2Sの過ごし方#6「授業は受けるな」ービジネスも哲学も学ぶ異端の2S

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大学4年間の中で、最も自由に使える時間が多いと言われる2Sの時期。

この時期をどう使うか、悩んでいる方も多いのではないでしょうか?

2Sをどう使うかということは、その後の選択に大きな影響を与えるかもしれません。

そこで、皆さんが満足のいく2S生活を送る一助となるよう、先輩たちの2Sの過ごし方をご紹介するのが、こちらの連載「2Sの過ごし方」!

今回は、2Sで授業を一つも取らない代わりに、読書会を開いたりビジネスのインターンに行ったりして多くのことを学び、今では哲学の研究者を目指している学生の体験談です。

1. 基本情報

今回、経験を共有してくださった方の基本情報は以下の通りです。

◯名前:A.M.さん
◯科類:文科一類から法学部第3類(現在留学中)
◯2Sのコマ数:0コマ
◯サークル・部活など:高山ゼミ(現・馬路ゼミ
◯バイト・インターン:NewsPicks(インターン)

2. 2Sの過ごし方

ーーMさんは2Sの間、授業を一つも受けていないとお聞きし、驚いています......。

そうなんです。僕は2Sはおろか、2年生の間に授業は1個も受けていません
オンラインであまり面白くなかったこともありますし、授業が大学での学びに占める割合は、せいぜいの三分の一程度だと思います。

ーー残りの三分の二はどういったことなのでしょうか。

自分で本や論文を読んで、友達と議論することです。

高山ゼミでの活動は、そうした議論の一番いい例です。
週に1回Zoomで学生同士で議論して、先生はほとんど口を出しません。具体的には、『エコノミスト』というイギリスの雑誌やゼミ生が書いた論考を読んで議論するんです。加えて、セメスターに一度は1~2万字程度のレポートを書きました。

ゼミ以外でも、たくさんの本を読み、友達と読書会を開くこともしました。
Max Weberの本など、文系の学問を広くやりたいと考え、推薦生、高山ゼミで仲良くなった人などと一緒に読書会をするうちに、勉強していると人の輪が広がることを実感しました。

ーー授業以外にも、学びを深める場はたくさんあるんですね。

Mさんは2Sで、経済メディアのNewsPicksでインターンもされていたんですよね。インターンでの学びはどういったものでしたか。

何よりも良かったのは、ビジネス界の最前線で働く人と接する中で、
彼らが何を考えていて何を大切にしているかを間近で感じられたことですね。

NewsPicksでは、ビジネスパーソン向けのセミナーを運営したり、マーケティングをしたり、記事を書いたり、いろいろなことを経験させてもらいました。
そうした経験の中で個別の知識やスキルも学べたのですが、ビジネス界隈の文化のようなものに直に触れられたのが何より大きかったです。

学問界隈とビジネス界隈では、かなりその文化が違うと思うんです。僕はそれまで学問界隈の文化しか触れたことがなかったので、スタートアップっぽい要素も含めてビジネス界隈の文化に触れられたのは、とても貴重な経験でした。

ーーそうなんですね。Mさんが感じたビジネス界隈の文化とは、どういったものなのでしょうか。

ビジネス界隈の文化の特徴は大きく分けて二つ思いつきます。

一つは、めちゃくちゃ効率主義的なことです。ざっくり言って、ビジネスではお金を稼ぐことが最終目標なので、そのために「この数値をここまで上げる」といった目標の数値化などをしっかり行います。あくまで傾向としてですが、僕が今いる学問界隈では、このようなことはあまりしません。

インターンによって、KPIを作って目標を管理するなど効率を重視したやり方を学んだことで、自分自身の将来の計画を立てる際に月ごとの目標を立ててその達成のために読むべき本などをドキュメントで管理することを始めるなど、様々な場面で役立っています。

もう一つ学んだことは、顧客のこと・相手のことを本気で考えるということです。
学問界隈は一般受けを考える必要はそこまで無いでしょう。学者の仕事は真実を追求することなので、相手に考えを巡らせることはあまりないはずです。

