東大前期課程で開講されているTLP(トライリンガル・プログラム)、「ちょっと興味あるけど、TLPの情報が全くなくて決めかねている...」「TLPって具体的に何をするんだろう?」と思っている人は多いのではないでしょうか?
そこで、UT-BASEは知られざるTLPの全貌をまとめた記事を作成しました!記事に掲載されている情報は全てTLP履修生または修了生の経験談に基づいています。ぜひ、皆さんの後悔のない選択にお役立てください!
この記事は2019・2021年度理系スペイン語履修者への取材をもとに作成しています。TLPの制度などは年度によって異なる可能性があるのでご了承ください。
履修までの流れ(2021年度の場合)
3月第2週ごろ 合格手続き:TLP履修申請
3月第3週ごろ 諸手続きのクラス発表:TLP履修の可否が分かる
4月第1週ごろ 履修すべき科目などについてガイダンス
4月第2週ごろ TLP科目開講
4月第4週ごろ 履修登録(TLP科目でも履修登録が必要)
クラスについて
理系スペイン語TLP生は一学年あたり20人程度いる。「TLPクラス」というものは存在せず、TLP生は、TLP生と非TLP生から成る一般クラスに所属しつつTLPの授業のみTLP生と受講することになる。
また、受講する科目とその受け方は以下の通りである。(1S=1年Sセメスター=1年前期、1A=1年Aセメスター=1年後期)
スペイン語一列・二列【1S:週2コマ, 1A:週1コマ】…自分のクラスで受講
スペイン語初級/中級(演習)【週1コマ】…TLP生と受講
スペイン語初級/中級(インテンシヴ)【週2コマ】…TLP生と受講
TLP生の雰囲気
TLP生は概して勉強に対するモチベーションが高く、スペイン語はもちろん語学以外でも勉強を教え合うことがある。また、一緒に遊びに行くことはあまりないが、授業が終わった後にTLP生同士で学食に行くことはある。
TLP生の課外活動へのコミット度は人それぞれであり、サークルに入っていない人もいれば、テニスをはじめとしたサークルに入っている人、運動会に所属している人もいる。
理系スペイン語TLP生のほとんどが期間の差はあれ海外在住経験をもち、2019年度の場合は留学生もいた。
授業・履修について
履修するコマ・時間割
TLP生が受講するスペイン語の授業は以下の3種類存在する。
①(基礎科目・必修)スペイン語一列・二列【1S:週2コマ,1A:週1コマ,2S:なし】…自分のクラスで受講
②(総合科目L系列・必修)スペイン語初級(演習)/スペイン語中級(演習)【週1コマ】…TLP生と受講
③(総合科目L系列)スペイン語初級(インテンシヴ)/スペイン語中級(インテンシヴ)【週2コマ】…TLP生と受講
スペイン語初級及び中級に関しては、1年生=初級、2年生=中級を受講するように定められている。いわゆる「TLP科目」と呼ばれる②③の授業に関しては、文系用と理系用のコマが別々に開講されており、1SセメスターではTLPの担当教員からメールで履修するコマを指定された。②③の科目については自分で履修登録を行う必要がある。
他の科目との兼ね合いから、文系が理系用のコマを履修したり、理系が文系用のコマを履修することも可能。
1年生のSセメスターは週5コマ、Aセメスターは週4コマ、2年生のSセメスターは週3コマスペイン語の授業を受けることになる。
TLP科目の内容・難易度
1年生の間は「スペイン語初級(演習)」(以下、「演習」)と「スペイン語初級(インテンシヴ)」(以下、「インテンシヴ」)の両方の科目において スペイン語ネイティブの教員が担当した。演習の授業は 1Sセメスターの間は英語中心、1Aセメスターからはスペイン語中心で行われた。インテンシヴの授業は1Sセメスターからスペイン語で行われた。2年生に上がると演習はスペイン語ネイティブの教員、インテンシヴは日本人の教員が担当し、演習はスペイン語、インテンシヴは日本語で授業が行われた。
1年生の間は、インテンシヴでは文法の解説や会話を中心に扱い、演習ではインテンシヴで習った文法を使って文章を書いたり、会話表現などを習得したり、それを使って実際にTLP生同士で会話したりする。2年生になるとインテンシヴではスペイン語の新聞記事の読解やyoutube動画のリスニングを行い、演習では新しい教科書で文法のおさらい・リスニング・読解を行った。
成績・試験について
成績は主に出席・小テスト・期末試験によって評価される。教員によっては中間試験を行う場合もある。小テストは教科書の章が2つ終わったら行っていたが、小テストの頻度は教員によって異なる。
期末試験は筆記試験と口述試験からなる。筆記試験は教科書の文章の穴埋め問題や、自由作文(イラストの説明・特定の文法事項を使った文章)、リスニングで構成される。口述試験は1Sセメスターは自己紹介とイラストの説明、1Aセメスターは自分の好きなテーマでプレゼン、2Sセメスターはスペイン語新聞記事の解説と自分の意見を述べるプレゼンを行った。
勉強面の負担について
理系は必修が多いので、それに加えてTLP科目を履修すると、1週間のコマ数がかなり多くなる。また、TLP科目は必修とかぶらないように組まれているため、1限(8:30~)や5限(~18:35)に開講されることが多い。そのため、朝早く学校に行ったり、夜遅くまで学校に残ったりしなければならない。
TLP科目の課題はそれほど多くなく、スペイン語一列・二列の小テスト対策に加えて、多くとも週に2時間程度かければ十分に予復習を行うことができる。
継続及び編入について
継続条件
