【進振り体験記】#22 大学進学、広がっていった興味。

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「あなたはどのようにして進学先を決めましたか?」

多くの東大生が1度は頭を悩ませる、進学選択(通称「進振り」)。

——何を基準に学部・学科を決めれば良い?どんな手段で情報を集めれば良い?自分の興味・関心にどう向き合えば良い?

そんな疑問を抱く東大生に寄り添うべく、悩み抜き、考え抜いて進学先を決めた先輩たちの経験を発信する連載「進振り体験記」!

今回は、文科二類 から 経済学部経営学科 に進学した学生の体験談です。

1. 基本情報

今回、体験をシェアしてくださった方の基本情報は以下の通りです。

◯名前:L.I.さん

◯出身科類:文科二類

◯進学先:経済学部(詳細:こちら

2. 大学進学前

ーなぜ文科二類を選んだのか教えてください。

もともと高校の時に経済学の授業をとっていました。その時に企業の今の実態を学んだのですが納得いかない点がいくつかあったんです。そこで「自分が起業家になったらどういうふうにするだろう」と考え始めて経済学部に興味を持ちました。まだ漠然としていて、「経済学の道に進んでこれを学ぶ!」というような具体的なところまでは決まっていなかったのですが、文二で入ったら経済学部に行きやすいということは知っていたので文二を選びました。

ー「納得できない点」とはどのようなところだったのでしょうか?

授業ではNIKEなどの有名な企業の工場における労働者の扱いなどの話が取り上げられていました。強い力を持つものが上から圧力をかけて労働者を働かせているという現状を知って、大企業の実態に驚愕しました。CEOに「こういう人権問題についてどう思われるんですか」と聞くようなインタビュー動画があったのですが、企業のトップの人たちはそれについて全然問題意識を持っておらず、むしろ「自分達は発展途上国の人たちに仕事を与えているヒーローだ」というような言い分でした。それに対して「それは違うよな」と思ったのが問題意識の始まりです。

3. 入学当時を振り返って・ターニングポイント

ー入学時から興味分野は変わりましたか?

入学前は自分が起業しようというモチベーションが高かったのですが、そのうちに消費者行動に興味を持って、最近はマーケティングやコンサルティングをやってみたいなと思っています。

ーその変化の背景には何があったのでしょうか?

瀧本ゼミの企業分析パートに入って、企業戦略を通して裏から企業の状況を見極めることに魅力を感じたのがきっかけです。そこで「起業家としてリーダーシップをとることだけが社会への影響力を持つこととは言えないな」と思い始めました。このゼミでは一般の人たちが見ている情報をさらに深く掘り下げていって、ある企業がなぜ成功/失敗するのかということを徹底的にリサーチします。その中で「自分だったらこういう戦略を取るな」と考えているうちに、リーダーのポジションとは違うところからどうやって企業活動に貢献できるのかを考えるようになりました。

ー瀧本ゼミの企業分析パートはかなり厳しい印象があるのですが、このゼミに入ろうと思ったきっかけは何だったのでしょうか?

企業分析そのものにも興味はありましたが、そこから得られるスキルが魅力的だなと思ってこのゼミに応募しました。大学で一年間を過ごしてから、正直高校生の時の方が頑張っていたなと思って、もう少し自分を厳しい環境に置きたいと思っていました

瀧本ゼミは努力が報われないことで有名です(笑)。単純に頑張ればいいというわけではなくて、正しい努力を正しい分だけするから成功できるという厳しい教えがあって、自分のリサーチも多方面から徹底的に批判されることが多いです。でも、「そういう厳しい環境に身を置いて私もプレゼンテーション能力やリサーチ能力を高めたい」と思いました。

ー企業分析ともともと持たれていた企業の現状に対する問題意識はどのように結びついていますか?