一方で、ビジネスは、相手に届かなければ意味がありません。インターンをする中で、「顧客はどういうことを考えてる?」「何が欲しい?」「月額〇〇円というハードルをどうやったら超えられる?」ということを常に考えるクセがつきました。

ーー業界によって文化はかなり違い、実際その業界に入ってみないと分からないことも多いのですね。

Mさんが実際に仕事をされる中で工夫されたことや気づいたことなどはありますか。

僕が運営に関わっていたセミナーの参加費って20万から40万くらいして結構高いんですよ。なかなかその値段を出してくれる方は少ない。だから、SNSなど、セミナーの広告を出す時に工夫が必要です。よりプレミアムなものに見せる工夫や、講師との座談会を開くといったセミナーに参加しやすくする工夫をしました。

また講座は全部で何回もあることが多いので、ドロップアウトされる方も一定数います。そうならないように、参加者にこまめに連絡することを心がけていました。

また、いくら学び目的とはいえ、学びだけでは人を繋ぎ続けることは難しいです。だから、アットホームな雰囲気を作るために懇親会を開くなどの工夫もしました。

このように、どうしたら楽しく講座を受け続けてくれるか、そして次も受けたいと思ってもらえるかということを常に意識していました。

これは、自分で読書会を開くときやゼミを運営する時にも役立ちました。

他にも、僕はNewsPicksの動画を切り抜いてTikTokにあげるという仕事もしていたのですが、そこでもマーケティングの観点から大きな学びがありました。

もともと、僕はその動画は学びになればなるほど良く、再生回数も伸びるだろうと思っていました。そのため、「へ〜」と思ってもらえるような学びの多いものを多くあげていました。しかし、そうではなかったんです。再生回数が伸びるのは過激なものや面白いもの、絵になるものが多く、自分がいいと思っていたものと相手に受けるものは違うということに気づきました。
これも、相手目線に立つというビジネス界ならではの経験だと思います。

ーー他にも、ビジネス界隈と学問界隈の違いを実感した面白い出来事などはありますか。

とても細かい所ですが、Slackなどのコミュニケーションツールにおけるテキストコミュニケーションの仕方の違いは面白いと感じました。

先ほども言ったように、ビジネスは、目的のために物事を最適化するんです。テキストコミュニケーションにおける目的は何かというと、円滑、そしてフレンドリーに意思疎通することです。ビジネスはチームで行うものなので、皆がそのチームの一員として文化を共有している実感をもてることが大切なんです。

だから、NewsPicksのSlackはスタンプがたくさんあり文化が共有できましたし、改行や件名によって読みやすくする工夫もありました。ただし、こういう工夫は学問界隈ではあまり見られません。

本当に細かい所ですが、ここにも両者の考え方の違いが現れているなと思いました。

ビジネスで学んだことは哲学界に持って帰り、哲学の長所を活かしながらもビジネスの長所も取り入れて 、改善できるところはどんどん改善していきたいと考えています。

3. 今とのつながり

ーーMさんが2Sに力を入れていたことは大きく学問とインターンの二つに分けられると思いますが、まずは学問の観点から聞いていきたいと思います。

授業を受けるのではなく、勉強会を開くなど自分で本や論文を読んで、友達と議論した経験は、今にどのように繋がっていますか。

今に繋がっていることの一つに、勉強するための基礎力が身についたことがあります。
先輩から勉強法を教えてもらうということがなかったので、本の読み方について書かれた本をたくさん読むなど、手探りで勉強の仕方を身につけました。自分のスタイルが見つかったのは今後とても役に立つと考えています。

ただ何より大きいのは、哲学というめっちゃ面白いと思えるものに出会えたことです。

読書会をしているうちに、本を読んで議論することが楽しすぎるということに気づきました。2年生の夏くらいには「これ一生やりたいわ」と思い始め、本を読んでいると自分でも書きたくなるので「こんな本を自分も書けるようになりたい」と思うようにもなりました。今では、哲学をライフワークにしたいと思っています。哲学で生計をたてるのは難しいですが、絶対にこれをやりたいと思っていて、迷いはありません

