文科三類に合格し、この春から教養学部教養学科総合社会科学分科国際関係論コースに進むL.Y.さん。彼女は1Sセメスターの時期にどんな活動をしていたのかインタビューをし、記事にしました。
インタビュアー:北村優佳(理科二類新2年)
—----入学当初、どのようなモチベーションだったかを教えてください。
合格発表までは、「やり遂げた」感覚になっていて、受かるとも受からないとも実感として考えられないような状態です。そんな中で合格したという結果を見て、本当に嬉しくてやっと「東大に行くんだ」という実感を持つことができました。高校時代は塾に行っていなかったので、合格発表後は学校の先生などお世話になった方々に挨拶まわりをしました。愚直に教科書読んでたら受かるとわかったのが嬉しかったですし、東大はちゃんと勉強している人を見て受け入れてくれるのだとわかったことも嬉しかったですね。
ただ、当時は東大に進学した知り合いがいなかったので何をすればいいかわからなかったです。同じ高校からの東大合格者が前年はおらず、その前の年にはいたらしいのですが連絡することができなかったので、相談できる先輩がいませんでした。
だから、元々遊ぼうと思っていた三月が過ぎて気づいた時には、周りの人たちがさまざまな手続きを済ませていてびっくりしました。生協にも入り損ねていました笑。大学に本格的に入学してから、自分は情報を何も得られてないということに気づいたんです。
各種手続きは自分でインターネットで調べつつ行ったつもりだったのですが、それでも入学してからはじめて知ることが多かったです。TLPのことも合否の知り方などよくわかりませんでした。履修のことも分からず、同じクラスの友達にとにかく教えてもらいましたね。当時は私の積極的な性格がプラスに働きましたが、あのやり方は全然持続的ではなかったと思います。都内有名進学校出身の人などは情報をいろいろ持っていましたし、かなりの差が開いてしまいました。部活やサークルへのモチベーションも高かったのですが、気づいた時には全部終わっていましたね。
—----どのように情報を集めて、どのような新歓イベントに参加しましたか?
先ほどもあったように、私は情報を全然得られていなかったので、Twitterで情報を見つけた時にはほとんど「募集締め切り」ツイートばかりでした。当時は特に、活動がオンラインになったばかりで情報集約がほとんどされていなかったということもあります。今思うと、合同新歓があったらどれほどよかっただろうと思います。
ただ、私は元々、大学に入ったら昔からやっていたチアをやるか勉強系サークルに入ろうと思っていました。チアの方は絶対にやりたい、と決めてからは新歓も行かずに加入をしました。入ったのは東大運動会応援部チアリーダーズKRANZです。
一方、勉強系サークルを探すのはなかなか難しかったです。情報源が「槌音」という入学生全員に配られるサークルなどが紹介されている冊子だけで、そこでの団体紹介は3行しか無かったため実態がわからず、他の情報も見つからなかったので、新歓イベントを軒並み逃してしまいました。また、チアの練習が水金土日の週4日あったこともサークル探しを難しくしました。これは1Sセメスターあるあるだと思うのですが、各団体の活動紹介文やキャッチフレーズで躊躇してしまうことが多いと思います。実際私も、「この団体では毎週◯曜日の定例ミーティングへの参加が必須です」と紹介されていたため、チアの練習日程との被りから加入を見送った団体もいくつかあります。でも、実際はそこまで厳しくないということを知ってほしいです。例えば、「法律」などとフレーミングされている団体でも、明確に「法学部に進学したい」という志がなければ加入できないわけではなく、社会問題に関心があったり、団体の特性によってはディスカッションが得意だからという理由で加入してもいいんです。表面上の新歓文言だけで判断してしまうことが新入生に多いことは、情報がそれだけに限られているので仕方ないことではあるのですが、やはり自分の可能性を狭めてしまうので残念なことだと思います。意外と学生団体やサークルには柔軟性があります。初めから決めつけず、新歓や先輩に聞いたり、あるいは積極的に足を踏み入れたりして挑戦してほしいです。選考のあるサークルや団体だと全てに挑戦するのは厳しいかもしれませんが、興味のまだ定まってない人はいろいろな新歓に参加したり加入してみたりするのがいいと思います。
このように情報をなかなか得ることができなかった私を救ってくれたのが、MPJ Youth(※1)という団体でした。唯一遅くまで新歓していたんです。もともと中東に興味があったので新歓に参加してみたところ、とても楽しかったので、ゴールデンウィークごろに結果的に加入することにしました。
(※1)MPJ Youth:アフリカを学び、発信する日本最大級の学生アフリカプラットフォーム。詳しくはこちら。
—----当時の日々の過ごし方やそれに対してどう感じていたかを教えてください。
当時はちょうど新型コロナウイルスの流行が問題になってきた時期だったため「自粛しなければならない」という風潮がありました。私は活発で人と会うのが好きな性格なので、誰かに簡単に会えないという状況になって落ち込んでしまい、鬱々とした日々を送っていました。「ずっとこのような状況だったらどうしよう」と非常に不安でした。部活も全面オンラインというのが大学の方針だったため、辛かったですね。同じクラスの友達にそのような悩みを相談するなどしていました。
