情報科学の手法で生命現象を解明する〜寺田透先生(農学部生命化学・工学専修)〜

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初めに

今回訪問した研究室は、農学部生命化学・工学専修/農学生命科学研究科 寺田透先生です。
先生の情報はこちらから!!

メンバー:駒場の授業「構造化学」「物性化学」にて化学反応におけるエネルギー変化を計算する方法を学びましたが、近似された非常に簡単な系に適応するに留まっていたので、実際にそのような計算がどのように応用されるか気になりました。また、学科の授業の中でタンパク質の立体構造を情報科学を援用して予測することが一部可能になっていると聞いて興味が湧きました!今回訪問する寺田先生の研究室は生命現象を物理・化学の法則や情報科学を用いて説明しようと試みられているということで、お話を伺いながら気になったことをいくつか質問させていただこうと考えています!
特に、
・先生のご研究
・農学部とは?
・研究室の計算資源
について詳しく聞いていきます!!
 

先生のご研究について

メンバー: まず初めに、先生の研究について教えて下さい。
 
先生: 私たちの研究の目的の一つは、生体内高分子が機能するメカニズムをコンピュータの力を使って計算し明らかにすることです。例えば生のタマネギを切り刻むと涙を催す物質が出ますよね。この時働く催涙因子(PTSO)は、タマネギが溜め込む酵素の働きで生産されることはわかっていたのですが、その仕組みはずっとわかっていなかったんです。
私たちはこれを酵素LFSの立体構造解析とLFS内部で起こる化学反応の理論計算を組み合わせて解き明かしました。このとき用いた計算方法として、QM/MM法というものがあります。QM/MM法は精度の高い量子化学計算と古典的な分子力場を組み合わせて用いる方法で、ある程度反応機構を予測した際に、その反応の中核を担う部分にのみ量子力学的計算を適用します。他にも機械学習を用いてタンパク質が相互作用するかを予測したり、タンパク質の構造に基づいてリガンドの結合部位を予測したりする研究をしています。(興味がある方は、ぜひこちらも読んでみてください!)

 
メンバー:構造化学で勉強した内容がこんな風に研究に活かされているのかと驚きです!例えば「〇〇な機能を持つタンパク質」の構造を同定するなどの研究も進んでいるのでしょうか?
 

 
先生:それはまだまだ発展途上ですが一つの目標にしています。タマネギの例は酵素と基質の反応でしたが、それだけではなくタンパク質同士の運動を計算により解析することも行っています。大腸菌の細胞膜には異物を外に出す機構が存在していますが、その機構に関わる運動のメカニズムを計算により解明しました。
 
メンバー:実験をして現象を見つけ出し、実際に計算で確かめるという流れを経る以上、その両方が大切になるんですね!
 
先生:最近では現象を実験により見つけ出す研究室と、実際に計算を行って検証する研究室とが分かれている事も多いです。実際、先程述べた研究もドイツ研究室と共同で行ったもので中国のグループが公開していたデータも利用して行われた研究なんです。私たちの研究室は計算の依頼を受けて、ある研究の計算部分だけを担う事もあります。

農学部とは

メンバー:ところで、先生の研究室は農学部の研究室ですよね。今までのお話で私たちが持っている農学部のイメージに合致するところが出てこなかったのですが、、
 
先生:農学部と言っても私自身理学部出身で、20年程前に農学部に移ってきたんですよね。農学部というと確かに食物などの研究が多いかもしれませんが、少しイメージとは違うかもしれませんね。(農学部の研究の幅広さについては農学部の教員カタログを参照)
 
メンバー:そうなんですね!!イメージが変わりました。さまざまな学問の横断領域にあるようなご研究をされているようですが、このような研究を行うために学部時代に準備しておいた方が良いことは何かありますか?
 
先生:幅広い興味を養いつつ、得意な分野を一つ作ることです。両方必要ですね。特に私たちの研究室はコンピュータを扱うのが好きな人が向いているような気がします。
 

 
先生:これが実際の計算に用いているコンピュータです。他にもお金を払って使っている別のコンピュータもあります。研究室のメンバーが操作できるようになっていて、研究室のいろんなメンバーが各々計算をしています。
 
メンバー:一つの計算にはどれぐらいの時間がかかるものなのですか?
 
先生:もちろん場合によりますが、条件設定などのミスを修正して妥当な結果を得るためには半年程度はかかります。計算にかけている間は、論文を書いたり研究方針を見直したりします。
 
メンバー:そんなにかかるのですね、、!研究室に配属されると、どのようにこのコンピュータに慣れていくのでしょうか?研究室に入る前に何か学んでおくべきことはありますか?
 
先生:新しくコンピュータを操作する学生向けに教材のようなものを用意しています。先輩に教えてもらいながら少しずつ慣れていくイメージなので研究室に入ってから学び始めても大丈夫です。
 
メンバー:この研究室は学部生の受け入れも行っているのですか?
 
先生:興味がある方にはぜひ一度見学に来てもらえればと思います!実はこのコンピュータは家からもアクセスできるので、計算をしてみる事もできますね。
 
メンバー:寺田先生今日は本当にありがとうございました!教養学部の学びとの繋がりや教養学部生としての研究室との関わり方を学べただけでなく、農学部の印象も変わってとてもいい経験になりました!

最後まで記事を読んでくださりありがとうございました!
最後に1点、この記事を作成したUT-BASEからお伝えしたいことがあります。

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