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【文学部】~宗教学のものの見方入門~

2021.12.2

UT-BASEがお送りする「後期課程の歩き方」(学部学科紹介)は、後期課程での学生生活を紹介しています。しかし、今この拙文をお読みいただいている好奇心旺盛・頭脳明晰・明鏡止水な読者の皆様は「どんな雰囲気かは分かったけど、具体的に何が学べるのだろう…?」とお思いのことでしょう。
そこで!!「学部学科紹介イカ東edition」つまり、後期課程の本学学生が学ぶ学問領域を"エンジン全開"で語り倒す企画を実施させていただきます!

一端の学部生が書いているので学問的誤りがあるかもしれませんが、学問の雰囲気を掴んでいただくことを趣旨としておりますので、どうぞ間違いには優しく目を瞑るか、そっと教えていただくよう、よろしくお願い致します。

さて、本記事は「ミイラ取りがミイラになるという噂」で有名な文学部人文学科思想文化コースA群、宗教学宗教史学専修課程についてです!春から新4年生のYKTがお送りいたします。お楽しみあれ。
また、文学部宗教学宗教史学専修課程の制度や学生生活は、UT-BASEの学部学科紹介ページをご覧ください。

宗教とは、何か

先ほど挙げた「ミイラ取りがミイラになる」という噂は、駒場時代に私の希望する進学先が宗教学だと聞いた知り合いが教えてくれたものです。さすがに冗談だろうと思って進みましたが、どうやらその噂が根も葉もないものではないことを知りました。
その昔は学生が「潜入調査」をしていたようで、一時的にではあるものの、とある「教団」に加入していたという人もいたそうです。ただし、ご安心を。現在、そのようなことは行われておりません。

宗教とは何か。そんなことを聞かれても、困る方が多いでしょう。宗教学専修に所属したからといって答えられるものではありません。よく、宗教学者の数だけ答えがあると言われます。むしろ常に問い続けることこそが、宗教学の学生になるということだと思います。

ひとりの学部生が主観的にこの記事を書いている部分もあって、いい加減なところもあるかと思いますが、どうぞご寛恕ください。この記事をきっかけに、興味を持った方はぜひ、研究室の先生方とお話しできる説明会などに脚を(zoomの画面を?)お運びいただければと思います。

今回は、どんな授業をどういう風に受けるのか、専修の雰囲気はどのようなものなのか、私の知っている限りで紹介したいと思います。また最後に、現代社会と宗教というところで、「コロナ禍と諸宗教」というテーマを少し覗いてみたいと思います。

目次

    #1 宗教学の授業

    宗教学の授業は講義形式とゼミ形式のものに大きく分けられます。

    講義では、「世界宗教史」や「宗教学の基礎理論」を扱うものもありますが、「キリスト教神秘思想史」や「古代中国の宗教」などの個別的な宗教や時代を扱うものもあります。しかし両方に共通しているのは21世紀に入るあたりで起こった宗教概念の見直しなどの議論を前提としていることです。

    例えば、宗教と聞いたときにどこか「形式的な儀礼より信仰の内容の方が大事だよね」「教義がはっきりしていないのは遅れた宗教だよね」とか考えていませんか?私もなんとなくそうでした。しかしこれもキリスト教、特に近代プロテスタントの宗教理解によって形成されてきた価値観なのです。
    マックス・ウェーバーは『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』(通称『プロ倫』)で必ずしもこのような見方を広げようとした訳ではありませんが、この価値観は本書の影響を受けて確立されたとも言えます。

    ただ、よく考えてみると、儀礼などを含む実践と信仰も簡単に二分されるものではありません。儀礼にもなんらかの信仰が反映されているはずです。
    宗教学は特定の信仰を前提とせず「価値中立」を標榜するだけに、自分のものの見方に偏りがないか徹底的に見直すことが大事になってきます。「信仰は実践より大事だ」というのも一つの価値観でしかないのです。

    こういった形で、講義やゼミで徹底的に進歩史観など宗教に対して持っていた先入観を崩していきます。そこからそれぞれの宗教現象を考察したり、それを卒論にしたりします。

    またこれは文学部に共通することですが、「その他の単位」の幅が広く、宗教学以外の授業からでもたくさん単位を集めることができます。宗教学のものの見方は先生方に教えてもらえますが、必ずしも自分が卒論で扱いたい宗教事象の専門の先生がいるとは限りません。卒論は「宗教を対象としていれば方法論はなんでもいい」と先生方に言われます。つまり卒論では先生の専門と重なっていない領域を扱うことも認められているのです。
    そこの専門性は自分で深めていかなければなりません。印哲やイスラムの授業に出たり、日本史の授業に出たり、自分で必要だと思う分野の知識は自分で集めていくことになります。私は第二外国語がイタリア語でしたので、南欧文学研究室が開講している授業によく参加しています。

