はじめに
多くの東大生が頭を悩ませる意思決定である「進学選択」。
「〇〇に興味はあるけど、どの学科で学べるのかわからない」なんて思ったことはありませんか?
この記事では、そんな皆さんのお悩みに応えるべく、社会学分野について学ぶことができる学科を「横断的に」比較紹介しました。
皆さんの選択を少しでも支えることができれば幸いです。
※本記事の内容は2022年度以前の情報に基づいています。現在記事を更新中ですのでしばらくお待ちください。
教養学部・相関社会科学コース
基本情報
- 名称:教養学部教養学科総合社会科学分科相関社会科学コース
- 説明:相関社会科学(Interdisciplinary Social Sciences)とは、社会科学の基礎領域である法、政治、経済、社会、文化についての学問的知識を横断的にとらえ、現代の社会現象を学際的な視座から分析し解明することを目的とする学問である。これらの学問の基礎的な部分や具体的な事例を学ぶ授業が多く開講されている。
- 定員 計34名
- 第一段階
- 文Ⅰ・文Ⅱ(指定科類) 12人
- 文Ⅲ(指定科類) 11人
- 全科類 1人
- 第二段階
- 文Ⅰ・文Ⅱ(指定科類) 8人
- 文Ⅲ(指定科類) 1人
- 全科類 1人
- 要求科目はない。ただし、重率をかける科目として、基礎科目の「社会科学」の成績上位8単位分、総合科目のうち以下の大科目に属する科目の成績上位4単位分が定められており、いずれも重率は2である。なお、履修登録した科目のみを対象とし、規定の単位(8単位ないし4単位)に満たない場合は自分が履修登録した科目の単位のみに重率をかける。
- A系列
- B系列
- C系列
- 【法と社会】【現代社会論】【相関社会科学】【経済と社会】
- F系列
- 公式ホームページ:http://www.kiss.c.u-tokyo.ac.jp/undergraduate/aboutundergraduate/ugsr/
主な教員紹介
社会科学を全般的に学べる一方、その時にいる先生により、具体的に学べることは変わるため、どんな先生がいるかをチェックした方が良い。少人数の授業は多いものの、ゼミというわけではない。ただ、先生と近い距離で話せる環境がある。以下では、特に社会学に限って先生を紹介する。
- 佐藤俊樹先生:M・ウェーバーやN・ルーマンを中心に研究しており、日本社会学の有名な論文を読む授業と組織論の論文を読む授業を開講し、それらを通じて社会学方法論・社会学理論を教えている。計量社会学・数理社会学にも詳しい。
- 市野川容孝先生:アメリカ社会学の教科書を読む授業を開講しており、社会学の基礎を教えている。専門は障害学/医療社会論で、M・フーコーの生権力論などを扱っている。
- 橋本摂子先生:社会階層論、ポルノグラフィに関する少人数で議論中心の授業を開講している。H・アレントの研究もしている。
- 瀬地山角先生:特に東アジアのジェンダー論を研究しており、ジェンダー関係の文献を読む授業を開講している。
カリキュラム
- 卒論を非常に重視し、そこまでの問題関心の整理と事前学習として各授業を捉える。学科の先生が開講するコース科目40単位以上取る必要があり、比較的自由度は低い。また、後期課程にしては珍しく、言語科目を8〜16単位取る必要がある。他に、前期で言う主題科目に該当する高度教養科目を6単位以上、卒業論文10単位を満たす必要がある。
学生の声
- 幅広く学べるといっても担当教員の専門分野についての授業が多いので、やや偏りがあることは否めない。例えば、「社会学」の分野であればジェンダー論、社会階層論、社会システム論などの特定分野を通して「社会学」を学ぶという形式を取るので、社会学を学びたいがジェンダー論や社会階層論は興味がないので避けたいといった場合には苦痛に感じることがあるかもしれない。政治・法分野についても同様。シラバスを見て決めるのが一番だと思います。
- 様々な分野の教員・学生が集う駒場の開放性は、居心地のよさであり、日々の刺激でもあります。相関社会科学コースの授業のみならず、駒場の他コース(現代思想コースや地域分科、東アジア藝文書院(EAA)、理学部数学科など)の授業にも気軽に出入りしながら、少人数の教室でいろいろな人と接するなかで、自らの学びというものを深めることができます。外国語の授業も本郷と比べると多いでしょう。社会学分野の先生を挙げるとすれば、佐藤俊樹先生や市野川容孝先生、そして上述の橋本摂子先生などでしょうか。先生と学生の数だけ分野があります。それぞれが個々の分野を扱いながら、同じ「社会」に目を向けつつ、緩やかなつながりをつくり出しています。進学を検討している人は、一度UTASでシラバスをみてみるとよいのではないでしょうか。
