東大前期課程で開講されているTLP(トライリンガル・プログラム)、「ちょっと興味あるけど、TLPの情報が全くなくて決めかねている...」「TLPって具体的に何をするんだろう?」と思っている人は多いのではないでしょうか?
そこで、UT-BASEは知られざるTLPの全貌をまとめた記事を作成しました!記事に掲載されている情報は全てTLP履修生または修了生の経験談に基づいています。ぜひ、皆さんの後悔のない選択にお役立てください!
この記事は2020年度文系中国語TLP生への取材に基づいて作成しています。TLPの制度や成績評価方法などは年度によって異なる可能性がありますので予めご了承ください。
履修までの流れ(2020年度の場合)
3月第2週ごろ 合格手続き:TLP履修申請
3月第3週ごろ TLP履修許可通知:インターネット上で学生の個人アカウントであるUTokyo Accountが公開され、それと同時にTLP履修の可否が通知される。
4月第1週ごろ TLP担当教員から履修すべき科目などについてメールで通知が来る
4月第2週ごろ TLP科目開講
4月第4週ごろ 履修登録(TLP科目でも履修登録が必要)
クラスについて
文系中国語TLP生はTLP生のみで構成されるクラスに所属する。(一方、他言語のTLP生は各々、TLP生と非TLP生から成るクラスに所属する。基本的にはこのクラスで授業を受けるが、TLP生向けに開講される科目のみ、他クラスのTLP生と一緒に受講する。)
2021年度の文系中国語TLP生は全部で33人。この33人が16〜17人ずつの2グループに分割され、それぞれ別の教員から授業を受ける。TLP生のクラスは女子の割合が比較的高く、男女比は男子:女子=3:1~2:1である。
TLP生の授業の受け方は以下の通りである(1S=1年Sセメスター=1年前期、1A=1年Aセメスター=1年後期)
中国語一列・二列【1S:週2コマ, 1A:週1コマ】…TLP生と受講
中国語初級(演習)【週1コマ】…TLP生と受講
中国語初級(インテンシヴ)【週2コマ】…TLP生と受講
TLP生の雰囲気
TLP生は二外(第二外国語)の授業を全て一緒に受けることになるので、交流の機会は多い。また、TLP生には国際交流や国際問題に関心がある人が多く、その人たち同士は仲良くなりやすい。一方、別々に授業を受けるグループ間での交流機会は少ない。
対面授業の際は、クラス内で仲の良いメンバーで食事に行くことがある。また、クラス内で総合科目の勉強会を行うこともある。
TLP生の中には京論壇、金融研究会、川人ゼミ、馬路ゼミなど文化系の学生団体やゼミに所属している学生が多い。一方、スポーツ愛好会バドミントンパートなどの運動系サークルや運動会に所属する学生も一定数存在する。
TLP生の半数程度が海外在住経験があり、中国在住経験がある学生も数名いる。
授業・履修について
履修するコマ・時間割
TLP生が受講する中国語の授業は以下の3種類存在する。
①(基礎科目・必修)中国語一列・二列【1S:週2コマ,1A:週1コマ,2S:なし】…TLP生と受講
②(総合科目L系列・必修)中国語初級(演習)/中国語中級(演習)【週1コマ】…TLP生と受講
③(総合科目L系列)中国語初級(インテンシヴ)/中国語中級(インテンシヴ)【週2コマ】…TLP生と受講
中国語初級及び中級に関しては、1年生=初級、2年生=中級を受講するように定められている。いわゆる「TLP科目」と呼ばれる②③の授業に関しては、文科生向けと理科生向けのコマが別々に開講されており、1SセメスターではTLPの担当教員からメールで履修するコマを指定された。②③の科目については自分で履修登録を行う必要がある。他の科目との兼ね合いから、文科生が理科生向けのコマを履修したり、理系が文系用のコマを履修することも可能。ただし、実際に理科生向けのコマを履修している文科生はほとんどいない。
1年生のSセメスターは週5コマ、Aセメスターは週4コマ、2年生のSセメスターは週3コマ中国語の授業を受けることになる。
