この記事は、6月7日開催「先輩に聞く!進学選択のリアルとホンネ」社会科学分野のイベントレポートです。進学選択に悩む1、2年生に向けて、内定者が学科の内容から将来の進路までお答えします!
「自分の興味のある分野の人に話を聞いてみたいけれど誰に相談すればいいのかわからない...」
「そもそも〇〇学科って何するところなの?」
「学科のパンフレットだけではわからない、雰囲気やホンネを知りたい!」
そんな疑問に答えるべく、Twitterでアンケートをとった結果特に人気の高かった6分野の先輩を集めて座談会を行いました。
今回は社会科学分野の紹介です。UT-BASEの学科紹介記事とも合わせてぜひご一読ください。
登壇者紹介
Iさん
・文科三類→文学部社会心理学専修(以下「社会心理」)
・興味分野:心理学、心理統計
・迷った学科:教育心理、心理(文学部)、認知行動
・将来の進路:就活中、院進の可能性も
時間割
Iさん
・文科三類→教養学部相関社会科学コース(以下「相関」)
・興味分野:政治学、日本政治
・迷った学科:社会学(文学部)、農学部、法学部
・将来の進路:学部卒で就職予定
時間割
Oさん
・文科三類→文学部社会学専修(以下「社学」)
・興味分野:ジェンダー
・迷った学科:相関社会
・将来の進路:院進予定
時間割
Tさん
・文科三類→文学部社会学専修(以下「社学」)
・興味分野:地域間格差、地域愛着
・迷った学科:社会心理
・将来の進路:学部卒で就職予定
時間割
Yさん
・文科三類→教育学部教育実践・政策学コース(以下「教育実践」)
・興味分野:教育行政(日本政治・行政)
・迷った学科:比教社
・将来の進路:国家公務員
時間割
Yさん
・文科三類→教育学部比較教育社会学コース(以下「比教社」)
・興味分野:高等教育、階層論
・迷った学科:教育心理、社会学、法学、仏文
・将来の進路:院進予定
時間割
授業や学生生活の様子
学問の特徴は?
I(社会心理):社会心理学はかなり心理学に寄っていて、あまり社会学との関係が深くない学問という印象です。社会学の中における心理学という、かなり絞った対象を扱うためグラフではこのような位置に配置しました。
Y(教育実践):教育実践は、社会教育学・学校教育学・教育行政学という異なる3つのコースが融合して生まれたコースであるため、大変広い範囲をカバーしています。さらに、教育学部自体のカバー範囲も広く、他学部や他専修の授業を取りやすいという特徴も有しています。以上の2側面が合わさった結果、教育実践が扱う分野は多岐にわたります。
Y(比教社):先ほど挙げていただいたように、教育学部は他学部他学科の授業を取りやすいです。その上、比教社ならではの広がりもあります。例えば、主要な対象の1つである学校にまつわる問題を考えていくには、その背景に潜む家族や労働の問題についても考察する必要があります。この調子で辿っていくと結局は社会全体に対して研究を行う必要が生じる場合もあります。このような観点から、比教社も扱う対象はかなり幅広い学科と言えます。
授業の実態は?
Y(教育実践):教育実践はかなり余裕がある方だと思います。余裕がありすぎて他学部の授業の方が多くなったという人や、多種多様のインターンに参加する人もいます。平たくいうと楽単が多く、必修かつ取得が難しいという単位も特にありません。また、授業内容に関しては概論のような講義から実践、フィールドワークなどがあり、幅広い授業スタイルがあります。
I(相関):相関の授業は、講義と銘打っていても実際は実習という授業がいくつかあったり、学科の人数も少ないため授業中にディスカッションを求められるなど、主体的に参加することが必要な授業が多いです。毎週1冊新書を読まなければならない授業や、英文を毎週20ページ読んで予習しなければならない授業がある一方で、工夫して履修することでスケジュールに余裕を持たせることも可能です。傾向としては、講義系の授業をたくさん取ると楽になる場合が多いです。
O(社学):このグラフの通り、社学は座学から実践までかなり幅広く扱うコースとなっています。必修科目としては座学が多く、社会学の歴史や統計の方法などを学びます。一方、希望者は社会調査実習というフィールドワークのような授業を取ることができ、これは完全に実習よりの授業です。基本的に座学よりですが、希望に応じていくらでも実習よりの内容に触れられるという印象です。必要単位数は比較的少なく、他学部の授業も好きなものを色々取ることができます。その意味で、スケジュールの余裕はそれなりにある学科かと思います。
質疑応答
Q1.学科全体の雰囲気はどのような感じでしょうか?イベントや交流機会の有無、教授や学科メンバー(同期/上下)との繋がりなどに関してもお願いします。
A1.
