。

でも、他の国だと人種ごとに固まっちゃったりもするんですけど、スウェーデンは移民の人も多いので、人の見た目で人種を判断しないんです。だからこそ人種関係なく交わりやすかった環境でした。私は自分が相手にどう見られているか気にしていたのですが、相手はそこまで私の見た目を気にしてないんだなと気づいて、吹っ切れたというか。むしろこっちが遠慮しておどおどしていると関わりづらいから、遠慮をせずに堂々と振る舞おうと決めてから、友達を作ることができました。

4. 何が「平和」?誰のための「平和」?

ー留学先で勉強したことや、出会った友達の影響で、自分の価値観が変わったなと思うことはありますか?

元々は武力とか紛争とか外交とかに興味があったんですけど、そうじゃなくて国づくりに興味を持つようになりました。

最初は平和について考えたいと思ってスウェーデンで平和学を学んだんですけど、現地で国際関係を勉強している学生団体に入って、その学生と研修旅行に行ったんです。それで1週間くらいウクライナに行ったんですね。ウクライナは東はロシア、西をヨーロッパに挟まれている国です。そこの戦争博物館に行った時に、ウクライナの戦車がドーンって展示してあったんです。また、「自分たちはロシアに対抗できる国なんだ」と示すような武器が展示してあって。 日本では、戦争がない世界が平和だと刷り込まれてきていると思います。なので、それを見た時に、「この人たちにとっては、戦争や武器がないことが平和というよりは、自分を守る武器があって、強い国にも立ち向かっていけるような状態が平和なんだ」っていうのを感じたんです。そうすると、私の考える「平和」はその人たちとは違ったものになっていると思います。 この経験から、自分が平和に携わりたいと思ったら、誰にとっての平和なのかを考えないといけないなと思ったんですね。「世界全体の平和」というのは、戦争のあるなしでは簡単に判断できないと思ったから、まずは私自身は日本にとっての平和を考えたいなと思うようになりました。

ーその経験は職業選択とも関わっているのでしょうか?

めちゃくちゃ関わっていますね。今は、国家公務員試験を受けようとしているのと、政府系金融機関を考えています。「日本」という目線で物事を考えられるかが重要な判断軸になっていますね。

省庁で言ったら金融庁を考えています。お金が好きというわけではなくて(笑)金融が、人々の生活にもたらす影響の大きさは、バブルやリーマンショックなどの事例から実感している人も多いと思いますし、さらに金融って、社会の動きをすごく反映するんです。社会が動くと金融も動くって感じで、常に社会に対するマクロな目を持ちつつ、時代の変動を追っていけるなと思いました。金融はすごくグローバルに動いていくものなので、世界に対する広い興味を持ちつつ、社会で起こることの1つ1つを追えるなと思ったんですよね。

ー多和田さんと今まで話していて、金融というイメージがなかったので、今の話でそこが繋がった感じがしました。

今まで自分が触れていなかった分野だからこそワクワクするのかなと思います。金融は大学卒業レベルではみんなそんなに専門性身に付いていないから、同じレベルでのスタートならいいなと思っていて。

5. 高校生へのメッセージ

ー大学での経験を踏まえて、今の高校生に向けてメッセージをお願いします!

そうですね... あんまり将来のこととか考えなくていいから、高校生にしかできない経験を絶対した方がよいと思います。地方の高校生だったら、地元の友達とたくさん遊ぶとかですね。東大に来たり大学に来たりすると、周りの人はめちゃくちゃ優秀だし、自分のやりたいことを持っていたりするから、自分の存在意義がわからなくなることってあると思うんです。その時に、自分が自分である背景に立ち返るときに、高校時代は必ず拠り所になると思うんです。「自分は高校時代どんなことを思って東大を目指したのか」に立ち帰れることって重要だなと思うので、そのためには日々いろいろなことを考えて生きていることは大事かなと思います。

ー海外インターンや留学経験のお話など、すごくワクワクする内容でした。ありがとうございました!

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