【進振り体験記】#27 進振りの「結果」ではなく「過程」が人生を豊かにしてくれる

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「あなたはどのようにして進学先を決めましたか?」

多くの東大生が1度は頭を悩ませる、進学選択(通称「進振り」)。

——何を基準に学部・学科を決めれば良い?どんな手段で情報を集めれば良い?自分の興味・関心にどう向き合えば良い?

そんな疑問を抱く東大生に寄り添うべく、悩み抜き、考え抜いて進学先を決めた先輩たちの経験を発信する連載「進振り体験記」!

今回は、文科一類 から 農学部 国際開発農学専修 に進学した学生の体験談です。

1. 基本情報

今回、体験をシェアしてくださった方の基本情報は以下の通りです。

◯名前:保田優太 さん
◯出身科類:文科一類
◯進学先:農学部 環境資源科学課程 国際開発農学専修(詳細:こちら

2. 大学に入る前

ーー東大を受験する際、なぜ文科一類を選ばれたのでしょうか。

もともと、時事問題や政治経済の授業に興味がありました。日々のニュースやドキュメンタリーを見る中で、自分の中のアンテナがピピっと来たのが政治や経済に関わる時事問題だったのは、「社会の変化」に合わせて政府や企業が問題解決を行っていく姿に憧れを持ったからです。中学生の時から、「電気自動車の時代だな」と思って量産型の電気自動車を生産していた日産自動車の株を買って大損したりなんかしていました(笑)

同じくそういったニュースで知る機会が多かったのが「法」でした。社会の変化との結び付きが強いこともあり、世の中の枠組みのうち「法」という制度が面白そうだなと思って文科一類を受験しました。

3. ターニングポイント(授業)

ーーそんな入り口から東大の文一に入学されたわけですが、法学部ではなく農学部に進学されました。何かターニングポイントとなるような授業はあったのでしょうか。

「農学部に行きたい」と思うきっかけとなった授業があったわけではないのですが、いざ文一に入学して法学の授業を取ってみると、自分には法学は合わないかもしれないと感じました。

判例を1つ1つ見ながら解説が加わっていく形の授業を受けていたのですが、自分はその内容を楽しいと思うことができませんでした(このあたりについては、法学がどうこうというより、各個人の好みであると思います)。

自分は、もっと生身の人間が前面に出て来て、人間臭さが感じられるようなことを勉強したいと思うようになりました。

「え〜〜、面白いと思ってたのに!」とガッカリはしましたが、そこで挫けるというよりは、主軸を課外活動(後述)の方に移し、そこで魂を燃やして活動していました。

ーー法学部では政治の授業もあるかと思いますが、そちらもあまり合わなかったということなのでしょうか。

入学前に興味を持っていた、時事問題やニュースで扱う政治と法学部で扱う政治学は違うような気がしました。法学部で学ぶ政治は哲学に近いような気がして、概念的で高尚すぎて興味が持てませんでした。

今振り返ると、自分が関心を持っていた時事問題や社会問題の裏側には「人間味」「生身の人間」という部分があったのかもしれません。

自分が進学した後に学ぶ農業の中でも、「生身の人間」が深く関わってくる農村に興味があったので、そういう意味では入学前の興味と現在の興味は一貫していないように見えても一貫しているように思います。

4. ターニングポイント(課外活動)

ーーなるほど。では、「法学部ではないかも」と思い始めてから農業に辿り着くまでには、どのような過程があったのでしょうか。

そうですね。まずは「もしかして農業って面白い?」と感じ始めるきっかけがあって、その後に決定打となることがありました。

■ ①もしかして、農学部って面白い?

自分は「GEIL」という政策立案コンテストを運営する団体に所属していて、自身も大学1年生の時にコンテストに出場しました。

そこでは、「文化政策」や「労働政策」などの中から分野を絞って個々人が政策を勉強する時期があるのですが、自分はその際「農業政策」を選びました。明確な理由は記憶していないのですが、潜在意識の中ではその頃から少し気になっていたのかもしれません。

ただ、その時は将来農学に関連する道へ進むつもりは全く無く、民間企業に行くか、司法試験を受けるか国家試験を受けるか…といった選択肢を考えていました。

ただ、勉強したり調べたりしていくなかで、農業政策には独自の難しさがあることが見えてきました。例えば、土地の条件によって生産量が違ったり、資本を投下したらその分だけ効率が良くなる訳ではないなど、うまく経済合理性が働かなかったりということが起き得ます。

また、災害防止だったり豊作を願うお祭りなどで地域の活性化に寄与したり、多方面で農業が役に立つという経済外部性が存在するなど、かなり複雑です。

そのことを知り、「なんて難しいんだ!」と思うと同時に、「なんて面白いんだ!」と感じられるようになりました。そこから、「農業政策って面白いな」という気持ちが強くなりました。

■ ②決定打:政策って、机上の空論?