ーー哲学との出会いは、Mさんの人生を大きく左右するものだったのですね。

Mさんにとって、哲学の魅力とは何ですか。

何より楽しいのは先ほども言ったように本を読んで議論することなのですが、哲学界の論理はビジネス界隈の論理とは全然違い、多くの人に受け入れられる必要がありません。論理さえ通っていれば、自分の好きなことを言っていいのです。それは、とても居心地がよく、論理パズルのようで楽しいです。

僕自身は、大学に入って勉強して、自分の興味分野が変わらない人は本当の意味で勉強できていないと思います。何かを学ぶにつれて興味は広がるはずです。僕にとって大学に入ってから新しく出会っためちゃくちゃ面白いものが、哲学でした。

ーーありがとうございます。それでは次に、インターンの経験からもお聞きしたいと思います。

ビジネスと哲学の両立というのはかなり異端なことのように思うのですが、両方を経験したからこそ得られたものなどはありますか。

ビジネス界の文化を持って哲学界に入ることで、新しい風を吹かせられるかもしれないと思えるようになりましたね。先ほどのテキストコミュニケーションの話もそうですが、他にも活かせるところはたくさんあります。

例えば、話すことに関して。哲学業界には話しが下手な人も多いですが、ビジネス界では、早くシンプルに話せる人が多いです。セミナー運営などで彼らの話を聞けたことに加え、マーケティングやデジタル分野など哲学とはあまり関係のない分野に触れられたことも貴重な経験でした。同じ界隈にずっといると、気づかないうちに外部の人に通じない言葉で話してしまうようになりやすいですが、これらの経験によって他の人に分かりやすく伝えるということをより意識できるようになりました。

ーー他にも、哲学とビジネスの両立が今後の人生に大きく影響を与えたことなどはありますか。

そうですね、両立することによって、いい意味でキャリアの逃げ道ができたと思います
哲学界で生きていくのは容易なことではなく、30代後半になっても非常勤のこともあります。そのため、大半の人が諦めてしまうんです。しかし、僕はインターンなどを通してビジネス界隈の文化を学び、どうすればビジネス業界で生きていけるかという感覚を掴みました。そのため、もし哲学の学者になることが無理だったら哲学を使って起業するという道もできました。このように、自分にとっての逃げ道になるような選択肢を選べるようにしておくことで、皆が物怖じするような哲学の分野にも恐れずに行けるようになりました

ビジネスと哲学、どちらが良くてどちらが悪いという話ではなく、両方に良いところがあり、僕はどちらも好きです。どちらも学べて本当に良かったと思っています。自分の人格を形成する段階でビジネスと哲学という全く異分野の二つを経験できたからこそ、今の自分があると思っています。

4. メッセージ

ーー最後に、今から2Sを過ごす方々へ、メッセージをお願いします!

極端に言えば「授業は受けるな」ということになります。
一度暇になって立ち止まる時間がみんなに必要だと僕は思っています。東大生の傾向として、授業を頑張っていい成績取るというのは、能力的にも可能だし、好きなんです。でもだからこそ、ぼーっとしていると授業を受けるだけで大学生活は終わってしまいます。色々な過ごし方をすることは、きっと社会に出てからも役に立つはずです。なので、ありきたりな東大生の過ごし方をせずに、自分で自分の時間の使い方を考えてデザインしてみてください

UT-BASEメンバーより

私自身、インタビューの最後にメッセージをお聞きして、まるで頭の中を見透かされている気がして心にグサっと刺さりました。敷かれたレールの上を歩むのではなく、自分で考えて様々な分野で挑戦していくことで、自分の道は開けるのだということを実感させられるお話でした。皆さんも、たとえ異端に思えることでも、やってみたいと思ったことにはどんどん挑戦していきましょう!それはきっと自分の今や未来につながるはずです。

ここまで読んでくださり、ありがとうございました!

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