「あなたはどのようにして進学先を決めましたか?」
東大生なら誰でも1度は頭を悩ませる、進学選択(通称「進振り」)。
——何を基準に学部・学科を決めれば良い?どんな手段で情報を集めれば良い?自分の興味・関心にどう向き合えば良い?
そんな疑問を抱く東大生に寄り添うべく、悩み抜き、考え抜いて進学先を決めた先輩たちの経験を発信する連載「進振り体験記」!
今回は、文科2類 から 教養学部 教養学科 地域文化研究分科 アジア・日本研究コース に進学した学生の体験談です。
1. 基本情報
今回、体験をシェアして下さった方の基本情報は以下の通りです。
名前:R.N. さん
出身科類:文科2類
進学先:教養学部教養学科地域文科研究分科アジア・日本研究コース
2. 大学に入る前
ー高校時代にはどのようなことに関心がありましたか?文科2類を選んだ理由も教えてください。
なんとなく、経済や商学は面白いかなと思っていました。お金関連のことを学ぶことができるものに興味がありました。受験生の頃は学問を楽しみたいという思いもなく、なんとなく実利に近そうな経済を学ぼうと思い、文科2類を選んだと思います。
ーそもそも進学先の地域文化研究分科について知っていましたか?
高校生の頃は地域研究というアプローチそのものを知りませんでした。実は中国に興味があり、経済学部で中国経済について学べばよいと思っていました。
ー中国に興味を抱くようになったきっかけを教えてください。
幼少期の頃からアメリカやオーストラリアなどに8年間住んでいたのですが、その中でアジア系の人々、主に中国の人々と交流する機会が多々ありました。その中で、価値観などが日本と同じようで微妙に違うところに興味を持つようになりました。
ー中国の魅力について教えてください。
スケールの大きさが全然違うじゃないですか(笑)。大きな国が大きな国として存在していることにロマンを感じて。浅田次郎の小説の『蒼穹の昴』は本当にオススメです。
3. ターニングポイント(授業)
ー進振りの際にターニングポイントになった授業を教えてください。
経済の授業を受けて、「コレジャナイ感」を覚えました。私は実体を持たない形で物事を論じるのが苦手で、経済は随分ぼんやりしているような印象を受けました。数式もそうですが、自分にとっては机上の空論のように思えました。
4. ターニングポイント(課外活動)
ー進振りのターニングポイントになった課外活動を教えてください。
HCAPやTEDxでの経験ですね。
HCAPでは、何か芯のような、哲学のようなものを持って語っている仲間たちと出会いました。私は自分にこれといったものがないことがコンプレックスで、仲間たちのように熱を持って話せることがないなあと焦りを感じていました。HCAPの人たちと話しているうちに、興味を持って語ることができるものを見つけたいなと思うようになりました。
TEDxでは、興味分野を深めている段階の2, 3年生の方々と話す機会を多く得たことをきっかけに、知的好奇心を持っている人は素敵だなと感じました。それまではとりあえず経済学部でいいかなと思っていましたが、私は学部の間は自分のやりたいことをとことん学びたい。意図的に他の可能性を遮断してまで経済学部に進学するのは、自分にとって苦痛なんだろうなと考えるようになりました。
ー「自分にこれといったものがないことがコンプレックス」とお話ししてくださりました。R.N.さんの哲学となるようなものはその後、見つかりましたか?
自分は人という対象がない限り、興味を持てないんだと思うようになりました。経済に「コレジャナイ感」を感じていたのは、人という対象が見えなかったからだと思います。
それに、今までは中国のことなら全般的に興味を持って学ぶことができましたが、一番知りたいのは「中国人」という人としての存在だと気がつき始めました。
ー社会保障など、経済の理論を知っておくと良いような「人」に関わる分野もありますが、経済学部に進学することにどのように見切りをつけましたか?