文学部・社会学専修
基本情報
- 名称:文学部社会学専修。
- 説明: 「社会とはなにか」「社会と個人とのよりよい関係はどういうもの か」という基本問題への現実的な関心を根底に、学説、理論、階層、公共性、福祉、社会 政策、科学、技術、環境、リスク、文化、社会意識、家族、ジェンダー、 人口、セクシュアリティ、コミュニティ、社会問題、臨床などの領域を中心とした教育・研究活動を行う。
- 定員:50名程度
- 要求科目・要望科目はない。
主な教員紹介
社会学研究室には多種多様な教員が所属し、教員ごとに専門分野が大きく異なるため、ここでは先生ごとにその専門や特徴を紹介する。なお、教員ごとに研究分野を簡潔にまとめているため、代表的な著作や重視する授業の方式などの詳細については、社会学研究室の公式HPを参照するのが良い。
- 佐藤健二教授
文化・社会意識および歴史社会学の分野で研究している。日本における〈近代〉の総体的な把握がテーマだが、データ資料の具体性からいかに社会学的な想像力をたちあげるか。理論に対する感性や理解力だけでなく、素材を理論的対象にまできたえあげる方法的な構想力も大事だと考えている。
- 白波瀬佐和子教授
人口変動、格差・不平等、世代・ジェンダー、について計量的分析手法を用いた研究を、専門とする。生活保障に関する公・私分担についても研究し、社会保障と家族のあり方について、比較福祉国家論の枠組みから検討を試みている。また、量的調査を中心とする社会調査法を専門とする。
- 赤川学教授
社会問題の社会学、セクシュアリティ・ジェンダー論、言説の歴史社会学、人口減少社会論などが専門だが、「社会調査のなんでも屋」を目指している。
- 出口剛司教授
専門領域は、社会学史及び理論社会学。とくにT. W. アドルノ、M. ホルクハイマー、E.フロム、H. マルクーゼ、J. ハーバーマス、A. ホネットらフランクフルト学派の批判理論を継承し、批判的社会理論の構築をめざしている。またそうした批判的社会理論をコミュニケーション、承認、社会的自己といった社会現象に応用し、現代社会におけるそれらの病理形態の分析に取り組んでいる。
- 祐成保志准教授
コミュニティの社会学を担当している。社会調査史やメディア研究にも関心をもってきた。コミュニティ研究は日本の社会学のなかでも伝統ある分野の一つであるが、従来は軽視されてきた住宅に焦点を当て、欧米における「ハウジング・スタディーズ」の研究を踏まえながら、コミュニティ研究の方法を構築することが目下の課題である。
- 井口高志准教授
ケア・支援の社会学、医療社会学、臨床社会学などを専門とする。研究の出発点として、家族介護を中心に、介護・ケアという行為の特性と、それに対する社会的支援のあり方を、インタビュー調査などの質的方法を通じて明らかにすることに取り組んできた。その後、特に認知症(dementia)という現象に注目するようになり、現在は、介護・ケアの領域を含みつつ、それを超えた認知症の排除や包摂の問題、病いや障害の語り、当事者との共同の有り様、認知症概念の日常生活への効果などの課題に取り組んでいる。
- 髙谷幸准教授
専門は、移民研究、国際社会学・グローバル社会学。国際社会学・グローバル社会学は、国民国家の枠には収まらない社会現象を扱う分野だが、自らの研究としては、主に日本における移民・外国人、とりわけ非正規移民や移民女性を対象に、インタビューや参与観察など質的調査による研究を行ってきた。
カリキュラム
社会学専修では、全員が共通に受講する必修科目として「社会学概論」「社会学史概説」および「社会調査」(それぞれ4単位)の3つがあり、このうち「概論」と「調査」は2年次の A セメスターに開講される。さらに、「社会学演習」を8単位以上、「社会学特殊講義」の中から12単位以上を履修しなければならない。ほかに、卒業論文12単位、他の専修課程の授業、共通科目、他学部の授業などを含め、合計で76単位を取得することが卒業の要件となっている。
学生の声
