さて、「進振り」の説明が終わったところで、次は各科類の紹介にうつります。
一見どこに入っても同じように見えますが、実は科類ごとに「進振り」で進学しやすい学科に違いがあったり、カリキュラムに違いがあったりします。実際に、「進振り」を前にして「別の科類に入っておけばよかった...」と後悔する場合も。そうならないためにも、ここで自分が受験する科類についてしっかり予習しておきましょう!
この記事では文科一類(文一)・文科二類(文二)・文科三類(文三)を紹介します!
概要
念のため、別の記事で紹介した各科類の概要を再掲します。
文科一類
「法と政治を中心にして社会科学全般の基礎を学び、関連する人文科学と自然科学の諸分野に渡って理解を深め、人間と社会について広い見識を養う」
→法・政治に重点を置いてカリキュラムを組む。法学部に進学する学生が多い。
文科二類
「経済を中心にして社会科学全般の基礎を学び、関連する人文科学と自然科学の諸分野に渡って理解を深め、人間と組織について広い見識を養う」
→経済に重点を置いてカリキュラムを組む。経済学部に進学する学生が多い。
文科三類
「言語、思想、歴史を中心にして人文科学全般の基礎を学び、関連する社会科学と自然科学の諸分野に渡って理解を深め、人間と文化的・社会的営為について広い見識を養う」
→語学・哲学・歴史などに重点を置いてカリキュラムを組む。文学部・教育学部に進学する学生が多い。
カリキュラムの違い
上記概要で「〇〇に重点を置いてカリキュラムを組む」とありましたが、具体的にどのような違いがあるのでしょうか?
ざっくりいうと、科類ごとに必ず履修しないといけない科目や重点的に履修する科目の学問領域が異なります。
東大のカリキュラムでは必修(=必ず履修しないといけない科目)・準必修(=選択必修)・その他の選択科目が決まっています。科類ごとに異なるのは以下の2つです。
①「準必修」で必ず履修しないといけない科目
②「その他の選択科目」の科目分野の配分
では、上記の①②それぞれについて、具体的にどのような違いがあるのか説明していきます。
①「準必修」で必ず履修しないといけない科目
事前知識
東大のカリキュラムでは、「準必修」という選択必修が定められています。(「準必修」についての細かい説明は、ややこしいのでここでは省略します。もし気になる人は、東大新入生向けの記事履修の第一歩④〜文系準必修〜 https://ut-base.info/articles/52 をご覧ください。)
準必修の科目は「社会科学」と「人文科学」という2つの分野に分かれています。それぞれの分野に属する科目は以下の通りです。
社会科学:法・政治・社会・経済・数学
人文科学:哲学・倫理・歴史・心理・ことばと文学
*「準必修」の中で、「この科目は必ず履修してね」という科目が決められています。その科目が科類ごとに異なっているのです。 *
文科一類の場合、社会科学のうち政治または法のいずれかを必ず履修しなければいけません。文科二類の場合は経済または数学のいずれかを履修する必要があります。(この単位を落とすと、後期課程(=3,4年生)に進級できません。)文科三類の場合は、特に履修しなければいけない社会科学の科目は決まっていません。また、人文科学の科目については、科類に関わらず自分の好きなものを履修することができます。
以上をまとめると、
・文科一類は法や政治、文科二類は経済や数学の重要度が高い
・文科三類は比較的自由に科目を選ぶことができる
と言えます。
②「その他の選択科目」の科目分野の配分
事前知識
「必修」と「準必修」の科目以外は選択科目となり、自分で好きな科目を選んで履修することができます。この選択科目(「総合科目」と名付けられています)は大きく以下の3つの分野に分かれています。
・言語:第二外国語をスピーキング・リスニング・ライティングに重点を置いて学習する科目や、第三外国語、古文・漢文があります。第三外国語では、スペイン語・ドイツ語・韓国朝鮮語などのメジャーな言語に加え、アラビア語・セルビア語・ラテン語・ヘブライ語などのマニアックな言語も開講されています。
・文系科目:思想・芸術・国際・地域・社会・制度に関する科目が開講されています。
・理系科目:人間・環境・物質・生命・数理・情報に関する科目が開講されています。
選べる科目は自由な一方、「後期課程に進学するために、どの分野からいくつの科目を履修しなければいけないか」だけカリキュラム上決められています。その配分が科類ごとに異なっているのです。大まかな配分は以下の図のようになります。
文科一類・二類はバランス型の配分で、逆に分野選択の自由度は低いと言えます。他方、文科三類は言語(語学)の比重を高めることができ、語学が得意な人は好成績を収めやすくなります。文科三類は言語と文系科目の比率を自分で調節できるので、語学が得意でない人も安心です。
どの科類も一定数、理系科目を履修しなければならず、特に文科三類は文科一類・二類よりも多く履修します。ただ、理系科目といっても「科学技術と社会」などの文系寄りの科目も多く開講されています。
数学や物理などゴリゴリの理系科目が苦手なら、そのような文系寄りの科目を多く履修することもできます。
以上をまとめると、