TLP科目の内容・難易度
TLP科目の「中国語初級(演習)」(以下「演習」)は基本的にネイティブの教員が担当する。「中国語初級(インテンシヴ)」(以下「インテンシヴ」)は「聴解」と「会話」の2つに分かれており、それぞれ別の教員が担当する。2021年度の場合は「インテンシヴ(聴解)」はネイティブもしくは日本人の教員、「インテンシヴ(会話)」は中国人の教員が担当した。どの科目も授業は原則日本語で行われる。授業内スピーチのフィードバックや授業中の問いかけ・応答は中国語で行われる。
「演習」では授業の冒頭に中国語のビデオを5分間視聴し、感想を中国語で共有する。その後教科書の文章を読解し、文法の説明・和訳・中国語訳を行う。課題として中国語の教科書作成・中国語の試験問題作成・未来の自分への手紙・自分の理想の部屋についてのスピーチなどを課す教員もいれば、毎週テーマに沿った中国語作文を課す教員もいる。
「インテンシヴ(会話)」では教科書の単語・文法の説明や和訳を扱う。また、教科書の文章に関する質疑応答を中国語で行う。
「インテンシヴ(聴解)」では、主に教科書の音源を使用してリスニングをし、聞き取った内容に関する問題を解く。時々教科書以外の音源を使用することもある。
成績・試験について
「中国語一列・二列」の成績は出席点(1~2割)と課題(4割)と試験(4~5割)を総合して決定される。
「演習」の成績は作文課題・授業内のスピーチ(テーマ自由)・期末試験を総合して決定される。
「インテンシヴ」の成績は出席点(2割程度)と試験(8割程度)を総合して決定される。また、「インテンシヴ」では「優3割規定」(1つの科目につき、「優」と「優上」は履修者の上位3割にのみ与えられるという規定)が適用されない。そのため他の科目に比べていい成績を取りやすい。
「演習」の試験では、単語の発音を拼音(中国語の発音を示す発音記号)で書く問題・中国語表現の穴埋め問題・長文読解問題が出題される。
「インテンシヴ(聴解)」の試験は1Sセメスター、1Aセメスターそれぞれ次のような内容である。
1Sセメスター:2021年度の場合オンライン試験。中国語検定(HSK)の形式を模したリスニング問題が出題される。
1Aセメスター:音源を聴いて短答形式の問題に答える。
「インテンシヴ(会話)」の試験は1Sセメスター、1Aセメスターそれぞれ次のような内容である。
1Sセメスター:2021年度の場合オンライン試験。教員の前で学生が2人ペアになり中国語で会話を行う。
1Aセメスター:学生は1人ずつ中国語でスピーチを行い、それに関して教員と質疑応答を行う。
勉強面の負担について
「演習」は課題が多いので負担が重いが、それ以外はほとんど課題がないのでそれほど負担は重くない。しかし、進度が早いのでしっかり勉強をしないと授業についていけなくなってしまう。
中国在住経験がある学生や中国語を勉強したことがある学生はどんどん中国語の勉強を進めて行く一方、初修の学生はそのペースについていくのにかなり苦労する。
授業外の勉強時間は人によって異なるが、自分で中国語検定(HSK)の問題集を購入して勉強を進めている学生もいる。
継続及び編入について
終了条件
TLPを修了するためには、以下の条件を満たす必要がある。
・中国語一列・二列、演習、インテンシヴの単位を全て取得する
・IELTS7.0 TOEFLiBT100以上 もしくは 1Aセメスターの英語一列期末試験でG1(≒上位1割、300位以内)の成績を収める
編入条件
2020年度、2021年度Aセメスターは編入生の募集がなかった。
継続する人・編入する人の割合
1AセメスターでTLP科目を履修しなくなる人は全体の1/8程度。2020年度、2021年度は1Aセメスターからの編入生募集は行われなかった。TLP科目を履修せず、TLP継続を断念した学生もそのままTLP生と同じクラスに残り続ける。
メリット・デメリット
メリット
・語学を集中的に勉強できる。
