【東大生の進路を「再考する」⑤】株式会社日本総合研究所ーシンクタンクだからこそできる研究のあり方

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大学院進学(院進)という進路について再考するため、前回は東京大学大学院総合文化研究科の山野弘樹さんにお話を伺った。

今回は、シンクタンク職員の方々にお話を伺った。インタビューにご協力下さったのは、株式会社日本総合研究所調査部の熊谷章太郎さんと栂野裕貴さんだ。

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熊谷さんは東京大学大学院経済学研究科を修了し、現在はアジア経済をご専門としており、特にタイ経済やインド経済について分析を行ってきた。

栂野さんは東京大学公共政策大学院を修了し、現在は内外マクロ経済をご専門で、これまでアメリカ経済や欧州経済について分析をされてきた。

シンクタンクでの働き方については、分からないところも多い。民間企業で研究活動を行うとはどのようなことなのか。大学での研究とどのような点が異なるのか。シンクタンクだからこそできる研究のあり方とは何か。

熊谷さんと栂野さんのお話を伺う中で、シンクタンクだからこそできる研究のあり方を知り、そしてシンクタンクの魅力を感じることができた。

院進後の進路は必ずしも研究者だけではない。「アカデミックスキルを使って社会に役立てるようなことをしたい。」と考えている学生にとって、熊谷さんと栂野さんのお話は大いに参考になるはずだ。

院進について

ー栂野さんと熊谷さんが院進を決めた理由を教えてください。

栂野さん:政治学を学びたいと考え、進振りでは東京大学の法学部の政治コースに進学しました。ただ、専門課程に入ってから2年半では勉強し足りないと感じていました。また、当時は教科書的な内容を学んでそれを試験でアウトプットする学習が中心で、研究らしい研究ができないまま学部4年間が終わってしまいました。

政治学の勉強、特に研究活動を深めていきたい。そのように考え、公共政策大学院への進学を決めました。

熊谷さん:私は学部時代は上智大学だったのですが、同大学には早期卒業という制度がありました。どうせ早く学部を出るならと、大学院進学を決めました。また、当時の指導教官の先生のさらに指導教官が東大にいらっしゃったので、ご縁もあって東大の経済学研究科に進学しました。

ー修士課程修了後、なぜシンクタンクで働こうとお考えになったのでしょうか。

栂野さん:大学院で研究活動を行う中で、もちろん研究は楽しく、興味深いものでしたが、研究者だけで生計を立てるほどの熱意は持っていませんでした。

一方で、大学院の頃は日本政治を専攻しており、公共的な仕事もしたいと考えていましたので、コンサルのような職業は合わない。また、じっくりと政策・分析を練るには、官庁や記者は実務的な側面で忙しすぎるかなとも感じていました。

その中でこれだ、と思ったのがシンクタンク職員です。シンクタンク職員は、研究者の要素も、中央官庁の要素も、コンサルの要素も、記者の要素もある職業だと思っています。どれか一つに偏らず、いい意味で「中間」に位置しているシンクタンクに魅力を感じ、シンクタンクで働きたいと考えるようになりました。

シンクタンクでの仕事ー大学での研究との比較ー

ーシンクタンクの仕事の内容について教えてください。シンクタンクでの研究活動は、大学での研究とどのような違いがありますか?

熊谷さん:大学での研究活動との大きな違いは、大学での研究は理論が重視される一方で、シンクタンクでの調査は実態が重視される点だと思います。理論が整合的かどうかということよりも、実態としての経済、政治、社会情勢がどのように動くかを分析していくのかがシンクタンクに求められていると考えています。

また、シンクタンクでのレポートは現在、そして未来がどのようになるか、適切なシナリオを描くことも求められます。大学での研究では「来年どうなるか?」という問いはまず立てられませんが、シンクタンクではむしろこのことが重要視されています。「誰にとって重要なのか?」と、常にニーズを意識して調査を行う点もシンクタンクの特徴です。

栂野さん:学術論文とシンクタンクのレポートとでは当然、読み手も違います。シンクタンクのレポートは記者やビジネスマンなど、情報をすぐ欲している人に向けて書かれています。そのため、学術論文のように厳密性を重視するよりは、わかりやすく伝えるということを意識して調査を行っています。

ー大学での研究活動とシンクタンクでの調査のプロセスの違いに驚きました。これほど違いがあると、大学院で学ぶようなアカデミックスキルは、シンクタンクの世界ではあまり役に立たないようにも思えてしまいましたが、この点についてはいかがでしょうか。

熊谷さん:確かに直接は繋がっていないかもしれませんが、大学院での研究のエッセンスは間違いなく役に立つと思います。

情報収集を行う中で、当然海外シンクタンクや国際機関のレポートを読むことも多いです。それらの機関のレポートは、理論重視で書かれている印象があります。そのため、アカデミックスキルがないと、そもそも情報収集の段階で話にならない場合が多いかなと思います。

栂野さん:公共政策大学院で学んだ海外の国際政治情勢や各国の政治情勢は入社後も様々な場面で直接役に立ちました。さらに、ありきたりかもしれませんが、データ分析の能力であったり、論理的思考力のようなものが役に立っている実感があります。

シンクタンクの魅力

ーここまで、シンクタンク独自の研究のあり方についてお話を伺ってきましたが、シンクタンクの魅力について教えてください。

熊谷さん:シンクタンクの魅力は色々なテーマを幅広く調査していることにあると思います。学問に関心はあるけれども、特定のテーマに関心があるというよりは、幅を広げながら色々なことを学ぶ中で専門を決めたい人にはシンクタンクというキャリアはとてもマッチしていると思います。

栂野さん:どうしてもこれをやりたい人は大学で研究を続ける方がいいかもしれませんが、色々なことを自由度高めに研究したい、分析したいという人はシンクタンクが向いていますね。

学生へのメッセージ

ー最後に、キャリア選択に悩む学生へ、一言お願いします。

栂野さん:基本的なことかもしれませんが、新聞はちゃんと読んだ方がいいと思います。世界で今何が起こっているかという情報を掴んだ上で、どのような就職口の対象があるのかを考えるきっかけになります。

熊谷さん:シンクタンクを含め、「調査」に関心を持つのは良いことだと思います。ただ、〇〇研究所以外に拘らずに、幅広く探してみることをオススメします。自動車会社の中にも、商社の中にも、銀行の中にも調査部というところはあります。その方がより自分の興味関心と合った場所で調査、分析を行うことができると思います。

最後まで記事を読んでくださりありがとうございました!
最後に1点、この記事を作成したUT-BASEからお伝えしたいことがあります。

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