そこで芽生えた興味を追求するため、1年生の終わりごろから2年の始めにかけて、農林水産省や農家の人に会いにいく、という活動をたくさん行いました。

東京農業大学の知り合いのツテや、農林水産省の知り合いなどを辿って、自分のコネをフル活用しながら色々な人に会いに行きました。

そこでわかったのは、農業に携わっている人たちがとても面白いということです。そこにいたのは、ある種自由で、ある種変わった人たち。皆さんがそれぞれのこだわりを持っていました。

言語化するのが難しいのですが、精神的に何かに縛られている感じがしなくて、とても魅力的な人たちばかりでした。そこで出会った人たちとは今でも連絡を取り合っています。

こうした出会いもあって、農学部かなということが固まりつつありました。

4. 迷った学科と決断の時

ーー希望の学部が決定した時期はいつ頃でしたか?また、他に迷った学部・学科はありましたか?

2年生の6〜7月くらいには農学部に固まりつつありました。

他に考えていたのは、教養学部の地域文化研究分科で、それぞれの地域の文化には「人間味」が強く出てきそうだなと思ったので、何度もお話ししているように「人間臭さ」みたいな部分に興味があった自分にとっては魅力的でした。

また、農学部の中でも農業・資源経済学専修(以下、「農経」とします)と迷いました。こちらの専修の方が文化や農村といったテーマを重点的に扱っていて、自分の好きなことを沢山学べると思ったのですが、「せっかくだから農業全体を広く学んでみたい」という気持ちもありました。結果的には後者の気持ちを優先しました。

自分が進学先として選んだ国際開発農業専修(以下、「国農」とします)では、「幅広い農学を広く浅く学ぼう」というのが私の解釈ですが、軸になっていると思います。

5. 悩み・葛藤・苦悩

ーー進学選択において、悩んだことや葛藤はありましたか。

農学部に行くことは、初めは怖かったです。

文系出身だから、生物や物理などの勉強についていけるか心配だったし、「東大法学部」というブランドを捨てるかどうかについても悩みました。

法学部に行けば国家試験か司法試験を受けて、というように、なんとなく自分が進む将来像が想像できます。

しかし、「農学部に進んだらどういう進路になるんだろう?アカデミアの世界に行くのかな?民間だとどういう就職先があるんだろう?」という進路の不透明さが不安でした。

実際のOB・OGの方々の進路については先輩に聞いたり公式HPを見たりして色々調べましたが、「これでは調べきれない!」というくらい多様でした。

最終的には、第二段階登録の当日に、最後の最後まで考えて、直感を信じて「エイヤッ」「どうにでもなれ」という精神で農学部に希望を出しました。そして、その選び方も悪くないと感じています。

ーー「直感」というのは、可能な限りでもう少し具体的に言うとどのような感じだったのでしょうか…?

自分が楽しめている未来が見える方、自分が楽しむ姿を想像できる方を選びました。

農学部に進んだ自分の方が楽しめていそうだなと思ったんです。

6. 現在の学部・学科での生活/満足感

ーー実際に進学してみて、学べることや学科の雰囲気はどうでしょうか。

まず、 先ほど「せっかくだから農業全般を広く学びたい」と考えて国農を選んだとお話ししましたが、実際に進学して広く学んでみて、正直言って興味がもともとなかったものに対して火がつくことはなかったです。必修の授業も想像より多く、自分の場合は農経にしておけば楽しい授業で埋め尽くせたのではないかと考えることもありました。

ただ、例えば授業で実験をすることになって、その過程で昆虫食について学ぶ機会があるなど、「この学科に来ていなかったら絶対やらなかったよな」というような内容との偶然的な出会いが溢れていて、人によってはそういう出会いによって人生が変わることも十分有り得るのではないかと思っています。

当たるか当たらないかは人それぞれ、といった感じでしょうか。

7. アドバイス・メッセージ

ーー最後に、これから進学選択を迎える人にメッセージやアドバイスをお願いしても良いでしょうか。

「進路の先行きが不透明であることが不安だった」というお話をしましたが、結論から言えば、進路は先に考えていなくても良いのではないかと思います。

大学1年生から就活対策をする人がいたり、司法試験の勉強を始めたりする人が増えているように、今の世の中には進路を早く決めなければならないという風潮がありますが、自分にはそれだけが正解であるとは思えません。その時に面白そうだなと自分の心が惹かれることを大事にして、好きなことを学ぶ過程を楽しみながら自分のやりたいことや進路を探っていくのも大事なのではないかと。

また、自分の直感を信じることができたことはすごく良かったなと感じています。

自分はそれで楽しめるかな、ということを想像して、最後はその選択に自分が納得できるように行動していくことが大切だと思います。

1つ惜しかった点としては、もっと研究室に行っておけば良かったなと思います。

もっと色々な教授に直接会いに行って、話を聞くことを重視すれば良かったなと反省しています。

皆さんの大学生活が充実したものになることを祈っています!

UT-BASEメンバーより

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