スペイン語TLPでは、セメスターごとにTLPを継続できるか否か大学に判断される。公式には、以下の要件を満たすことができなければ、TLPの継続履修は認められないとされている。また、受講登録の際にTLP科目を登録しないと、自動的にTLPの対象からは外されることになる。(※ただし、英語一列の成績についてはあまり厳密に判断されるわけではなく、英語一列でG1(≒=上位1割)の成績を収めることが出来なくても、2SセメスターでのTLP修了までにTOEFLiBTかIELTSで下記の成績を納めていれば修了が認められる。)
・英語一列の成績がG1(≒=上位1割)(もしくはiELTS7.0以上 TOEFLiBT100以上)
・スペイン語の成績(必修科目+TLP科目)が全て優もしくは優上
編入条件
以下の 2 つの条件を満たすこと:
・前セメスターのスペイン語一列・二列の成績がともに「優」以上であること。文科生はスペイン語初級(演習)においても「優」以上であること
・前セメスターの英語一列1で G1 の成績を収めていること、ないし IELTS で7.0 以上のスコアを収めていること。
このうえで、編入試験が行われ、それに合格すればTLPへの編入が認められる。
継続する人・編入する人の割合
1Sセメスターから2Sセメスターにかけて、合わせて10人程度メンバーの入れ替わりがあった。編入生には編入以前のセメスターでインテンシヴの授業を履修していた人も履修していなかった人も両方存在し、「TLP生に誘われたから編入した」という人もいる。一方、1限の授業が多いことから、それに出席できなくなりTLPの受講を取りやめた人もいる。
メリット・デメリット
メリット
・スペイン語を習得できる
必修の授業を受けるだけで第二外国語を習得するのは難しいが、TLPを受講すると1年半で会話ができるレベルにはスペイン語を上達させることができる。また、TLPを受講せずにスペイン語を習得しようと思うと、自分で演習の授業をたくさん履修したり語学研修を調べたりしないといけないが、TLPの場合は高度な語学の運用力をバランス良く鍛えるためのカリキュラムやプログラムが全てパッケージ化された状態で大学から提供されるのも魅力。
・スペイン語圏の文化をより深く学べる
必修では時間がなく文化まで学ぶことはできないが、TLP科目では授業の中でスペインやラテンアメリカの文化を学ぶことができる。また、スペイン語を知ることで、日本語で調べるよりもずっと多くのスペイン語圏文化の情報を得ることができるようになる。(例:Wikipediaにおいて、日本語で「チョリソー」と検索しても「辛いソーセージ」程度の情報しか出てこないが、スペイン語で”Chorizo”と検索すると膨大な量の情報がヒットする。)
海外研修・その他
海外研修
2022年度の海外研修の概要は以下の通りである。
期間:2年生の夏休み(9月第1週~第3週)
内容:メキシコ国立自治大学付属スペイン語学校(CEPE)でスペイン語やメキシコの歴史の授業を受けたり、協定校の学生とともにメキシコシティの旧市街や史跡を訪れる。
費用:大学から補助が出るため、自己負担額は20万円くらい
2019年度は海外研修の代替として、オンラインでメキシコとの交流プログラムがおこなわれた。そのプログラムの概要は以下の通りである。
期間:2年生の夏休みに1週間弱 日本時間の午前9時〜12時
内容:メキシコの歴史や美術、スペイン語文法についてのメキシコの大学の授業を受講したり、日本語とスペイン語で現地の学生と「環境問題」や「核軍縮」についてディスカッションを行った。
体験談:特に現地の学生とのディスカッションが印象に残った。メキシコと日本は環境も情勢も異なるので、双方から全く異なる意見が出たところが面白かった。さらに、政治問題について話し合うために事前調査を行なったが、それにより自分の意見を再発見したり、現地の学生に日本の政治をどう説明したら良いのかを再考したりするきっかけになった。ディスカッションでは難しい単語が出てくることもあったが、習ったり調べたりした文法・単語をつなぎ合わせながら説明した。日本語・スペイン語の両方ができる先生がファシリテーターをしてくれたので、双方意見を伝えたり理解したりすることはできた。
検定試験の費用補助など
TLP生は、DELE(スペイン語検定)の費用を年に1回分全額大学に補助してもらえる。
内部の本音
東大生ともなると英語は皆話せるので、自分にしかない特技が欲しいと思ってTLPを継続しました。TLPをやめようと思ったこともあったのですが、モチベーションが高い学生が周りにいたこともあり、旅行で使える程度にはスペイン語を話せるようになって、続けて良かったと思っています。
また、クラスメイトよりもTLP生同士の方が仲良くなりやすいので、友達が欲しい人にはおすすめです。もちろん、五月祭の準備などを通してクラスメイトとの親睦は深まったのですが、私のクラスは必修の授業にすら来ない人も結構いました。なので、祭りの準備期間以外は、授業に出席する特定の人としか関わることが基本的にありませんでした。
それに対してTLPの授業は全出席がマストなので、週三回コンスタントに顔を合わせていれば自然に仲良くなっていき、仲の良さも継続していったように思います。
必修は広い講義室で、教員の話を聞くだけの「受け身」の講義が多いのに対して、TLP科目は少人数クラスで会話実践の機会が多いので、授業中の「距離感の近さ」で仲良くなれたように思います。「好きな歌手や趣味とかを話してみましょう」という場面もあり、授業後にその話で盛り上がったりしたこともあります。
理系スペイン語TLPは、非常に厳しいと評される先生が授業の一部を担当しますが、やる気のある学生には優しいです。教科書の中にスペイン風オムレツの作り方を説明する部分があるのですが、そのオムレツを実際に作ってきた学生がいたため、その先生が授業を早く終わらせてみんなでそれを試食した、というエピソードもあります。(ただし、授業に出席しない学生はことごとくその先生に不可を付けられるので注意が必要です。)