- 社会学に真面目に取り組む生徒が多い。必修は少なめ。3年の社会学概論で各分野を紹介し、興味のあるゼミを選ぶ形で提供されている。社会学を学べる、ということよりさまざまな学部の授業が取れる、ということが魅力だと思う(社会学専修だからとれるという授業が一つもないので)。
- 幅広い内容について学べ、卒論のテーマもかなり自由に設定できるのが社会学の魅力だと思います。社会学の学説史を学ぶ授業が必修で入る以外には現在社会学研究室に所属している先生方+αが開講してくださるゼミに所属することになります。理論・セクシュアリティ・家族・都市・医療・国際・民族・福祉・芸術などの分野でゼミは開講されています。自分が所属しているのは理論のゼミになりますが、卒論のテーマはかなり幅広く設定する事ができます。他には社会学における調査(質的調査・量的調査の両方)を学べる授業もあり、実践的な方法論を学べる事ができます。それ以外では社会学特殊講義という形で数多くの授業が開講されており、先生によって扱われる分野は様々です(自分は理論とジェンダーを1セメスターの間に受講していました)。
教育学部・比較教育社会学コース
基本情報
- 名称:教育学部 教育学科 総合教育科学専攻 教育社会科学専修 比較教育社会学コース
- 説明:比較教育社会学コースでは社会学を中心に、歴史学・経済学・文化人類学などに基づいて、「社会現象、文化現象としての教育」を、国際比較や異文化理解を含めた多角的な視点から理論的・実証的にアプローチし、総合的に考察できる学生の育成をめざしている。複雑化し、多様化し、グローバル化する現代教育の諸相を、社会科学的に解明しようとする学際的なコース。
- 定員:17名
- 要求科目・要望科目はない。
主な教員紹介
- 本田由紀教授:教育社会学
家族・教育・仕事という異なる社会領域間の関係について調査研究を実施。著書に『教育は何を評価してきたのか』(岩波書店、2020年)などがある。
- 橋本鉱市教授:高等教育論
高等教育に関わる諸事象を、主に歴史社会学的なアプローチによって研究している。分析対象は、学問領域・内容の制度化プロセス、プロフェッションとしての大学教授職など多岐にわたる。
- 中村高康教授:比較教育システム論
「教育と選抜」に関わる諸現象の計量的・比較社会学的検討が主な研究テーマ。社会階層と教育制度の関連、進路選択と地域性の問題、メリトクラシー(能力主義)に関する理論的考察なども手がけている。
- 仁平典宏教授:教育社会学
「教育的なもの」をその外部において捉えることを課題としている。著書に『「ボランティア」の誕生と終焉ーー〈贈与のパラドックス〉の知識社会学』(名古屋大学出版会、2011年)などがある。
- 額賀美紗子准教授:比較教育学
グローバル化の進展が家族・学校・子どものアイデンティティや能力形成に及ぼす影響に関心を寄せ、国際移動する子どもに注目し、在米日本人家族や在日外国人家族のエスノグラフィー研究を行っている。
カリキュラム
卒業までに必要な単位は70単位以上であり、卒論8単位、必修科目30単位、選択科目32単位以上という内訳になっている。なお、詳細は以下の表を参照。必修科目のうち10単位は教育学部内の他専修の授業科目であるため、必然的にコースや専修の垣根を超えて履修することになる。
必修科目の内訳
・比較教育社会学概論:4単位(※1)
・比較教育社会学基礎演習:4単位(※2)
・教育社会科学演習及び教育社会科学特殊講義:10単位(※3)
・教育学部他専修の授業科目:10単位(※4)
・比較教育社会学研究指導:2単位
(※1):「教育社会学概論」(2単位)は必修とし、さらに、「比較教育学概論」(2単位)または「高等教育概論」(2単位)のいずれかから2単位を選択必修とする。
(※2):「教育社会学調査実習Ⅰ」(2単位)と「教育社会学調査実習Ⅱ」(2単位)は必修。
(※3): 「及び」とあるものは、「演習」と「特殊講義」にまたがって単位を取得しなければならない。なお、教育実践・政策学コースと合わせた教育社会学専修の中で開講されている授業を履修することになる。詳細はUTASの「学科・コース別検索(シラバス参照)」で確認できる。
(※4): 概論2単位以上を含む。
学生の声
