ソフトバンクの地方創生インターンTURE-TECH、2021年度は愛媛県新居浜市と福岡県嘉麻市で開催されました。本記事では、福岡県嘉麻市でのTURE-TECHに参加した平野智之さん(経済学部3年/参加当時文科二類2年)がTURE-TECHで得た経験をご紹介します。TURE-TECHの紹介記事は以下の画像をクリックしてご覧ください。なお、現在TURE-TECH2022のエントリーが募集中です。(締切:6/17) 記事を読んで気になった方は、こちらのHPからエントリーが可能なのでチェックしてみてください。
当事者目線で社会課題に取り組む
TURE-TECHに参加したきっかけを教えてください。
きっかけは主に2つあります。
1つ目は、地方創生に関心があったことです。僕は大学入学前に浪人を経験しているのですが、予備校で地方出身者と関わる中で、地方と都会の教育格差を漠然と感じていました。僕は東京育ちなのですが、地方のために何かしたいという思いはこの頃から持っていました。
2つ目は、社会問題の当事者にしっかり向き合いたいと思ったからです。東大に入学してから、「東大生」であるというだけで賞賛されることが多かったんです。でも、僕自身はしっかり厳しいことを言って欲しい、自分がやっていることに対して的確にフィードバックをして欲しいと思っていました。だからこそ、「東大生」という肩書きが通用しない、社会問題の当事者の中に足を踏み入れて関わっていきたいと思ったんです。
プログラムではどのようなことを行いましたか。
僕たちのチームは「日本酒のブランディング戦略」をミッションとして与えられました。具体的には、嘉麻市の日本酒の魅力を伝えて、嘉麻市自体の魅力度を高めて欲しいというものでした。僕自身は地方にどのように雇用を作っていくかや、地方にどうやってお金を持ってくるかに関心があったので、このテーマは自分の興味に合致したものでした。
僕のチームは、とにかくたくさんインタビューを行うことになったんです。嘉麻市にある3つの酒蔵の方々、日本酒の小売をしている方々、観光まちづくり協会の方、嘉麻市の職員さんなどにお話を聞いていました。その際、僕たちは日本酒のことについて事前知識がなかったので、インタビューを行って自分たちの仮説を検証することを大切にしました。日本酒の消費者となる方へのアンケートも行ったのですが、あまりにもインタビューの数が多く、タイムマネジメントには苦労しましたね...。
インターン期間中には、ソフトバンク社員に対して進捗や仮説を報告する中間プレゼンもあったかと思いますが、そこではどのようなフィードバックをもらいましたか?
僕たちは、何度も「課題の深掘りが足りていない」と言われました。というのも、僕たちのチームは、課題について話していてもすぐに解決策を求める議論を始める傾向があったんです。フィードバックを受けて、チームの中でその傾向を是正しようとする動きは生まれましたね。
軋轢からの団結、1週間で一変するチーム
TURE-TECHではチームワークをメインに行うそうですが、平野さんのチームの様子はどうでしたか?
僕のチームは、学部2年から修士1年までとかなり学年の幅が広いチームでした。出身大学もかなりバラけていましたね。
チームの雰囲気としては、序盤はかなりギスギスしていました(苦笑)。僕のチームは、瑣末な問題にこだわってしまう傾向があって、そこに対して何度か「それ今議論しなくてもよくない?」とツッコミを入れないといけないタイミングがあったんです。そのせいでチームの中に不和が生まれてしまったと感じることはありました。しかし、先ほども述べたように、「課題の深掘りが足りない」とフィードバックを受けてからは、チームの中で「課題についてもっと議論しないといけない」という共通認識が生まれたのでかなり議論しやすくなりました。最終プレゼンが迫る後半には、「このチームでいい提案をしよう!」と一致団結した雰囲気になりましたね。
TURE-TECHはかなりタイトなスケジュールなので、どうしても議論をスムーズに進めるために自分の感じている不満を我慢しないといけないことがあったんです。そこにストレスを感じることはあったのですが、毎日メンター社員さんとの1on1(※1対1のミーティング)があって、そこで不満を聞いてもらったり、共感してもらえたりしたので乗り切ることができました。
最終プレゼンが終わってからは、懇親会や事後研修などのイベントがあったこともあり、そこでかなりチームのみんなと仲良くなりました。
提案から実装まで自分たちの手で
具体的にはどのような提案を行いましたか?
