松清広歩さん

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松清広歩さんプロフィール
鹿児島県出身。地元の公立高校を卒業し、2018年に文科一類に進学。前期課程では瀧本ゼミ政策分析パートなどに所属。その後経済学部に進学、現在大学院の経済学研究科への院進を予定している。
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※瀧本ゼミ政策分析パート https://t-semi.jp/

ー松清さん、今回はよろしくお願いします!

1. 部活に熱中した高校時代

ーまず高校時代の話をお聞きしたいです。高校時代に、課外活動はどんなことをされていましたか?

高校時代は空手道部に入っていて、週6で部活をしていました。というかもう高校時代は部活ばっかりでしたね(笑) 僕は2年生の途中から部長になったということもあって、かなりしっかり活動をしていました。練習メニューも自分たちで考えて実行していました。部活がない日には、外部の道場に通って空手の練習をしていました。

ー実質毎日空手をやってたんですね(笑) かなり部活がハードだと感じたのですが、そんな中で東大を目指し始めた理由は何ですか?

志望校が決まったのが、部活を引退した高校3年の6月ごろだったんですよね。 もともと政治学や行政に興味があったので、法学部に進もうということは決まっていたのですが、当時はどの大学に行けば何ができるかもわかっていなくて。「法学部ってどこも一緒だろ」と思っていたので、最初は進路希望調査も九州大学を第一志望にしていました。

でも、部活が終わって「受験勉強を頑張るにあたって、1番を目指しておいた方がモチベーション上がるよ」とは周りに言われていたんですよね。それに加えて、将来は行政職を考えていたので、だったら環境的には東大を目指した方がいいかなと思うようになりました。

2. 「これをやりたい」が決まらない入学直後...そこで出会った「瀧本ゼミ」

ー大学に入ってやりたいことは、入学当時決まっていましたか?

授業がたくさんあって、難易度も難しいのかと思っていたので、最初は勉強を頑張ろうと思っていたんです。でも授業のコマ数は少ないし、体系化されていない前期教養のカリキュラムに物足りなさを感じてしまいました。

あとはサークルもどのようなものがあるのか全然知らなくて。たまたまサーオリ(※入学時に行われる、サークルオリエンテーションのこと)でいくつか知ったようなレベルだったんです。

なので、「これがやりたい!」ということを決めきれずに困った記憶があります。だから1年のSセメスターの間はまじで何にもしていなかったです(笑)頑張る目標も見つからなくて 「大学辞めようかな」とも思ってました。

でも、同じクラスの友達と「何か面白い活動ないかな」って話ている時に「瀧本ゼミには瀧本さんっていうめちゃくちゃ面白い人がいるよ」って紹介されたんです。そこで、1年生の秋から瀧本ゼミの政策分析パートに入りました。

ー瀧本ゼミには、なぜ入ろうと思ったんですか?

政策分析パートは、学生が考えた案を実際に行政に提案して、それが実行されることもあるんですよね。それを聞いて、単純にすごいなと感じたんです。 当時は、実際に社会の問題解決をしようと思ったときに、何をすればいいか分からなかったんです。なので、実際の問題解決の手法を学べそうだと感じで、面白そうだなと思いました。

ー瀧本ゼミでは、具体的にどのような活動をしていましたか?

瀧本ゼミでは、ゼミ生が各自で「社会的に重要なのに全然注目されていない問題」を発見してきて、それに最適な解決策を見つけて発表します。そして、その発表に対して他のゼミ生が反論したり、議論したりします。瀧本ゼミにはファイア制度というものがあり、発表が成功すればゼミに残留することができますが、セメスターが終わるまでに発表を成功させることができなければゼミを辞めなければいけなくなります。僕は、1年生の時に「吃音」、2年生の時に「刑務所ベースでない再犯防止プログラム」についてリサーチを行い、発表しました。

ーなかなか負担が重そうな活動にも思えますが、瀧本ゼミのどこに魅力を感じたんですか?