実際に分析してみると残念ながらエシカルな面でいい企業が必ずしも伸びるわけではないというのが事実としてあります。

でも、瀧本ゼミでは情報を持っている人が強いとよく言われているんです。瀧本先生のご著書の『武器としての決断思考』を読んで、まず情報を得ないことには何も始まらないと感じました。自分が情報を得るリサーチ力をつけることで社会に影響を与えられるようになれば、自分のこの能力を自分が正しいと考える変化を起こすために使っていくことができます。現状はあまりエシカルでない企業が強くても、自分が影響力を持つ立場に立つことで、エシカルな企業を後押しすることはできると思っています

ー行動経済学との関連もありそうですね。

行動経済学はもともと興味を持っていたのですが、確かに人の行動や判断にどう影響を及ぼすかというところで繋がりはあるかもしれないです。「人の行動をどう自分の持って行きたい方向に持っていくか」という問題意識が軸にあるのだと思います。

ーターニングポイントとなった課外活動は他にありますか?

進学先決定の重要な要因として部活の存在があったと思います。私は東大オケに所属していて、それに結構時間を取られることが多い上、来年の五月祭や4年生時には自分がまとめ役としてやらせていただくことになっていて、課外活動にもちゃんと時間を割く必要があると考えていました。一方で、もちろん大学には勉強しにきたので、勉強と部活のバランスをとれる経済学部を選びました

4. 悩み・葛藤・苦悩。そして決断の時。

ー経済学部の他に迷われた学部はありましたか?

経済学部の他に農学部の農業・資源経済学専修生命化学・工学専修は迷いました。

起業することを視野に入れた時に、「経営の知識や経済学の知識を得ていたとしても他の専門知識が必要なのでは?」と思っていました。そこで、「自分が高校時代の時に特に好きだった化学の専門知識を得れば自分が起業をする時に役に立つのかな」という考えから理転することを検討しました。

ー理転を検討するきっかけになった授業はありましたか?

高校までは文系・理系の境界が曖昧だったので、理系の科目も取っていました。文系の科目よりも理系の科目の方が得意だったような気がします。しかし、文科二類に入学してからは、文系・理系にはっきり分かれるようになって理系の授業を取る機会が少ないことに悲しさを感じていました。1年生の間は経済学部に進学するつもりで、取らなくてはいけない単位を取り切るために文系の科目しか取っていなかったので…。そんな中2Sで理系の必修の授業である化学実験などの理系の授業もとってみて、一瞬理転しようかなとも考えました。そしてその中でも特に文系から理転する人が行きやすいと聞いていた農学部を考えていました。

ー労働者の人権問題についてでしたら法律からもアプローチできると思うのですが、法学部は検討されなかったのでしょうか?

文一の友達が法の勉強しているのをみて、自分には無理だなあと思ってしまって、法学部は選択肢から外しました。多分知識として持つのはすごくいいんだろうなとは思いましたが、それを専門にして研究していける自信がなかったので法学部は選びませんでした。

ー経済学部に決めた理由はずばり何だったのでしょうか?

実際に化学実験をとってみて理系に追いつくにも限界はあると感じたのと、実際に農学部に進んでから自分が起業をしている想像がつかなかったことが理由でした。逆に瀧本ゼミを通して企業の競争戦略について興味を持ち、その中でも消費者に焦点を当てたマーケティングをより深く学びたいと思いました。そして、「最初に考えていた通り経済学部に行ってちゃんと知識をつけた方が自分のためになるのではないかな」と思い現在の進学先に決めました。

また、その学部に進んだ後のキャリアを考えた時に、学部卒業後も研究をしないのであれば経済学部に行った方が就職に関して色々なチャンスがあるのかなと思ったことも理由の一つです。

しかしかなり直前まで迷っていて、答えが見えてきたのは2年生の6月でした。

ーやはり理転するのはハードルが高いということでしょうか?