・文科一類・二類はバランス型で自由度は低め
・文科三類は語学が得意だと成績面で有利
・文科三類は文科一類・文科二類に比べて理系科目の配分が多い
と言えます。
こんな人におすすめ
文科一類
希望している学部が法学部で決定している場合は、文科一類が一番進学しやすいです。また、司法試験や国家公務員試験を受験する場合は、クラスに受験仲間を比較的容易に見つけることができます。
文科二類
希望している学部が経済学部で決定している場合は、文科二類が一番進学しやすいです。文科一類の学生とは同クラ(クラスメート)になるので、経済系だけでなく法・政治系に関心を持っている学生が多くなります。そのため、公認会計士試験や司法試験、国家公務員試験を受験する場合は、クラスに受験仲間を比較的容易に見つけることができます。
※東大では、文科一類の学生と文科二類の学生は混合でクラス分けされます。
文科三類
語学が得意な人は、語学の科目をたくさん履修することができ、基本平均点を上げやすいです。また、互いに競争し合う雰囲気の中で勉強に力を入れたい人にはおすすめです。
学生の違い
科類によって、ざっくりではありますが在籍している学生に特色があります。ここではその一部を紹介したいと思います。(あくまで筆者の肌感覚によるものなので、「文科X類だから〇〇という性格だ!」と一意に決めることはできません。ご注意ください。)
文科一類
科類の特性上、司法試験や国家公務員試験合格を目指して1年次から予備校に通う学生がちらほらいます。真面目な学生が多い。単位さえ取れれば法学部への進学は可能だと言われているので、授業や勉強よりもサークルなどの課外活動やアルバイトに傾倒する学生もいます。
文科二類
文科一類に比べると、資格試験や学業よりも、長期インターンやサークル活動、アルバイトに注力する学生が多めです。経済学部に進む場合、1年生の間に後期課程への進学に必要な単位を取り切ってしまえば、2年前期には授業を履修する必要がありません。その時期をどう有効活用するかは学生次第。長期インターンやサークル、アルバイトのみならず、数週間海外旅行に飛び立つ人や、東京を離れ実家でゆっくり過ごす人もいます。
文科三類
進振りで希望する学部学科に進学するために、他の科類よりも高得点が必要であることが多いです。そのため、好成績を修めるために勉強を頑張っている学生が多くいます。また、文科一類・文科二類に比べて女子の割合が高いです。
注意事項
東大入学後には「今の科類じゃなくて別のところにしておけばよかった!」という声を時々聞きます。ここでは、筆者が実際に大学の知り合いから聞いた声を掲載し、科類選びの際の注意点をお伝えしようと思います。
ケースその1「特に理由もなく文三に入学したけど、進振りの底点が高いから文一・文二にしておけばよかった...泣」
→文科三類は、どの学部に行くにしても文科一類・文科二類以上の成績が必要であることが多いです。「合格最低点が低いから」というだけの理由で文科三類を選ぶと、入学後に進路選択に苦労する可能性があります。
(参考:クイズ★進振りケースCASE27 https://note.com/ut_base/n/n3407745756fd )
ケースその2「文三に入学したが、苦手な理系科目を文一・文二よりも多く履修しなければならず辛い...」
→「カリキュラムの違い」にあるように、文科三類では文科一類・文科二類よりも理系科目を多く履修する必要があります。理系分野が好きな人にとっては嬉しい制度ですが、数学や理科に苦手意識を持っていると少し大変なようです。逆に、文系志望ではあるが、インフラや都市計画などの理系っぽいことにも興味がある人には文科三類は非常にオススメです!
ケースその3「文一に入学したが、国関志望×TLP×人文系得意なので、文三に入学した方が進振りに有利だったかも...」
→これはかなり特殊な例(そしてUT-BASE内で実際にあった例)なのですが、
・「国関」は、先述の通り進学に高得点を要する学部です。正式名称は「後期教養学部総合社会科学分科国際関係論コース」です。(国関の紹介ページはコチラ https://ut-base.info/faculties/2 )
・「TLP」とは「トライリンガル・プログラム」の略で、第二外国語を集中的に学習するプログラムです。受講者は他の学生よりも第二外国語の成績が高くなる傾向があります。
・文科三類は語学や人文系の科目で高得点をとれば、文科一類や文科二類よりも基本平均点を上げやすいです。(その分語学などが苦手だとかなり進振りで苦労することになります). そのため、「国関志望×TLP×人文系得意」の人は文科一類・文科二類よりも文科三類の方が高い基本平均点を収めやすいです。
ケースその4「文一に相対評価で好成績を奪われる文二(泣)」
(これもUT-BASE内で実際にあったお話です) 文科一類の学生と文科二類の学生は同じクラスになります。文科一類に真面目な学生が多いため、文科一類の学生の方が好成績な傾向にあります。進振りであまり点数の要らない文科一類の学生が、点数の必要な文科二類の学生の好成績を奪っていく現象が起こります。
以上で文科類の説明は終わりです。最後の記事では「進学選択」のリアルについて詳細に解説します!