I(社会心理):学科の人数は20人で、和気藹々とした雰囲気です。コロナウイルス流行後に進学したメンバーなのでイベントや交流はさほどありませんが、一緒に授業を受けている際に助け合う機会は多いです。教授とのつながりに関しては、1人の教授が担当していらっしゃる複数の授業を受講する際に顔を覚えてもらったり、演習授業というインタラクティブな授業でお話をしたりする機会があるためそれなりに強いかと思います。また、学科確定後に先輩方が説明会を開催してくださいましたので、上下のつながりもそれなりにあります。
I(相関):相関は毎年8人しかおらず、圧倒的に少人数です。みんな違う方向を向いており、切磋琢磨というよりはそれぞれ勉強していて和気藹々としている、という感じです。コロナウイルス流行前の二年生の頃は上下コンや、国際関係論の人たちと合同でのクリスマスパーティなどを開催していました。どうしてもコース科目をたくさん取らなければならないため、同じ教授の異なる授業をいくつも取ることになり、顔を覚えてもらいやすいので教授とのつながりは強くなると思います。また、国際関係論の人たちと合同で使える部屋があり、院生の方々もいらっしゃるためその気になれば様々な人と深いつながりを作ることができると思います。
T(社学):社学の人数は50人と、圧倒的に多いです。これだけの人数がいると、本気で勉学に打ち込む人もまったり過ごす人もいて、切磋琢磨よりは和気藹々という雰囲気です。コロナウイルス流行以前の話になりますが、学科コンとしてみんなでご飯に行く事もありました。教授とのつながりはゼミを主として形成されます。学科メンバーとのつながりは、TAセミナーという文献を少人数で講読する機会であったり、ゼミなど少人数での授業の際に形成されます。また、実習系の授業に伴うグループワークなども大切な機会です。
Y(教育実践) : 教育実践は27人程度からなるコースです。絶対数で見ると少人数ですが、教育学部の中では大きめのコースです。学生同士の交流機会は、やはりコロナウイルス流行の影響により減少しましたが、学科の控え室により今でもある程度の交流は可能です。教授とのつながりは主に卒論を書くゼミで形成されます。もちろん授業中に顔を覚えてもらえる事もあります。
Y(比教社) : 比教社は、先ほどのYさんが所属する教育実践よりも少なく18人からなるコースです。学年にもよりますが全体として和気藹々とした雰囲気です。コロナウイルス流行以前は対面で行われていた行事、例えば比教社全体のコンパなどが今年度はオンラインで行われました。このコンパは先輩も含めた合計50人前後が参加し、この通り縦のつながりがそれなりに強いです。また、人数が少なめなので同じ教授の授業を何回も取って顔を覚えてもらう機会も多いですし、先ほどから挙げられているように学科控え室による交流の機会も大切です。最後に、比教社の特徴として調査実習が挙げられます。これは、みんなでアンケート調査を作り、分析をするという必修の授業なのですが、この活動を通して共同体としての意識が強まります。
Q2.全額交換留学に行く学生の割合はどれくらいですか?その他、短期留学や国際ボランティアなど、国際志向のある学生が多いかどうかを知りたいです。
A2.
Y(比教社):そこまで多くはありません。しかし比較教育というと国際比較が視野に入ってきますので、希望する人もいます。私の学年はそのような人が多く、18人中3人が留学待ちをしていました。
司会(相関) : 国際関係論と関わりの深いコースだからか、国際系に目を向けて留学に行く人が多いです。
Q3.各学科で面白い先生や好きな授業があれば教えてください
A3.
O(社学):白波瀬 佐和子先生のゼミに所属しているのですが、卒論などに対してもズバズバとご指摘やアドバイスをくださいます。そのいずれもすごく示唆に富んでいて、とても勉強になります。社会階層論が専門の方で、ジェンダーや貧困に関心がある人におすすめです。
I(社会心理) : うちの学科の話、というわけではないのですが心理学系の学科はみんな同じように受ける授業があります。岡田謙介先生の統計の授業なのですが、この授業は教育学部や文学部も含めたあらゆる心理系学科が合同で受講します。
Q4.文転された方はどのくらいいらっしゃいますか
A4.
Y(比教社):1人、2人程度です。いなくはないという感じですが決して多くはありません。社会学系は統計をかなり使いますので理系との親和性は高いかもしれません。
Q5.ゼミの雰囲気や課題の量、さらに卒論について伺いたいです。
A5.