将来やりたいこと的に、大学で学んだ経済学が仕事にそこまで影響しなさそうだと考えていました。それならば、学部時代は興味の赴くままにやりたいことをやろうかなと。
5. ターニングポイント(その他)
ー授業や課外活動以外で、ターニングポイントになったことがあれば教えてください。
2年生のSセメスターで中国語の会話の授業を履修しました。その授業の初回で、自分の興味のある学問分野について語ってくださいと言われたのですが、なぜか経済と言いたくなくて…(笑)。それが経済学部に行くことをやめようと思ったきっかけでした。
6. 学部・学科の絞り込み
ーR.N.さんはどのように学部・学科の絞り込みをしていきましたか?
自分の興味のあることを書き出して行った時、①中国の研究、②美術・芸術、③地域創生の3つがあるなと気づきました。どれも好きなことだけれど、美術・芸術は趣味として自分ひとりでも興味を深めることができる。地域創生は長い目で見た時にキャリアとして取り組みたいことの一つだけど、学部時代に学問の領域として学ぶのも少し違う。
一方で、中国は私の中でスケールが大きすぎるもののように感じ、「学部じゃないとできない、学部じゃないとやらない」テーマであるように思いました。実際、アジア・日本コースには中国研究について知りたいことがあればすぐに先生方に聞きにいくことができると分かり、私にとって魅力的な環境だなと考えるようになりました。
ーアジア・日本コースと進学を迷った学部・学科はありましたか?
中国の研究、美術・芸術、地域創生、全ての真ん中に人があると思うんです。その意味では、超域文化科学分科で文化人類学を専攻するのもいいんじゃないかとも考えていました。(文化人類学コースについてはこちら)文化人類学という学問を通して人に対するアプローチを学べればいいなと思って。
ただ、中国には断然興味がありました。それならば、中国という枠の中で文化人類学の授業を取れば良いんじゃないかとも思うようになったんです。
ー情報収集について、どのような媒体・手段で行いましたか?
UT-BASEの学部・学科紹介はよく活用していました。アジア・日本研究コースは元々は中国研究からスタートしているという情報も、UT-BASEの記事から知ることができました。
7. 現在の学部・学科での生活・満足感
ーアジア・日本研究コースの授業や雰囲気はどうですか?
やはり中国研究を専門にされている先生が多いです。みんなで目を輝かせて先生の話を聞いていますね笑。
ーアジア・日本研究は地域研究の中では大所帯ですが、どのようなことに関心がある人が多いですか?
中国・香港に興味がある人が多いですが、西アジア・東南アジアに関心がある人もいます。社会科学/人文科学という括りだと、半々くらいですかね。
ー「中国という枠の中で文化人類学の授業を取れば良いんじゃないかと思うようになりました。」とお話ししてくれましたが、2Aセメスターの授業はどのような感じでしょうか?
実はピッタリな授業があって笑。文化人類学特殊講義(中国研究の人類学)いう授業なのですが、今学期で一番面白いです。時間割も「好きなもので固めた」という感じで、最近は毎日授業を受けに行くのが楽しいですね。
少人数授業も多く、報告担当になると緊張もしますし、まだまだ完璧にはできませんが、先輩を見て色々学びながら勉強できるのは面白いです。
8. アドバイス
ー進振り先を決めるのに悩んだ際、どのようなアクションを取った方が良いと考えますか?これから進振りを迎える人にアドバイスをよろしくお願いします。
興味のあることをフローチャートみたいに書き出すのはオススメです。私の場合、自分の興味のある3つの軸と、軸と人の関係は書き出すことで初めて気づくことができました。
ー底点を稼ぐことと、自分の興味のある授業とのバランスについて、どのように考えていましたか?
気にするに越したことはないですね。私も進振りの前日までは超域文化科学分科を第一志望にして、第二段階まで粘ろうと思っていました。結局は第一段階から地域文化研究分科にしましたが、チャレンジした事実は残そうとしていました。
9. メッセージ
ー最後に、これから進振りを迎える方に、一言お願いします。
想像するキャリア・就職に有利/不利という観点に縛られすぎないでほしいです。実学が就職に有利という風潮はありますが、私は東大に行ってまで、その考え方に従って進振り先を選びたくはありませんでした。
卒業してから後のことは未来の自分がきっとどうにかしてくれます。進振りでは、今、自分が何をやりたいのかに忠実であってほしいなと思います。
UT-BASEメンバーより
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