僕は毎週の議論が楽しかったです。発表者はかなりリサーチをした上で発表するのですがそれにもかかわらず、発表内容について全く知識のない人がその穴を突きまくってボロボロにするんですよね(笑) もしくは、1年生の発表者そっちのけで2・3年生だけで勝手に議論しだすこともあります。そんなふうに盛り上がる議論がすごく楽しくて。

ー議論はどんな感じで進んでいくんですか?

まず、発表するときには、「〇〇という社会問題が存在すること」から証明しないといけないんです。僕の発表内容を例に挙げると、まず「現状の再犯率が高い」という問題を提示すると、「本当に再犯率って高いの?現状のままでもそこまで問題ないんじゃない?」みたいなところから議論が始まるんですよね。 そこを証明できていないと、序盤で発表が終わることもありますね。「君が発表した問題が本当にあるかどうかわかんないから、もう一回ちゃんと調べたほうがいいんじゃない?」って感じで。 そのフェーズを乗り越えて、「確かにそれは問題そうだね」と認めてもらえたら、解決策を提示する段階に入ります。そこでも、「その問題を解決するのに本当にその解決策であっているの?」とか、「長期的に見たら違うんじゃないの?」とか、「エビデンスの国ではうまく行っているけど、日本だとこういう問題も出そうだよね。」とか、議論すべき点はたくさんありますね。

ー自分の話の1つ1つを厳密に検証していかないといけないんですね。発表する側の準備が大変そうです(笑)

3. 文一から経済学部へ!

ー次はゼミなど、学問のお話もお聞きしたいです。
松清さんはもともと文一で、そこから経済学部に入られたんですよね?政治に興味があったとおっしゃっていましたが、経済学部に進学されたそのきっかけを教えていただきたいです。

先輩に『ヤバい経済学』という計量経済学の本を紹介してもらい、興味をもったのがきっかけです。この本はデータを計量経済学の知見に基づいて分析することで、みんなが思ってもみなかったような意外な真実を明らかにするという内容になっています。「きちんと学術的な分析をすることでこんなこともわかるのか」とかなり衝撃を受けました。また、瀧本ゼミの活動でも「真に効果的な解決策が何か」と議論するときに、きちんとした分析に基づいて有効性が示されているかどうかはとても重要だと感じていました。現在の政策の多くは効果検証されずに漫然となされていることも多いので、その改善に役立てたいなと思いました。法学全然面白くないとも思っていましたし(笑)

ー経済学的な分析から、政策改善に役立てたいってことですね。経済学部のゼミではどういうことをされているんですか?

ゼミでは、神取ゼミってところに入ったんですよ。このゼミは計量経済のゼミではないのですが、神取先生は業績がすごい先生だなので、その人のゼミで議論するの楽しそうだなと思って入りました。 ここでは「マーケットデザイン」という分野をやっていて。今までの経済学はすでにある制度のもとで人々がどういう行動をするか分析することが多かったんですけど、マーケットデザインは、今まで積み重ねてきた経済学の知見を生かして、人々がもっとも望ましい行動をするように制度を設計します。マーケットデザインの中でも、僕はマッチングとオークションというものを中心に勉強しています。オークションは、お金を使える場面でうまく人と人やモノとモノを結びつけること。マッチングは、お金が使えない場面でうまく人同士を結びつけることです。たとえば、学校選択とか臓器交換とか、労働市場において、うまくマッチングを成立させるシステムを作るための理論を勉強しています。

経済学では、人々がある程度合理的に、自分の利得を最大化するために動くだろうと仮定しています。でも、現状の制度だと、人々が自分の利得を最大化するために嘘の申告をすることがあるんです。たとえば進振り(※東大の進学選択制度)だったら、第一志望の学部に出しても受からなそうだから第二志望に出そうみたいな。そういうふうに自分の本当の気持ちじゃない行動をとっちゃうと、全体として非効率な結果が生まれる可能性があるんです。そうじゃなくて、人々が嘘をつかずに欲しいものを申告できるように制度設計をして、うまく全体に効率的に財を配分できるようにすることを目的としています。それができるかどうかを数式を使って計算するイメージですね。

ーなるほど、私が受けた政治学の授業でも、投票制度を扱った時に似たようが議論が出てきました。自分が一番支持している政党の得票数が明らかに少ないことが予想できた時に、自分の投票が指標にならないように二番目に支持している政党に投票する、という感じですね。

そう、まさに選挙制度はメカニズムデザインの一種なんですよね。

ーマーケットデザインを扱っている中で、どのようなところが面白いと感じましたか?

