渡邉俊介さん

学生団体の代表を務めたのちに、障害を持った子どもの教育に関心を持って、教育現場で活動をされている渡邉さん。大学に入ってからこうした分野に関心を持つようになった渡邉さんは、「大学での学びは楽しい」と語ります。その大学生活はいかに…?

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渡邉俊介さんプロフィール

駒場東邦高等学校出身。2018年に文科二類に入学し、経済学部金融学科に進学。学生団体GEILで代表を務め、政策立案コンテストの運営に向けて活動。その後、発達に特性を持つ子どもの教育に関心を持ち、港区の公立中学校や隠岐諸島の公立小学校でのアルバイトを経験。
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1. 障害者福祉の活動…渡邉さんの思いや取り組みとは?

ー渡邉さん、こんにちは。本日は宜しくお願い致します。早速ですが、渡邉さんの最近のご活動について教えてください!

はい、発達に特性のある子供、中学生、高校生に学習支援をしています。彼らは学校生活や勉強においてそれぞれの「難しさ」を抱えているので、彼らに必要な支援を行い、サポートをするわけです。

ーなるほど!具体的にはどういう場所で学習支援を行われているんですか?

つい最近まで、島根県の隠岐諸島の学校でお手伝いをさせてもらっていました。2Aセメスター以降は、港区の公立中学校で学習支援員のアルバイトをしています。

ー支援をする対象はどんな子供たちなんでしょうか?

どちらの場所でも、勉強に困ったり、周りの学習進度に追いつくことができていない生徒のサポートをしていましたね。実際に現場に入ると、問題児として学校で浮いてしまっていたり、周りとのコミュニケーションが上手に取れずに困っていたりしている生徒を目の当たりにしました。また、学習支援を授業外で受けることはできていても、授業中に「先生が何を言っているかわからないからとりあえず座っているだけ」という生徒もいました。僕自身は中高一貫の私立校に通っていたので、そういった環境を生まれて初めて目の当たりにしたのはとても鮮烈な体験でした。

ーそうだったんですね。では、渡邉さんの一番やりたいことは「発達に特性がある子どもの教育支援」なんでしょうか?

そうですね、とりわけ公教育の領域、その中で「小学校と中学校の段階=義務教育」の領域における、子どもの教育支援に関心があります。そうした教育は、「第三の居場所」と異なり、全ての子供に必要な教育を担っています。もし家庭にお金がなかったとしても適切な教育を提供できる、セーフティーネットとしての公教育の領域でこうした教育支援を行うことに大きな意義があると感じています。

ー義務教育段階にご関心があるんですね。でもその場合、学校の先生を目指されるということなんでしょうか?それとも文部科学省などを目指されるんですか?

隠岐諸島などで働かせて貰っていた際に、離島やへき地では教育サービスが足りていないところがあるんじゃないかと考えるようになったので、地域に深く入って行って「地域の公教育」を整えることができるようになりたいです。とはいえ、まだまだ勉強が足りていないのでまずは大学院へ進学する予定ですね。実はもともと官僚に関心はあったのですが、いきなり制度設計の側に回るのではなく、先に現場で充実した経験を積んだ方が良いのかなと考えています。また、今の自分は目の前の人を救うことにモチベーションを感じているんです。だから、文部科学省は今のところは考えていません。

ー最後に、渡邉さんはそのご活動にどんなやりがいを感じられているのか教えてください!

やはり、「適切な教育がなかったら人生が狂う」というところが大きいですね。教育は全ての人の人生に大きく関わります。学校教育の中で自分に必要な教育を受けられない子がいて、その子の可能性は閉ざされてしまっているという現状があります。支援によってその壁を取り払うことで、その子の人生の可能性が広がればいいのにと思うんです。

2. 学生団体での経験が大きなキッカケだった…?!

ーそういえば、渡邉さんが発達に困難を抱える子どもの教育支援に関心を持たれたキッカケは何でしょうか。

先ほど述べた、港区の中学校での学習支援ですね。この際に、発達に特性のある子どもの学校での姿を目の当たりにしたことがキッカケで問題意識を持つようになりました。

ーでは、その学習支援のバイトはどうして始められたんでしょうか?

私は学生団体GEILというインカレの学生団体で代表を務めていました。GEILは、政策立案コンテストを開催する中で、学生が社会問題を学ぶ学生団体です。その活動の一環で、教育格差について勉強していたのですが、障害のある子向けの教育についての勉強は進んでいませんでした。また、コロナ禍だったので学校現場に出向いて勉強させてもらう機会もあまりなかったので、現場を見てみたいというのもありましたね。そういう理由で思い切って「学習支援 バイト」をGoogle検索したんですよね笑

ー政策立案コンテストを開催する学生団体ですか…?なかなか珍しいですね。やはり官僚に興味があったから加入したんでしょうか?

そうですね。予備校時代に、官僚になった人の話を聞いて、官僚の仕事に関心を持っていましたからね。GEILは、政策立案コンテストを毎年夏に学生向けのイベントとして開催しているんですが、普段から政策についての勉強ができるんですよね。それで1年生の春に入りました。とはいえ、最初は駒場祭委員会や映像制作のサークルと掛け持ちして、興味を持ったものに色々チャレンジしてみました。

ーそういう経験は大学でしかできませんもんね。

まさにそうですね。サークルや学生団体の多くは、どれだけその活動に関わるかどうかも自分で決めることができますし、後から辞めるのも自由ですからね。

ーそうですよね…!とはいえ、代表になった後はやはり相当忙しくなってしまったのではないでしょうか?