自粛期間中に自分のことを考える時間が増える中、趣味をたくさん持っている周りのみんなが輝いて見えました。それとは対照的に、自分は何もできていない気がして自信喪失してしまいました。これはコロナに関係なく1Sセメスターでよく見られることだと思うのですが、時間があるからこそ自分と向き合う時間が長くなり、スタートダッシュが遅れてしまって自信を喪失してしまう、臆病になってしまう人は多いのではないかと思います。
—----これはやっていて特によかったなと思うことを教えてください。
学校のシステムの軌道に乗ることができたということですね。例えば、第二外国語の授業は1Sセメスターで培った基礎を踏まえて1Aセメスターでの勉強をすることになるので、1Aセメスターから挽回することはほぼ不可能です。だからこそ、時間もあり授業も比較的簡単な1Sセメスターからしっかり勉強するべきだと思います。この時期は、先生も丁寧に教えてくださいます。
同じように、1Sセメスターのうちから初年次ゼミナール(※2)やALESS/ALESA(※3)の授業でレポートの書き方、文献の探し方の学習などにしっかり取り組んでおくのが大事だと思います。特に、Literacy(※4)の使い方などを使った文献検索の方法を1年のうちから知っておくと、忙しくなる1Aセメスター以降での苦労を減らすことができます。
初年次ゼミナール(以下、初ゼミ)の授業は、かなりバリエーションがありますが、多くの授業で徹底的に文献のリサーチ方法や注の付け方などを教わります。ここでしっかりと手法を自分のものにしておくと、その後の大学生活で雲泥の差が出てくるのではないかと思います。初ゼミは重いことが多く、かなりコスパの悪い授業ではあると思いますが、自分が気になるテーマがあったら先生のいわゆる「鬼仏度」に囚われずチャレンジして欲しいです。
私自身は、岡田晃枝先生という有名な初ゼミの先生の「紛争と介入をめぐる諸問題」という授業を受けていました。そこで、シリア内戦におけるクルド人の動向を扱いました。国家を持たない最大の民族と呼ばれるクルド人ですが、彼らが中東政治やシリア内戦においてどのような立ち位置で、どのような役割を果たしているのかを調べるのは非常に興味深く勉強になりました。
大学生活においては、1Sセメスターは「ここをきっかけに人生が大きく変化する時期」というよりは、「失敗しても大丈夫だから積極的に挑戦すべき時期」だと思います。だからこそ、サークル・部活などいろいろチャレンジするべきです。私はこの時期に大冒険はできなかったですが、この時期に良い成績をとることができたおかげで進振りなどに関して良いスタートダッシュを切ることができたかなと思います。
(※2)初年次ゼミナール:入学したての東大生が、春学期に必ず履修しなければいけない必修科目の一つ。大学以上の学問を学んでいくために必要な「自発的に問いを立て、答えを導く」というプロセスを学ぶとともに、論文の執筆のために必要な先行研究や素材集め・議論・執筆の作法に至る、大学で学ぶ者として最低限身に付けておかなければならないことも学ぶ。
(※3)ALESS/ALESA:1年生での必修の授業で、英語論文を読んだり執筆したりする。理系がALESS、文系がALESAの授業を受ける。
(※4)Literacy:東京大学附属図書館が運営する、情報データベース。サイトはこちら。
—----逆にこれはやったほうがよかったなと思うことがあった場合教えてください。
サークルへのコミットを早めに始めておけば良かったなとは思います。後期からでも間に合うのですが、1年生から活動していると、中心的存在として鋭い問題意識を持った活動参加ができるかなと周りを見ていて思います。最初から頑張っていると先輩にも可愛がってもらえると思いますよ!笑
—----最後に新入生に一言お願いします。
入学おめでとうございます!!!ここまでの受験で、どんな東大を思い描いてきましたか?大学に入学した今、学生生活の理想像は頭の中で思い描くものでなく、自分の行動をもって実現していくものとなりました。研究に没頭するのもよし、学生団体でプロジェクトを主導するのもよし、部活動で仲間と共に熱くなるのもよし、自分の問題意識からインターンや企業をするのもよし。もちろん全部もできる、この自由さが大学の醍醐味です。一方で、高校までとは違って、受け身でいればある程度のコンテンツが降ってくるような環境はもうありません。自分の心の声を聞きつつ、その場その場で適当な判断を下しながら自分の大学生活を1から作っていく力が求められます。1Sセメスターはわからないことだらけで不安いっぱいの日々だと思います。しかし、この期間に冒険してみるのは、自分の感じている不安をチャンスに変えることが出来る最高の機会です。東大に慣れて、その慣れにかまけて低刺激な大学生活を送ることももちろん選択肢の一つですが、あのつらい受験を努力で乗り越えたあなたです。ここまでの自分を作り上げた殻を、東大という最高の学び場で全力で破っていくの、ワクワクしませんか!!!ぜひ、挑戦に溢れた日々を送ってみてください。心の底から応援しています。共に熱く頑張りましょう!