Y(比教社):比教社の特徴として、ゼミに関するルールがかなり自由な点が挙げられます。3年生のAセメスターからゼミに仮所属し、4年生から本所属になります。同時に指導教員を決めて卒論を書くという流れですが、指導教員のゼミとは異なるゼミに参加しても構いません。卒論に関しては、みんな4年生の6月くらいにテーマを決め、アンケート調査やインタビュー調査など、何かしらの調査を元に論文を書くケースが多いです。およそ30〜50ページ程度が目安です。
O(社学) : 社学のゼミは3年生次と4年生次で指導教員を変えることができます。その上、サブゼミという制度があるため、第一希望に通らなかったとしても希望していた先生のゼミには必ず所属できる仕組みになっています。卒論に関して、字数制限がかなり厳しく8万字以上となっています。テーマはかなり多様で、社会学者の理論に関する論文を書く人もいれば、身近な漫画や、あるいはジェンダー、LGBTなどに関するテーマを設定する人もいます。
I(相関) : 相関は、ゼミという概念があまり存在しておらず、演習の授業を取ったらそれがゼミみたいになっているという感じです。課題量は授業によってまちまちです。卒論の制度は、4年生になった4、5月くらいにコース長と面談し、政治・経済・社会どの分野を選びたいかということや、どういったものを書きたいのか、などを伝えるとコース長に指導教官を割り当ててもらえるというシステムとなっています。8万字以上の卒論を要求する先生もいると聞きましたが、先生によって重さはまちまちです。
Q6.相関の卒論にはどのようなテーマが挙げられますか?
A6.
I(相関):僕は政治系で書き、テーマは自由民主党の派閥制度がどうなったかといった感じです。
司会(相関):僕は社会学系で書くのですが、社会学か政治学の領域であれば割となんでもテーマとして認められると思います。
Q7.社学と相関ですごく迷っています。
A7.
O(社学):私自身も相関とすごく迷いました。私は社会学がやりたいと心が決まっていたので、相関が政治学や法律なども含めた社会科学全般を扱う一方、社学は社会学に絞っているという点が決定打となりました。また、ゼミ制度が相関よりもしっかりしているという点も魅力の一つだと感じました。
I(相関) : Oさんの仰った通り、ゼミ制度は確かに社学の方がしっかりしています。僕は最初、社会学がやりたいと思って相関に入ったのですが、入ってみてから政治に関する事もできるのだと知りました。その意味で、まだ進路を決めかねている人にはお勧めできる学科だと思います。ただ、いずれかのタイミングでしっかりと進路を確定させる必要はあります。
Q8.心理学系等の3学科である心理・社学・社会心理で迷っています。取ることのできる授業やゼミ、教員に違いはありますか。
A8.
I(社会心理):心理と社会心理はかなり近いです。必修授業を一緒に受ける事もあり、取ることのできる授業もかなり似ています。しかし、ゼミや卒論は各学科の先生に担当してもらいます。共通して言えることとして、上記の3学科はいずれも文学部の学科であり、文学部の授業は共通して取ることができるため、学ぶ内容はいずれも似ています。
T(社学) : 社学は必修があまり多くないため、色々な授業を自由に取ることができます。そのため心理系のことを深く勉強する事もできます。社学の授業では統計学を頻繁に活用するという強みがあり、その点で他の2学科とは異なるかもしれません。
Q9.各学科では、どのくらい他学部履修が可能ですか?
A9.
Y(教育実践):教育学部全体として言える事ですが、他学部聴講はかなりしやすいです。必修の単位数もすごく少ないため、例えば僕は法学部で開講されている政治系の授業を取っています。周りにもそういった人は多いですね。
T(社学) : 社学も必修が少なく、かつ32単位まで他学部履修による単位が認められているため、他学部履修はかなりしやすい方かと思います。
I(相関) : 他学部履修は12単位までしか許可されておらず、卒業単位に加算されない場合を考えて受講する必要があります。
Q10.社会学だからこそできる事は何かありますか?
A10.
O(社学):あくまで私のイメージですが、社会学という学問自体を学ぶというよりは、何か解決したい社会的課題に対し、統計学や経済学、文化人類学など様々な分野から得られた知見を駆使してアプローチする学問こそが社会学であると考えています。その意味で、こうした分野横断的なアプローチは社会学ならではのものかもしれません。
Q11.卒業後の進路について伺いたいです。
A11.
Y(教育実践):教育実践のみならず教育学部全体に対して言える事ですが、先生になったり教育系の道に進もうとする人が全てではありません。コンサルやメーカーに内定をもらう人もいますし、僕自身は公務員を目指しています。教育実践も比教社も、卒業後の進路はとても幅広いです。
T(社学) : 院進する人も一定数いますし、就職する人もかなりの数います。就職先に関しては広告やコンサル、インフラや金融まで幅広いです。
分野を横断して学科を比較することで、より自分が興味のある学科を絞り込むことができると思います。学科のパンフレットを見るだけではなく、研究室のホームページを見たり教授にコンタクトをとったりするのもおすすめです。後悔のない進学選択を応援しています!