【進振り体験記】#15 文転ではあるが文転ではない進振り体験記

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「あなたはどのようにして進学先を決めましたか?」

多くの東大生が1度は頭を悩ませる、進学選択(通称「進振り」)。

——何を基準に学部・学科を決めれば良い?どんな手段で情報を集めれば良い?自分の興味・関心にどう向き合えば良い?

そんな疑問を抱く東大生に寄り添うべく、悩み抜き、考え抜いて進学先を決めた先輩たちの経験を発信する連載「進振り体験記」!

今回は、理科2類 から教養学部 教養学科 地域文化研究分科 北米研究コース に進学した学生の体験談です。

1. 基本情報

今回、体験をシェアしてくださった方の基本情報は以下の通りです。

◯名前: T.S.さん
◯出身科類:理科2類
◯進学先:教養学部 教養学科 地域文化研究分科 北米研究コース(詳細:こちら

2. はじめに

こんにちは、私は「理科2類→教養学部教養学科地域文化研究分科北米研究コース(通称:教養学科アメリカ科)」という進振りをしました。以下に、どのようにしてこのような選択をするに至ったのかを書いていきます。参考になれば幸いです。

3. 大学に入る前

自分は、社会科学系、人文科学系、自然科学系まで何でも興味があるタイプの人間でした。小・中学生のときは数学、理科、社会、英語から音楽、美術の授業まで割と熱中していて、自分の適性や1番興味のあることが何か全く分かりませんでした。どちらかと言えば自然科学系の科目が好きだったと思います。

高校入学後の文理選択では理系クラスに進むことを選択します。この時は何も考えず、「とりあえず理系」というノリで選びました。そして、ここが違和感の始まりでした。

理系に進学すると社会について学ぶ時間が少なくなります。時間割の多くは数学・物理・化学などで埋まり、政治・経済という大きな枠組みの中で思考する時間がなかなか取れません。部活は英語ディベート部に入っていましたが、そこで移民問題、環境問題等々のリサーチをする中で「社会とつながっている感覚」を得ていて、それを楽しんでいました。ですが、日々の授業ではそのような感覚を得られず、あまり満足できずにいました。もちろん、勉強/学問というのは何かに没頭する体験であり、時には孤独を感じる作業かもしれません。それでも、どうせ学ぶなら「物質」の世界より「社会」を学びたいなと思っていました。自分を文理のグラデーションの中で捉えた時に文系寄りの方にいそうだなという感覚は、この頃から認識するようになりました。

そこで、いくつかのイベントに参加することにしました。学外で何か経験すれば、自分の適性と興味がどこにあるのか見つけ出せるだろうという謎の期待を抱いていたからです。日米関係について学ぶ海外大学のオンライン講座(Stanford e-Japan)を受講したり、科学の甲子園の県大会/全国大会に出てみたり、あるいは授業外のゼミに参加してハーバーマスやウェーバーの著作を講師の方の手解きを受けながら読み進めたり...文理の垣根を超えて色々なことをしました。

そのような中で自分が暫定的に導き出した結論は、「高校では理系を継続し、大学入学後に文理選択について考える。現状としては社会科学系の学部に進みたい。」というものでした。これは、文系も理系も捨てがたいという意識から生じた「留保」でした。

東京大学は、進学選択制度があり自由な履修ができるということで、上記の計画を遂行できる数少ない教育機関でした。東大には「前期教養課程と進学選択制度を存分に使ってやろう!」と思いながら入学しました。

4. 大学入学後

理系でも社会科学系/人文科学系の勉強が自由にできるのが東大のメリット...と言いたいところですが、1S、1Aともにそのような環境はあまり整っていませんでした

まず、基本的に理科生の授業の殆どは必修と準必修で埋まります。自由に取れるのは週2~3コマくらいで、初年次ゼミナールも理科生は文科生用のものを履修することができません。理科類から社会科学/人文科学系を目指す東大生の多くは、こうした理科系必修の波に流されて、気付かないうちに当初の目標を諦めてしまうのではないかと思います。

進路選択をする上で良かったなと思うのは、1Sセメスターから「高山ゼミ」(現「馬路ゼミ」)という国際政治・経済・メディアを学ぶゼミに入れたことです。このゼミについて簡単に説明すると、以下の通りです。

毎週The Economistから1つ記事を指定され、それについて分析して論点提示を行い、ゼミ当日に議論を行います。加えて、各セメスターに1人1本、1万から2万字程度の論考を執筆します。論考のテーマは自由で、その時々に応じた問題意識・興味・関心を探究することが求められます。論考の執筆には、基本的に海外の1次資料、2次資料の参照が求められます。こうした学びのプロセスによって、いま世界で何が起きているのか、何が注目を集めているかといったことを大局的に理解できるようになる、というゼミです。僕は同期のうち、唯一の理科生として入りました。

必修と準必修で多くのコマが埋まってしまう学部1年生のときは、このゼミが唯一、広範な社会について学ぶ場になっていたと思います。毎週The Economistの記事分析で時事問題を学びつつ、1Sで「米国の宇宙開発」、1Aで「ブレグジット前後の英国外交」についての論考を執筆しました。学問的な理論体系にはそこまで触れませんでしたが、ここで法、政治、経済の世界を垣間見ることができたのは、とても良かったなと思います。

ゼミの経験で、国際社会にやはり惹かれている自分がいるということに気付くことができました。加えて、英語圏の世界にどこか憧れている自分がいるということも認識することができました。

