「あなたはどのようにして進学先を決めましたか?」
多くの東大生が1度は頭を悩ませる、進学選択(通称「進振り」)。
—何を基準に学部・学科を決めれば良い?どんな手段で情報を集めれば良い?自分の興味・関心にどう向き合えば良い?
そんな疑問を抱く東大生に寄り添うべく、悩み抜き、考え抜いて進学先を決めた先輩たちの経験を発信する連載「進振り体験記」!
今回は、理科1類 から理学部物理学科に進学した学生の体験談です。
1. 基本情報
今回、体験をシェアして下さった方の基本情報は以下の通りです。
◯名前:A.H.さん
◯出身科類:理科1類
◯進学先:理学部物理学科(詳細:こちら)
2. 大学に入る前
ーHさんは理科1類に入学しましたが、高校時代はどのようなことに関心がありましたか?
幼い頃から宇宙に関心があり、高校の時には宇宙物理について研究したいと考えていました。理1を選んだのも、理学部の物理系に行こうと考えていたからです。
このように、高校の時点で大まかにやりたいことは決まっていたのですが、宇宙物理に加えて、高校の時点からジェンダー論にも関心がありました。そのため、大学入学後に進路を変えることができる進振りの利点を活かそうと、東大を目指しました。
3. 入学時から現在までを振り返って
ー進学先を決めるにあたって、ターニングポイントになった授業はありますか?
2Sで履修した現代物理学は印象に残っています。それまでは理系分野の中では宇宙物理にしか興味がないと思っていましたが、この授業は別の可能性を見せてくれました。
ブラックホールの未解決問題を扱う授業だったのですが、宇宙物理というよりは数理物理をじっくり学んでいく感じでした。宇宙について物理学の立場から研究をする場合、観測や実験をするアプローチと、理論を組み立てていくアプローチとに分かれると思っています。この授業を通して、私は理論の方が相性がいいなと、数理物理もいいなと関心を持つようになりました。
今では物理学の中でも宇宙物理よりも数理物理をやりたいなと思っているのですが、そのきっかけになったのが現代物理学の授業でした。
ー数理物理はどのような学問領域なのでしょうか?
数理物理は特定の事物を対象とするのではなく、物理学の基礎となる数学を厳密に突き詰めていく分野です。物理学も最先端の研究になるほど、数学的に厳密なのかどうか分からないものも結構あるんですよね。
ー高校時代はジェンダー論にも関心があったと伺いました。その中でジェンダー論ではなく、物理を専攻しようと考えたのはなぜでしょうか?
前期課程ではジェンダー論や社会行動論などの社会科学系の分野の総合科目も履修しましたが、私には考え方や研究の進め方という点において、文系の学問よりは理系の学問の方が性に合っているなと思ったんですよね。
文系の学問はニュアンスが重視されたり、解釈の幅が許容されている印象があります。一方で、理系の学問は厳密に数式を追い、解釈のブレがない状態を目指す感じですね。私は後者の方が好きなんですよね。
私が所属しているpolarisからの影響もありました。polarisは東大の女子学生の割合が2割という現状を踏まえ、女子高校生たちに東大のことを知ってもらう活動を行っています。サークルと大学の勉強を両立する間で、ジェンダー系の学部・学科に進学しなくても、サークルの活動などを通してジェンダー問題に取り組むことはできると思うようになりました。
また、自分の中で思ったこととして、自分がジェンダーの問題に四六時中関わった時に辛くならないかなと考えていました。ジェンダー論を専攻することは、実際に困っている人のことを調べたり研究したりすることになると思います。私がジェンダーの問題に興味を持ったのは周りで不当な扱いを受けている人をみて怒りを覚えたからで、もし四六時中関わるとしたら心が傷んで嫌になってしまう可能性もあると思いました。
4. 進学先の決定
ー授業やサークルでの体験を通して、物理系の学科に進学しようと考えるようになったのですね。物理系かつ宇宙系の学科も複数ありますが、その中でどのように理物に絞り込んで行きましたか?
迷ったのは理学部物理学科(以後「理物」とします)と理学部天文学科と理学部地球惑星物理学科(地物)ですね。一番最初に外れたのは地物でした。同じ宇宙についても、太陽系よりもビックバン直後の宇宙やブラックホールに関心があったので。
また、理学部ガイダンスに参加し、理物の先生に話を伺ったのも、絞り込みをする上で役に立ちました。先生に私の関心ごとを伝えると、「初期宇宙やブラックホールなどは、物理の理論的なことをちゃんとやらないと研究を深く進めていくのが難しい。特定の天文の分野をやりたいという明確なイメージがないのならば、入ってから宇宙以外のことも色々学べる理物の方が物理を極めるという点ではいいと思います。」とお話してくれました。
最後はなんとなく視野が広い方がいいよね、と言う直感もあり、理物にしようと決めました。
5. 理物での日々
ー理物に進学してみて感じた、学科の印象について教えてください。
物理の勉強に対してモチベーションが高い人が多いですね。前期課程の頃は色々な関心ごとを持っている人がクラスに集まると思うのですが、必ずしも物理が好きな人ばかりではないですよね。その中で、物理の話はしたいけど前期課程のクラスではできなかったという人たちが理物に集合し、物理愛を一気に解放している印象があります(笑)。休み時間にも物理の話をしますし、会話の入口も物理ですからね!
ー進学する前に懸念していたことなどはありましたか?
理物は女子がほとんどいないという前評判があり、そのことは懸念していました。ガイダンスで先輩が「私たちの代は女子が3人もいるよ〜。」と話してくれたのですが、3人「も」…???と思っていましたね。実際は私たちの代は女子が6人いましたが、やっぱり少ないなあとは感じますよね。でも、女子が少ないことによる不利益はなかったですね。
ー授業の様子などについても教えてください!
授業は2Aは基本座学で、時々演習がある感じです。2Aで扱う内容としては、相対性理論や量子力学など、どの分野に進むとしても基本的に分かっていないといけない内容をやっていきます。
ー理物の授業はとても難しそうですが、前期課程の授業との繋がりについてはどう感じましたか?
滑らかに接続されているイメージがあります。授業では、前期課程よりも丁寧に説明してくれますね。
ー教員の方々との距離感はどんな感じでしょうか?
進学してから驚いたのですが、教員の方々はみんな授業が上手いんですよね。質問にも丁寧に答えてくれます。また、ニュートンカフェというライトな研究室訪問のイベントもあり、意欲があれば教員の方々と積極的にコンタクトを取ることができる機会が揃っています!
6.メッセージ
ー最後に、これから進振りを迎える後輩の方々へ、メッセージをお願いします!
高校の頃のように自分は宇宙しかないと思い続けていたら、数理物理の面白さには気づけていませんでした。進振りの決断を振り返って、「視野を広く持っておく」という直感は間違ってなかったなと感じます。これから進振りを迎える方々には、視野を広く持ち、他の分野にも興味を広げておくのがオススメだということをお伝えしたいですね。
# UT-BASEメンバーより
ここまで読んでくださり、ありがとうございました!
UT-BASEは、公式サイトにて全学部学科の情報や、これまでに行ってきた進学選択制度に関するイベントの情報、研究室への訪問記事などを発信しています。
そちらもぜひ活用してみてください!
◯学部学科紹介記事:こちら
◯進学選択イベントレポート:こちら
◯研究室への訪問記事:こちら
◯その他の進学選択制度に関する情報:こちら
◯UT-BASEとは?:こちら