経済学って、社会の問題解決にどう役立っているかよく分からないじゃないですか。 計量経済を例に取ると、政策の効果検証をする技術があっても実際には行政データが公開されず分析が行えなかったりとか、日本ではデータが分析可能な形で管理されてなかったりとか、データ分析の手前の段階に障壁が多すぎるんです。また、効果検証しても、その知見を現場の人たちが全く活かせない。統計的なエビデンスを、うまく理解できないし、整理できないし、活用できないし...みたいな。それを考えた時に、計量経済をうまく社会全体に生かすまでにはだいぶ時間がかかるし、大変そうだなと思ったんです。 一方、マーケットデザインの方は現実の制度設計に直結していて、社会への直接的な影響が大きいのではないかと思いました。保育制度で「本当は育休をとって1歳から子供を預けたいのに、1歳で保育園に子供を預けると、保育園の倍率がめちゃくちゃ高いから0歳で入れるという事例が発生している。だから、0歳の枠を減らして1歳の枠を増やしましょう」ということを、瀧本ゼミの活動で自治体に提案に行ったんです。その経験を踏まえて、マーケットデザインで待機児童が減る制度設計をしている事例があることを知って、マーケットデザインが社会でダイレクトに役立つんだなと思って興味を持ちました。

ー後期課程に入ってからは、ゼミや勉強が大学生活の中心になっているんですね。

そうですね。 それに加えて、実は長期インターンもしていました。マーケットデザインと計量経済のどっちを大学院で選考しようか迷ったときに、計量経済に関連する、データサイエンティスト的なことをインターンでやってみて、面白かったらそれを続けるもありかなと思ったので参加していました。会社の中のデータ分析業務みたいな感じですね。それをやって「そんなに面白くないな」と感じてしまって(笑) データのクレンジングが大変だったんです。データの余計なものを削ぎ落として、分析に落とし込めるようにしないといけなくて。それにはテクニックが必要なのですが、それをたくさん努力して身につけたいという気持ちになれなかったんです。それで「僕は計量経済をするには向いてないのかな」と思いました。

ー松清さんは院進されるとのことですが、経済学部で院進する人は1割もいませんよね。そんな中で院進しようと思ったのはなぜですか?

3年の5-6月で就活が始まるじゃないですか。その時に、就活と院進どっちがいいかなと真剣に考えて、院進のほうが面白そうだなと思ったからです。経済学部では、学部のうちは経済学の初歩的なことすら勉強しきることができないんです。なので、経済学もっとしっかり勉強したいなと思ったことと、この会社に就職したいという強い思いがなかったことが決め手ですね。まだ就職したくないし、自分にとっては経済学をやる方が魅力的だから、そっちをやろうと決めました。院進した先輩が「興味があるなら修士くらいなら全然行ってもいいと思うよ。」と背中を押してくれたこともあって。

ー就職先を決められない気持ち、すごくよくわかります...(笑)経済学部で経済学の基礎をあまり勉強できないのは意外でした。

ー最後に、東大を進学先として考えている高校生に伝えたいことがあればお願いします!!

本当の大学の価値は何かを考えた時に、僕は面白い同期や先輩に出会えることや、社会で活躍している大人や教授とのコネクションを持って自分の可能性を広げたり、視野を広げたりできるところだと感じました。自分にとっての大学の価値って何なんだろうと考えた上で、大学選択をしたらいいんじゃないかなと思います。

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