はじめに
在学中に教員免許を取得しておこうと思っている方は意外と多いのではないでしょうか?教員免許取得のためにはいわゆる「教職課程」を経る必要があります。しかし、教職課程については『履修の手引き』(←「解読できない」と評判のアレです)や『教養学部便覧』(←赤い表紙の分厚い冊子です。諸手続きの時に配布されます。筆者は入学して早1年になりますが、この記事を執筆するときに初めて開きました。)にしか詳細が書いてありません。しかもその記述もかなり難解です。
そこで、この記事では、1〜2年生の皆さん向けに「教員免許取得のために最低限やらなければいけないこと」を解説します。
教職課程の概要
東大で取得できる教員免許
東大の学部卒業レベルでは、中学校教諭・高等学校教諭の一種免許状を取得することができます。大学院に進学して修士の学位を取得すると、中学校教諭・高等学校教諭の専修免許状を取得できます。小学校教諭免許状や養護教諭の免許状は、東大では取得できません。
また、後期課程の学部ごとで免許を取得できる科目が異なります。どの学部でどの教科の教員免許を習得できるかは『教養学部便覧』94〜98ページで確認してください。
教職課程の中身
教員免許取得のために教職課程で行うべきことは以下の6つです。前期課程では「①必要単位の取得」を行うことになります。
①必要単位の取得【前期課程〜4年次】
②学校体験活動(任意)【3年次・4年次】
③教育実習【3年次(準備)・4年次(実習)】
④介護等体験(中学免許のみ)【3年次・4年次】
⑤教職実践演習【3年次(準備)・4年次】
⑥その他:教職ガイダンス【1年次】学研災(付帯賠償責任保険)加入・教員免許状一括申請申し込み・宣誓書提出・一括申請手数料振り込み【4年次】
注意事項
在学中に教員免許を取得するには、遅くとも2年次からの継続的な履修が必要です。なぜなら、教員免許取得のために履修しなければいけない科目には、前期課程のうちしか履修できない科目があるからです。3年生になってから始めても
、在学中に教員免許を取得することは不可能になってしまいます。
教員免許は教育学部に進学しなくても取得することはできます。(むしろ、教育学部以外でも教員免許を取ろうとする人は多いです。)しかし、教職課程の科目は、教育学部の必修科目及び総合科目と重複しているものが多いです。一方、他学部の場合は、自分の学部を卒業するのに必要な科目に加えて、教職課程の科目も履修する必要があります。そのため、教育学部以外だとカリキュラムを組むのが難しくなったり、勉強の負担が増えたりします。
前期課程(1〜2年)でやるべきこと
前期課程では、主に教員免許の取得に必要な科目を履修していくことになります。とにかく「必修を落とさない+日本国憲法の単位を取る」ことが基本になります。以下、詳しく解説していきます。
①必修の単位を取り切る
必修科目のうち「スポ身(身体運動・健康科学実習)」「既修外国語」「情報」は、教員免許取得のために履修しなければいけない科目に指定されています。この3科目の単位は落とさないようにしましょう。
②総合科目「日本国憲法」を履修する
「日本国憲法」も教員免許取得のために履修しなければいけない科目に指定されています。前期課程で「日本国憲法」を履修せず、後期課程で法学部の「憲法」を履修することもできますが、法学部以外に進学した場合は「他学部聴講」することになります。自分の学部の必修科目などと曜限が重複する可能性があるので、前期課程のうちに履修してしまうことをお勧めします。
③教育学部の持ち出し専門科目より、「教育の基礎的理解に関する科目」などを履修
前期課程の学生でも、教育学部の専門科目を「持ち出し科目」として履修することができます。前期課程の学生でも履修可能な科目は『教養学部便覧』の103〜104ページに掲載されています。このうち、特に駒場で開講されている科目は、前期課程のうちに履修しておくことを強くお勧めします。後期課程で本郷キャンパスにある学部に進学する場合、駒場で開講される科目を受講するためだけに駒場キャンパスにいくことになります。