・TLP生は意識が高い人が多いので勉強面で頼りやすい。また、周りのレベルが高いのでモチベーションが上がる。
・TLP生向けに中国語の教材を無償で貸してもらえる。
・中国人留学生と交流する機会がある。これは教員側からの誘いもあれば、学生間で組織される場合もある。
デメリット
・1Sセメスターは週5コマ中国語の授業を受けるので、負担が多くモチベーション維持が難しい。
・TLP科目の開講曜限によっては、受けたい総合科目を履修できない場合がある。
・TLP科目は1限(8:30開始)に開講されることが多いので、朝起きるのが苦手な人にとっては辛い。
・周囲のレベルが高すぎて自分のアイデンティティを見失うことがある。
・授業の進度が早く、習得すべき分量も多いのでかなり勉強量が必要。一度勉強を怠るとキャッチアップできなくなる。
海外研修・その他
海外研修
中国語TLPでは複数回(2021年入学生の場合は①1年3月・②2年8月・③2~4年の9月)海外研修の機会が設けられている。
①台湾研修
行き先:台湾
期間:1週間
内容:研修中は、各学生がそれぞれテーマを設定し、それに関連する場所を訪問する機会がある。(例:新聞記者の方に人権についてのお話を伺う/フードバンクを訪問して台湾国内の食の支援の状況を学ぶ/先住民族の文化について知る/緑島で台湾の白色テロについて学ぶ、など等)また、フィールドワークは台湾の学生とペアになって行う。
費用:飛行機代は大学負担で、その他大学から費用補助が出る。
体験談:台湾と聞くと、日本では「ご飯が美味しい」「親日」などよいイメージがあると思うが、それだけでなく、中国との関係の中で国内の政治的弾圧を克服して今に至っていることを学ぶことができた。また、フィールドワークでは台湾の無料スーパーを訪問し、日本では発展途上の分野での先進的な取り組みに触れて刺激を受た。自由時間はある程度担保されている一方で、ただの観光では学べない台湾の歴史や文化に接することができ、実りの多い学びの機会となった。さらに、研修中は九州大学の学生と行動を共にすることが多く、彼らとも仲良くなることができた。
②南京サマースクール
行き先:南京
期間:3週間
内容:平日の午前中は南京大学の先生の中国語の授業を受講し、午後は太極拳や習字などを体験する(フリーになる時もある)。
休日は博物館や有名な遺跡をめぐる観光ツアーが開催される時もあるが、それがない時は街中に遊びに出かけたり市内の著名な美術館・博物館を訪問したりする。なお、当研修は非TLP生も参加することができる。
費用:南京大学の寮の宿泊費用・語学授業の受講料・飛行機代は大学負担。生活費とお土産代は自己負担。
体験談:南京大学の先生方や学生とディスカッションをする機会があるが、基本的には資本主義社会で暮らしている日本人からすると違和感を感じることもあるかもしれない。しかし、価値観が違う場所に行って現地の人と話をする機会を得られるのはとても貴重な体験であり、参加してよかったと思う。
南京研修に関しては、こちら→https://lapsummer.wordpress.com/ のサイトから参加学生の体験談を読むことができる。
③北京社会文化研修(北京深思)
行き先:北京
期間:1週間
内容:北京の企業訪問を行う他、北京大学の学生と一緒に大学の授業を受講する。研修は非TLP生でも参加することができる。
費用:飛行機代・宿泊費用・研修費は、大学とスポンサー企業が負担。それ以外の生活費や海外旅行保険などは参加者の自己負担になる。
その他
・HSKという中国語試験の費用を大学に負担してもらえる。基本的には1年間で1回分。
・教員がTLP生に向けて中国に関する講義やシンポジウムを紹介してくれる。
内部の本音
TLP科目を受講すると、語学を早く上達させることができる。しっかり勉強していれば中国語での会話もできるようになるので楽しい。授業以外でも様々な団体で活躍するメンバーが多いため、仲を深めると刺激的な学生生活が送れるはず。