まず海外に19年間住んでいた帰国子女である私にとっては、日本語で一から自然科学を学び直さなければいけなかったというのもありますし、「学部を卒業した後にもし専門で研究していくのであればかなりの知識量が必要になるな」と思ったのも理転しなかった理由です。さっきも言った通り私は勉強はもちろんですが課外活動もやらなくてはいけない状況にあるので、どちらも頑張れるのかなというのが不安でした。そうなった時に、「今経済学部にも興味があるのならそっちを選んでやってみるのもありかな」と思ったんですよね。もし今後また「理系に戻りたい」と思った時には大学院に進学する等のオプションはあると思ったので、「とりあえず経済学部に挑戦してみよう」と思いました。

ー経済学部で授業を受けたい先生はいらっしゃいますか?

行動経済学の研究をされている阿部誠先生です。高校生の時にたまたま読んでいた本の著者が阿部先生で、それから一般公開されている先生の講義を見て面白いなと思ったのがきっかけです。

ー情報収集はどのように行われていましたか?

実際にその学部にいる部活の先輩から話を聞きしました。具体的に聞いたこととしては、興味分野について学べそうかとか、授業の雰囲気とか、負担感などです。それに加え、経済学部農学部のウェブサイトも見ていました。

5. 進学先の雰囲気

ー学部の雰囲気はどのような感じでしょうか。

授業形式は全部が一方向の講義です。私は少人数でインタラクションをしながら受ける授業の方が好きなので今の授業形態は正直辛いです。しかしそんな中でも経営の授業やミクロ経済学の授業などは、難しいけれど面白いと思って授業を受けています。

また授業数は少ないです。A1の時が6科目で1科目につき2限分だったのでコマ数で言えば12コマでしたし、A2タームには5科目になりました。授業数が少ないからこそバイトをしたりインターンが始めやすかったり、部活の練習時間を取ったりなど、自分の勉強以外の活動ともバランスが取れるのが魅力だと思っています。1年生の時はかなりキツキツで授業をとっていて辛かったのですが、今は違う形のライフスタイルを楽しんでいます。

ーこの生活はもともと想像していたのと違いましたか?

結構前は「文ニートとかどういうこと?!」と思っていたのですが、実際進学してみると結構暇なので、今考えてみれば「あーそういうことか」と思います。私はオケなど他の活動をやっているのでかなり充実した生活が送れていますが、そういった活動がなかったら時間の使い方がわからなくなっていたかもしれません。

6. アドバイス

ーこれから進振りを迎える1年生にアドバイスをお願いします!

自分が行きたいところが決まっている人はスパッと決めてもいいとは思いますが、そういう人でも、視野を広げるということはすごく大事だと思っています。

「自分は文ニに入ったから経済学部に行く!」と決めつけるのではなくて、理系の科目をとってみたり、文系でも違う分野の授業をとってみたりすることで自分の本当の興味分野を見つけられるのではないかと思います。特に追い出しができる授業であれば積極的にとってみると良いですね。

自分の場合は結局経済に戻ってきましたが、知り合いで本当に理転した人もいて、その人は大変そうでもあるけれど今はすごく楽しそうです。

やりたいことが見つかっていない人はもちろんですが、前期過程は色々なことを学べる時期なので、授業だけでなくサークルや部活などで様々な経験を積んで、自分はこれからどうしたいのかなと考えることが大事かと思います

私は農学部と経済学部の二択で考えていて、経済学部を選んだことに今は満足はしていますが、特に色々な学科がある学部についてはもっと調べておけばさらに選択肢は広がっていたのかなと思います。

また理転や自分の科類の王道コース以外の学部に行くときには点数が必要になることが多いと思います。私は1年生の時に授業を結構詰め詰めでとってしまって、一科目に割ける時間も自然とに短くなってしまい、1年生が終わった時点で点数に関して悔いが残ってしまいました。平均点を上げたいのであればちょっと不安でも1年生の間にそこまで授業をたくさん取らずに分散してとるのもいいのではないかと思います。

UT-BASEメンバーより

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