- 「教育」「社会」どちらを軸にしても、貧困、格差、ジェンダーあたりに関心がある学生はドストライクかと。ただし、「教育学」に興味があるが、教室内での相互作用などミクロな視点(個人の問題)に興味があったり、そもそも教育とは何かという哲学的な問い、具体的な実践の手法について学びたい学生には魅力的ではない。「社会学」に興味ある学生に関しては、調査実習にしても卒論にしても、がっつり社会学寄りでも受け入れてくれるので、かなり魅力的であると思う。(社研の先生も必修の授業にちょくちょく関わってくれる。)基本的には教育と社会の相互作用について学ぶことができる。(具体的な課題を概観できる授業や、課題それぞれについて文献を検討し議論する授業、相互作用を検討するための質・量的研究の手法を実践的に学べる授業がある)
教養学部・文化人類学コース
基本情報
- 名称:教養学部教養学科超域文化科学分科文化人類学コース
- 説明:その名の通り、「文化人類学」という学問を扱うコースである。文化人類学とは、様々な社会における日常的な文化的実践をフィールドワーク(現地調査)を通して研究する学問である。その対象は、伝統的社会、部族社会から、現代社会の多くの問題までと幅広い。社会学と似ているが、社会学はマクロかつ定量的な調査を重視するのに対し、文化人類学はインタビューや参与観察を通じて得るミクロかつ定性的な知見を大切にする学問であるといえる。
- 定員:36名
- 要求科目・要望科目はない。
主な教員紹介
※詳細はこちら
- 関谷雄一教授
- 開発人類学、アフリカ社会研究から始まった発展途上国の農村・社会開発研究を専門としている。社会システム工学にも関心を持っており、「人間の安全保障」の議論にもその知見を援用しようと試みている。
- 中村 沙絵准教授
- 老いや病い、ケア、福祉に関する人類学的研究を行う。苦悩や身体、ケアなど医療人類学における諸テーマに加え、喜捨や人道主義など、広義に「贈与」とよばれる現象を研究する。主たるフィールドはスリランカ、南アジア。
- 宮地 隆廣教授
- ラテンアメリカ諸国の政治と開発に関する研究を行っている。
- 「周縁化された人々」の政治参加を研究する。彼らのエージェンシーに焦点を当て、政治アクターとの相互行為や権威ある言説の即興的な利用、そして自身の経験の解釈を通じて、集合的利益や要求がいかに構築されてきたかを解明してきた。
- 渡邉 日日教授
- 知識・経済・集団範疇・言語に関する社会人類学的研究、文化・社会概念及び市民社会に関する理論的研究を行う。旧ソ連・東欧(特にロシア連邦ブリヤート共和国)をフィールドとしている。
カリキュラム
フィールドワークや卒論を重視している。学科の先生が開講するコース科目28単位以上取る必要がある。また、後期課程にしては珍しく、言語科目を14単位以上取る必要がある。他に、前期で言う主題科目に該当する高度教養科目を6単位以上、卒業論文10単位を満たす必要がある。
必修科目は以下の通り。
・文化人類学基礎論(2A)
・文化人類学基礎演習(3S)
・フィールド演習(3S)
・文化人類学特殊演習(3A)
・卒論演習(4S)
学生の声
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【おまけ】法学部・法社会学
基本情報
- 名称:法学部
- 説明:2Sに持出科目として開講される「法社会学」が入門的な講義となる。法学部と社会科学研究所を合わせれば、5名の法社会学の先生が在籍しており(2022年度)、毎年豊富なテーマでゼミが開講されている。
- 定員:第1類、第2類、第3類 計420名(類ごとの定数はなし)
- 要求科目・要望科目はない。
主な講義紹介
- 法社会学(講義):2Sに持出科目として開講される。2021年度以降はDimitri VANOVERBEKE先生が担当しており、ウェーバーやエールリッヒ、川島武宜などの古典的な法社会学理論を学べることはもちろん、先生自身の体験をも踏まえた比較法的な視座が提供される。
- 法と経済学(講義):Aセメスター開講。2022年度は、法社会学の飯田高先生と平田彩子先生を含む4名の先生が担当している。経済学の手法を用いて法を分析する法と経済学は、法社会学における重要なアプローチとなっている。
- 法社会学演習(ゼミ):2022年度は3つのゼミが開講されている。平田先生の「法と感情」とVANOVERBEKE先生の「日本の伝統的コミュニティにおける紛争処理と法:比較的・歴史的観点」、齋藤宙治先生の「法と心理学」。それぞれ扱うテーマも文献も大きく異なっているため、各自の関心に応じて参加する必要がある。
カリキュラム
法社会学を中心に学ぶことができるカリキュラムはないため注意する必要がある。法学部のカリキュラムは、法・政治分野を参照。