一方、理科系の講義についても真面目に受講していました。というのも、(文科→理系学科は要求科目等があるため進振りが難しいと聞きますが、)実は理科→文系学科もなかなか難しいのです。法学部・経済学部の理科枠は文科の人たちのそれに比べて少ないですし、教養学部教養学科について言えば、理科枠はほんの数名あるいはゼロです。つまり、基本的に全科類枠での競争になります。運に左右される面が大きく、進学を確実にするためには丁寧に前期課程の勉強をすることが必須になります。理科系の必修の勉強も疎かにしないようにしましょう。

たとえ内容があまり面白く感じなくても、クラスの友達と協力しながらワイワイ勉強していれば楽しめます。頑張りましょう。

ここまでが、自分の学部1年生までの進振りの軌跡です。

5. 学部2年進学後

自分を教養学科アメリカ科へ大きく引き寄せたのは、2Sセメスターの経験だと感じます。当時、法学部・経済学部・教養学部(教養学科)・文学部(社会学)のどこかに行きたいと考えていましたが、それぞれの学部が主に扱う対象が異なるので、どこの学部に行けばいいか分かりませんでした。

ここで転機となったのもやはり全学ゼミの「地球社会におけるリアリズムの探求(馬路ゼミ/旧・高山ゼミ)」で、ハリウッドの映画産業についての論考を書いた経験が決め手でした。大恐慌、第二次大戦、冷戦、同時多発テロなど重要な時期に、ハリウッド/ワシントンD.C./米国市民の関係がどのようなものであったかを分析したのですが、ここで米国社会の面白さを再度認識しました。政治と大衆文化が癒着と対立を繰り返していく過程を分析して、この国に内在する政治と文化のダイナミズムの一部分に触れることができたような気がしました。同時期に、「映画論」の授業で1910〜30年代のアメリカ映画を勉強していたのですがこれも大変興味深く、政治・経済・文化など多様な面での米国に惹かれました。ここで、教養学科アメリカ科の選択肢が急浮上しました。

今までの人生を振り返ってみても、これまでずっと米軍基地のすぐ側に住んできて、初の海外経験は米国で、ゼミでの論考は3本中2本も米国について書いたな…などと意外にもこの国にずっと触れながら/興味を持ちながら生きてきたということに気付きました。(今のは無理のある後付けかもしれませんが、)米国について勉強することでなにか得られるものがあるかもしれない…という謎の直感もあったような気がします。こうして、広範な国際社会への興味は、米国への興味に収束していきました。

加えて、これまで何度も述べてきた高山/馬路ゼミ(2年次で卒業となります)での活動に似た学びを継続したいという思いもありました。社会科学/人文科学系の取得単位数が少なめにならざるを得ない理科生の私にとって、自分の学問的関心は常にゼミでの学びによって満たされていました。「英語圏のニュース記事、本、論文を読み漁って文章にまとめ、少人数で議論する」という学習スタイルを1年半かけて確立しつつあった中で、大人数講義中心の学部や英語文献を読む機会の少ない学部に進学することに抵抗がありました。アメリカ政治を学べるということで法学部への進学も真剣に考えましたが、上記の理由から後期教養のアメリカ科への進学を決めました。

6. 現在の学部・学科での生活

学科のメンバーは各学年5〜10名程度なので、授業は少人数が基本となります。また、予習に比重を置いているのも前期課程の授業との違いだと思います。予習量は授業によって異なりますが、英語文献10〜20ページ前後(政治論、文化研究基礎論など)がスタンダードで、他には日本語の新書1冊(近代史は隔週、外交論は毎週)であったり、英語論文1本または記事1〜2本(Advanced ALESA、経済論など)であったりします。レジュメ担当になるとその週は大変ですが、繰り返しやっているととても力がつきます国際関係論コース(通称「国関」)の友人と話していて実感したことですが、文献を読む量は国関と同等かそれ以上かもしれないです(笑)。

PEAK生(教養学部英語コースの生徒で、海外からの留学生が多い)やUSTEP生(全学交換留学プログラムで日本に留学している生徒)と一緒に受ける授業を履修できたり、教養学科内の他の分科(総合社会科学分科、超域文化科学分科)の授業も履修しやすかったりするなど、自分の興味に応じた時間割を組みやすいのもいいなと思っています。また、他分科のコースを副専攻として学ぶサブメジャー制度があり、アメリカ科に身を置きながら国関や表象コースのサブメジャーをしている人もいます。分科内での繋がりは勿論のこと、他コースの人との繋がりができやすいのも後期教養に進む利点だと思います。

英語圏に留学する人が比較的多いのもアメリカ科の特徴だと思います。私も夏から米国への交換留学を予定していますが、学科の先生方や現在留学中の先輩方に留学の質問や相談がとてもしやすいです。アメリカ科に限らず、地域文化研究分科全体として留学を後押しする雰囲気があるように感じます。

今後どのような学科生活を送るかは想像がつきませんが、3ヶ月ここで勉強した感想として、とても良い選択をしたと思っています。

7. メッセージとアドバイス

これまで理系として高校、大学と過ごしてきましたが、最終的に落ち着いたのは数年前からずっと学びたかった英語圏の政治・経済・文化を勉強する学科でした。以前から興味を持って学んできたことの延長線上に今の学科があるような感覚で、そういう意味では自分の進学選択が「文科」に「転向」する作業だったとは感じていません。自分の表面的な肩書きに囚われずに、昔からの興味を大事にしつつ、新たな学問との出会いと変化を楽しんでください。それと、「コレジャナイ...」という違和感を感じているのであれば、その感覚を大切にしてください。進振りは、そうした微かな違和感と向き合って軌道修正を何度も行いながら、自信を持って正解だと思える学部学科を見つけていく作業だと思います。頑張ってください。応援しています。

最後まで記事を読んでくださりありがとうございました!
最後に1点、この記事を作成したUT-BASEからお伝えしたいことがあります。

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