■理念/指針・沿革
理念
UTaTanéは、「科学や学問との新たな関わり方をデザインし、実践する」という理念のもとで活動を行っている、東京大学の学生を中心とした科学コミュニケーション団体である。東大内や他大、社会に存在する科学コミュニケーション団体と比較した際のUTaTanéの独創的なポイントとして、「科学の楽しさや正しさを啓蒙することではなく、人と人とや、科学とわたしたちの関係性の築き方を、参加者とスタッフが一緒になって模索すること」に主眼をおいていることが挙げられる。
指針
科学技術の急速な進展とともに、科学と私たちの生活は切り離せないものになっている。従来の科学コミュニケーション活動は、専門家が一般市民に科学をわかりやすく、面白く、正しく伝えるという、伝達に終始した活動であった。そしてその方法が模索されてきた。
しかし、果たしてそれだけで良いのだろうかという疑問が、活動の原点にある。私たちは、科学の何を、どのように、そしてなぜ伝えるのかを議論し、科学イベントや様々な実践活動を通じて探究を続けている。
その中で、参加者の創作活動を起点とした対話を生む実践を数多く提案し、学術コミュニティも含めた貢献をしてきた。例えば、「ねじ曲げ見出し」では、参加者があえてウソの見出しを作るところから、ニュース見出しや情報の見方、捉え方を一緒に考える取り組みを行った。また、「色のパッチワーク」では、「科学色」という未知の名称に合う色を選択してもらうことを通じて、参加者の科学への考え方や価値観を一覧し、参加者とともに科学を考えていくデザインを提案した。
このように、科学や学問との関わり方のチャネルを増やし、科学や学問の裾野を広げつつ、参加者とともに問いを探究していくような科学コミュニケーションのあり方を探っている。
沿革
2018年度は「未来の生活」、2019年度は「創造性」、2020年度は「科学の相対化」、2021年度は「言葉と心」2022年度は「人の差異と科学」、2023年度は「人の差異と同質性」というテーマを設定し、個人やグループごとの展示制作、および学園祭・学内外の科学イベントへの出展を中心に活動してきた。これに加えて、コミックマーケットへの出展や福島県での科学イベント監修な、さまざまな団体に対して企画協力なども行った。
学園祭で「みどころ企画」や「学術企画」に過去多数回選定されてきた。また、JSTが主催する日本最大級の科学コミュニケーションイベントであるサイエンスアゴラに4年連続採択された。特に、サイエンスアゴラ2021から2023にかけて、全体の1割程度のみ企画が選ばれる「注目企画」に3年連続で選定され、注目を浴びている。
さらに、査読付論文誌『科学技術コミュニケーション』に団体の実践が採録されたことをはじめ[1]、教育工学会研究会や科学教育ボランティア研究大会などでの発表など、学術コミュニティへの貢献も積極的に行なっている。
このように、展示の考案から実践活動、さらには実践活動の知見を学術コミュニティや新たな実践活動に還元するというサイクルを団体内に構築している。また、先の成果の一部は、学部1・2年のメンバーによるものであり、加入するメンバーは団体のリソースやノウハウを利用して、自身のやりたいことや展示を実現可能である。
[1]久保田祐貴, 加藤昂英, 一柳里樹: 参加者の自発的交流と参画を促す科学技術コミュニケーション〜UTaTanéにおける2つの実践に基づく分析〜, 『科学技術コミュニケーション』, Vol. 28, pp.61-74 (2021).
■活動内容
UTaTanéは、従来の啓蒙的な科学を伝える活動ではなく、参加者の創作活動を起点に、参加者とともに答えのない問いを考えるための、オリジナルな展示制作を行っている。また、扱うテーマは、年度ごとに構成員の興味が最大化するよう、毎年数ヶ月話し合って決めている。これまでに「未来の生活」「創造性」「科学の相対化」などをテーマとしてきた
目の前の参加者と向き合うことを重視しており、机上の議論に止まらない活動を行うことが特徴的である。一方、良質な機会を作るために、団体内で勉強や議論も行っており、議論も実践も行う団体である。
■OBOGの進路/活動
〈進路〉
東大内外の大学院(情報、物理、化学など、博士課程含)、IT系エンジニア、事務職、国立研究所や企業の研究職など、幅広い分野に進んでいる。