④(任意)中学校の免許状を取得する場合は、以下に示す哲学・倫理学または宗教学分野の科目のうち少なくとも1つを履修する
中学校の免許状を取得する場合は、以下の科目のうち少なくとも1つを履修することが要望されます。(絶対ではなく、「履修しておいた方がいいよ」という感じです。)
基礎科目で、文系の準必修に指定されている「哲学I」「哲学II」「倫理I」「倫理II」
総合科目の「現代哲学」「科学哲学」「現代思想」「記号論理学I」「記号論理学II」「精神分析学」「西洋思想史」「現代倫理」
後期課程(3〜4年)でやるべきこと
後期課程では、教員免許取得のために必要な科目の履修、教育実習などなどやるべきことが盛り沢山です。ここでは、後期課程で何をしなければいけないのか、簡単に解説します。
①前期課程で修得仕切れなかった単位及び「各教科の指導法」「教科に関する専門的事項」の科目を修得
「教育の基礎的理解に関する科目」などのうち、前期課程で単位を取得しきれなかった科目があったら、3年次〜4年次で履修しましょう。また、自分が取得しようと考えている教員免許の教科別に、「各教科の指導法」「教科に対する専門的事項」といった、履修すべき科目が定められています。(科目一覧は『教養学部便覧』の105ページ〜109ページをご覧ください。)
②教育実習の準備及び実施
基本的には、3年次に申し込みを行い、4年時に実習を行います。実習だけではなく、事前オリエンテーション・実習実施校との打ち合わせ・レポートの提出・事後指導のまとめの会への出席をこなす必要があります。
③(中学免許取得希望者のみ)介護等体験の準備及び実施
中学免許を取得する学生のみ、特別支援学校での介護等体験2日間、社会福祉施設における介護等体験5日間の合計7日間介護体験を行います。原則として3年次に申し込み・講習会を行い、4年次に実習を行います。(1年前倒しで、2年時に申し込み・講習会、3年次に実習を行うことも可能です)
④教育実践演習の準備及び実施
教職課程の集大成として行う演習です。教職課程を履修した学生は全員受講する必要があります。数人の学生でグループを組み、授業の指導案を考えるなど実践的な授業です。(4年のA2タームに行われる授業なので、スケジュールや課題面での負担が重くなります。)
⑤(任意)学校体験活動を実行
学校現場で就業体験を行い、教育実習・教員採用試験前に学校教育の実際を体験的に学びます、任意の活動なので、参加してもしなくても構いません。参加した場合は、一部を教育実習の単位に振り替えることができます。
内部のホンネ
教職課程の授業は出席の管理が厳しく、課題も多いです。また、他の教育学部の授業と同じように、講義よりもグループワークや演習が多くなっています。成績評価はレポートが中心です。「教育の基礎的理解に関する科目」などに比べて、「各教科の指導法」や「教科に関する専門的事項」の授業は履修の自由度が高く、開講されている科目の中から好きなものを選ぶことができます。
教育実習では母校・東大附属中高・東京の公立学校のいずれかから実習先を選ぶことになります。実習先としては母校もしくは東京の公立高校がおすすめです。母校の場合は、慣れ親しんだ環境で実習を行うことができ、東京の公立学校の場合は、現場のリアルな状況を知ることができます。
教職課程は、特に後期課程で履修すべき授業が多いため、その時間と労力を割く決意をきちんと固めておく必要があります。
最後に
最後までお読みくださりありがとうございました!教職課程に関する詳細や、各種申し込み書は全学向 教職課程・学芸員等資格関係掲示板というサイトに掲示されていますので、『教養学部便覧』と合わせてご確認ください。
参考資料
・「東京大学 教養学部便覧I(前期課程)」2020年版
・文部科学省「教員免許取得に係る必要単位等の概要」https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/002/siryo/__icsFiles/afieldfile/2014/04/23/1347091_03.pdf