それはそうですね…笑
1年生の9月に代表になった後、教育格差がテーマだったので「代表だから勉強しよう」という思いもあって、教育について1年間勉強を始めました。大学の団体の最も良いところは、「自分たちでゼロから設計できる」点だと思います。勉強といっても、何かテキストや課題を与えられることはありません。「どういう人にヒアリングを行えば、そのテーマについて深く知ることができるのか」から自分たちで考えたんですね。自分で学びたいものを見つけて、求めていくという勉強の形を知れたのは素晴らしい経験でした。

ー代表をされていて大変なことなどはありましたか?

実は僕が代表を務めているときにコロナ禍が直撃したんですね。毎年コンテストは夏に「対面型の宿泊形式」で開催していたので、急遽対応を迫られることになりました。そのような、不確実なことに対して自分たちの力でどう対応するかという状況に直面した2年生の春は大変でしたね。オンラインでの活動への切り替えを余儀なくされる中で、メンバーのモチベーションを保ったり、どういった工夫を取り入れるのかを考えたりするのも大きな課題でした。

ーそういった状況をどのようにして切り抜けられたのでしょうか?

先輩たちの代から受け継いだものが通用しなくなってしまいましたし、コロナ禍への対応について当時は全く予想がつかなかったんですよね。だから、世の中の情勢へのアンテナを張って、代表として決めなきゃいけないところは決める、「自分が団体を引っ張っていかなきゃ」という気持ちはずっと持っていましたね。辛い時もたくさんありましたが、代表は辞められませんから、「やるしかない」という気持ちですよね、最後は。ただ、メンバーとのコミュニケーションも大事にしていたので、メンバーと話す中でそれぞれのやりたいことや思いを聞き、「苦しんでいるのは自分だけじゃない」ことがわかったり、みんなのやる気を確認できたりしたことが支えになったことも覚えています。

ー「覚悟」と「仲間」の力でコロナ禍を切り抜けられた渡邉さん。続いて、そんな渡邉さんの中学・高校時代についてお聞きしていきます。

3. 中学・高校の時はどんなことをしていたの?

ー政策への関心は予備校時代がキッカケだとお伺いしましたが、渡邉さんは中学生・高校生時代はどんなことをされていましたか?

そうですね、実はかなり学校行事に力を入れていたタイプでした。中学校と高校では文化祭の副実行委員長を務めたり、学年での行事企画を取り仕切ったりしていました。あとは体育祭で応援をガチでやる学校なので、一番前で応援する役を務めていました。部活は入ってはいましたが、学校行事を優先したいのであまりしっかりはやりませんでした笑

ーでは、学校行事一筋だったんですね!塾や予備校には通っていましたか?

実は都内の進学校だと中学に合格したタイミングで都内の進学校で塾や予備校のビラが大量配布されるので、それを見て中学1年生の時から塾には入っていましたね。ただ、勉強はそんなしたくないなあと思って辞めてしまいました笑。受験を意識してそろそろ勉強の方にも力を入れようと思い始めた高校1年生の時に再び塾に通い始めました。

ーそうだったんですね!ではそんな中でなぜ東大を目指していたんでしょうか?

自分の高校は毎年50人以上東大に合格するので、早い段階で東大受験は意識にはありましたね。ただ、その時にめちゃめちゃ勉強していたわけではありませんが笑。高校2年生の終わりから高校3年生のはじめくらいで志望校を決めるのですが、そこで、ずっと意識にあったこともあり、東大受験を決意しました。

ーその時、将来はこれがやりたい、勉強したいというものはありましたか?

そうですね、将来的になにかやりたいってわけではなかったと思います。進振りがあるからこそ、進路の選択肢が多く、研究設備も一番良いだろうと思ったので東大を志望校とはしましたが。ただ、やりたいこと自体はなかったのですが、色んな勉強をして、色々なことに触れてみたいとは思っていました。実は、浪人していた時の予備校の先生がとてもユニークな方だったんですね。それで、政治や学問の話をしてくれたので、大学での勉強にはすごくワクワクしていました。経済に関心があったので文科二類に進学して、社会問題をしっかり学びたいという思いもあったためGEILに入りました。

ーそうですよね。文科二類に入学し、進振りを経て経済学部金融学科に進まれていますが、進振りと渡邉さんのご関心とはどのように結びついたのでしょうか?

教育や政策の勉強をしていたので、「国のお金が適切に使われているのか」には関心がありました。そんな中で、現代経済理論という授業で「財政学」についての話を聞いたんですね。これは、政策を打つ時に「どういうお金の使われ方」がされていて「どういう効果がある」かを学ぶ学問で、僕の関心とマッチしていました。しかし、進振りが終わった後に教育や福祉といった分野への関心が強くなったので少しミスマッチもあったかなとは思います。

4. 高校生へのメッセージ

おそらく今これを読んでいる方の多くは、「大学に入って何をするの?東大に入って何をしようかな?」と迷っていると思います。僕もそうでした。高校の段階でやりたいことや進みたい道が見えていたかと言われれば、そうではありません。でも、それでも良いのではないかと思います。
大学に入ってから見えるものってすごく多いんです。既に「やりたいこと」がある人も、それが変わる可能性は凄くあります。僕自身も紆余曲折があり、その中で一生取り組みたいテーマに出会えました。大学に入って、まずは新しいものに取り組んでみるのが大事だと思います。きっと、もっと面白いテーマ、色々な可能性に出会えるはずです。色んな可能性を秘めた大学生活、どうかそれを楽しみにしていてください。大学生活を期待して貰えればと思います。そしてもし、社会の課題に関心が出たのであれば、そういうものに取り組む仲間を見つけましょう。受験勉強等、頑張ってください!

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