僕たちが提案した施策は主に2つあります。
1つ目は、オンラインで特約店を開拓することです。「特約店」とは、酒造が「この店にしか日本酒をおろさない」と決めている場所のことです。規模が大きくない酒造は製品の品質をきちんと管理してくれているか、適切な価格で売ってくれるかを気にしているため、特約店に限って卸している場合が多いんです。嘉麻市の酒造の場合は、特約店が九州に集中しており、これが関東など広範囲に広がっていないという課題がありました。というのも、特約店を開拓するためには対面で視察・営業を行っているのですが、これだと九州以外に行くのにコストがかかり過ぎてしまうんですね。そこで、僕たちはこの視察・営業のプロセスをオンラインで行うことを提案しました。
2つ目は、日本酒のPRイベントの実施です。嘉麻市の日本酒の魅力を若い世代にも知ってもらうために、新成人に向けた「成人祝い」を行うことを提案しました。嘉麻市の日本酒と嘉麻市の食材を送付し、オンラインなどで集まって日本酒の感想を伝え合ったり、交流したりするイベントを行うというものです。
平野さんのチームは、市長に提案を採択されたそうですが、採択後の流れを教えてください。
僕たちは主に後者の提案の実現に携わっています。イベント実施のための予算がつくはずだったのですが、予算申請に難航して成人式の時期を逃してしまいました。そこで、今年の夏にイベントを行えるように企画しています。具体的には、地方創生に関心のある若者に日本酒と嘉麻市の特産品をプレゼントし、イベントの中で嘉麻市の地域活性化について対話してもらうというものです。ただ日本酒と食べ物を送って終わり、というだけではなくて、嘉麻市に共感し「嘉麻市に協力したい」と思ってくれる人を増やすことを目的としています。
「刺激を求めている人」にすすめたい
プログラムではどんな学びを得ることができましたか?
まず、課題解決をどのように進めていけば良いかを体得することができました、インターン中は「課題の深掘りをしろ」と再三言われていたのですが、そのプロセスを実践を伴いながら身につけることができましたね。そして、チームマネジメントの方法についても学ぶことができました。僕は何かと自分で全部やってしまいがちな傾向があったのですが、チームメイトを信頼して、しっかりタスク割り振りをすればみんなうまくやってくれるんだ、と気づくことができました。また、チームの中の誰に何を任せたらうまくワークが回っていくかを意識するようになりました。
プログラムの魅力はなんですか?
1番の魅力は、このインターンが「就活を意識したものではない」ということです。ソフトバンクのために、ではなく、自治体の課題を解決するために活動しているという意識をみんな強く持っています。ソフトバンク社員さんも、インターン期間中は自治体のために動いているという意識が強いように感じますね。
また、TURE-TECHを通して、メンターをして頂いた社員さんと仲良くなることができました。メンター社員さんとはインターン後も食事に行くことがありましたね。社会人の方々と個人的な繋がりを作ることができるのも、このインターンの魅力だと思います。
どんな人にこのプログラムをすすめたいですか?
やはり「刺激を求めている人」ですかね。サークルや学生団体などの今の自分の活動に物足りなさを感じている人にすすめたいです。なぜかというと、TURE-TECHでは非常に高いレベルのインプットとアウトプットを得られるからです。ただ議論して終わり、というインターンとは違い、TURE-TECHの活動ではソフトバンクの社員さんはもちろん、市職員さんや嘉麻市の方々に時間を使って向き合ってもらっています。自分たちの提案内容が実際に実行に移されるという点でも、参加者には重大な責任があります。そのような責任感を持ちながら、自分の頭で一から考えながら物事を進めていく経験ができます。
また、行政がどう動いているかを知りたい人にもおすすめです。僕はこのインターンを通して、行政はどうしても意思決定に時間がかかってしまうことを身をもって実感しました。行政とビジネスで進路を迷うこともあったのですが、それをふまえて自分はやっぱりビジネスで課題解決に関わりたいと感じました。行政と民間で迷った時に、しっかりと行政の内情を知った状態で選ぶことができるというのは進路を決める際にも役に立つと思います。
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