    #2 研究室の雰囲気

    UT-BASEさんのページでは研究室の先輩との交流が少ないとありますが、必ずしもそうとは限りません。

    院共(おそらく「(学部生)院生共同」の略称。院生と学部生がどちらも参加できる形式のこと)の授業もあって、院生もいるゼミに参加して研究室の先輩と知り合う機会はありました。コロナ禍で毎年開催している研究室旅行もできず、研究室で昼ごはんを食べながら先輩方と交流する機会は減ってはいますが、気さくに話せる先輩ばかりという印象です。

    去年は研究室旅行を9月にオンラインで(!)開催。事前に先輩方が宗教施設に行ってされたインタビュー動画を見たり、その宗教施設の方にZoomで登壇していただいて質疑応答の時間も設けられました。クイズ大会も開かれ、夜はzoom飲み会でかなり遅くまで盛り上がっていました。
    去年の10月か11月頃には先生方が3年生(現4年生)のために集まりを企画していただき、いろいろ先生とお話しする機会もありました。
    先生方も先輩方もコロナ禍で進学してきた学生のことを気にかけてくださり、非常にありがたい限りです。

    また研究指導についてですが、指導教員制度はあるものの、これは多分に書類にハンコを押してもらうといった形式的なものです。学習・研究上の相談はどの先生もいつも相談に乗ってくださるので、非常にありがたいです。私もしょっちゅう授業後などに親身に卒業論文の相談に乗っていただいています。

    #3 コロナ禍と諸宗教

    研究室やその開講されている授業の話をしてきたので、ここではコロナ禍を入口にして、宗教学で学んでいることを少し紹介したいと思います。
    コロナ禍は世の中の様々なことに影響を及ぼしました。宗教ももちろんその一つです。

    『自殺論』で有名なフランスの社会学者デュルケームは、もう一つの主著『宗教生活の基本形態』で「集合的沸騰」という概念を提出しました。これは、複数の個人が共通の目的意識のもとに集まることで感情が共有され、そこに個々人を超えた集団としての感情や意識が形成される、というものです。
    尽くこのご時世で中止になりましたが、音楽ライブの盛り上がりにも適用されたりします。

    宗教においては、個人と集団の境界を曖昧にする集合的沸騰が大きな鍵を握っています。日本だと2019年のローマ教皇来日における東京ドームの盛り上がりを思い出してもらえるとわかりやすいかもしれません。
    「沸騰」という大興奮状態にはならないとしても、信仰共同体というのは教会やモスクや集会所などに皆で集まることを大事にするところが多いものです。キリスト教の聖体拝領を想像して貰えばわかりやすいように、接触や共有ということを大事にするという教団もあります。そうすると、俗にいう「三密」に抵触してしまい、どうしても公衆衛生上の問題とぶつかってしまうことがあります。

    COVID-19に対する教団の対応は様々です。例えば創価学会(参考)やカトリック東京大司教区(参考)など早い時期に施設での集会を取りやめたところも多いですが、一方で「信仰によって感染から守られるから大丈夫」と集会をやめなかった教団もあります。アメリカやイスラエルのユダヤ教超正統派の人々の間で感染が広がったことが話題にもなりましたが、このように対応が分かれたのは日本の宗教界の中でも起きたことだったのです。

    近代社会における宗教あるいは信仰の問題は、科学と宗教などと並んで非常に大きな、また重要な問題系ですが、このコロナ禍を切り口に現代における宗教を覗いてみるのも興味深いでしょう。
    今年はゼミでチャールズ・テイラーのA Secular Age(邦題『世俗の時代』名古屋大学出版)を講読しており、「信仰が複数あるうちの一つの選択肢」となった世俗化した社会の中での宗教的信仰について考えています。#1の話題にも通じますが、タラル・アサドの『世俗の形成』や『宗教の系譜』なども現代の宗教を考える上で重要な文献です。

    おわりに

    宗教学の素材は時代や地域を問わず存在していると思います(「時空を超えて普遍的に『宗教』が存在する」と言っている訳ではありません。ここには大きな違いがあると考えています)。いろんなところをつまみ食いできるところが宗教学に進む楽しさでしょう。つまみ食いしすぎて卒論の執筆に困っているのも事実ですが(笑)
    「宗教学のものの見方入門」などと題しましたが、少しは皆さんに宗教学のイメージを持ってもらえたら幸いです。読んでいただきありがとうございました。

    この記事を読んでいる人なら既に見ているかもしれませんが、こちらから研究室の先生方による読書案内が見られます。ぜひ一度見てみてください。それ以外に私個人としては以下の書籍をお勧めしておきます(先生方に勧められた書籍も多々あります)。

    デイヴィッド・チデスター『サベッジ・システム: 植民地主義と比較宗教』青木書店、2010
    塚田穂高『宗教と政治の転轍点 保守合同と政教一致の宗教社会学』 花伝社、2015
    山本芳久『トマス・アクィナス 理性と神秘』岩波書店、2018
    リチャード・E・ルーベンスタイン『中世の覚醒:アリストテレスの再発見から知の革命へ』筑摩書房、2018
    吉川弘文館、「日本宗教史」シリーズ
    春秋社、「近代日本宗教史」シリーズ

    最後まで記事を読んでくださりありがとうございました!
    最後に2点、この記事を作成したUT-BASEからお伝えしたいことがあります。

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