この記事は、6月14日開催、【UT-BASE主催】進振り相談会2022」社会分野のイベントレポートです。進学選択に悩む1,2年生に向けて、各学科に進学された先輩が学科の内容から将来の進路までお答えします!
「自分の興味のある分野の人に話を聞いてみたいけれど誰に相談すればいいのかわからない...」
「そもそも〇〇学科って何するところなの?」
「学科のパンフレットだけではわからない、雰囲気やホンネを知りたい!」
そんな疑問にできるだけお答えできるよう検討し、国際/社会/経済/人文/心理・認知/化学/情報の7分野の先輩をお招きして相談会を開催しました!
今回は社会学分野の紹介です。UT-BASEの学科紹介記事や、昨年度のイベントレポートとも合わせてぜひご一読ください。
登壇者紹介
KKさん
・文科二類→教養学部相関社会科学コース、以下「相関」
・興味分野:社会学理論、障害学、現代思想
・迷った学科:経済、文学部社会学専修
・将来の進路:大学院進学を予定
KTさん
・文科一類→教養学部相関社会科学コース、以下「相関」
・興味分野:社会福祉、家族社会学、福祉国家論
・迷った学科:文学部社会学専修、教養学部国際関係論コース
・将来の進路:大学院進学を予定
Nさん
・文科三類→教育学部比較教育社会学コース、以下「比教社」
・興味分野:社会学、教育学、防災教育、観光地域づくり、地域創生、民藝
・迷った学科:建築、文学部社会学専修
・将来の進路:民間就職予定
Yさん
・文科三類→教養学部国際関係論コース、以下「国関」
・興味分野:人間の安全保障、内戦、平和構築
・迷った学科:教養学部地域文化研究文科
・将来の進路:大学院進学を予定
Mさん
・文科三類→文学部社会心理学専修、以下「社会心理」
・興味分野:心理学全般、特に集団心理、感情心理、臨床心理、教育社会学
・迷った学科:文学部心理学専修、教育学部教育心理学コース、比教社
・将来の進路:未定
Hさん
・文科三類→文学部社会学専修、以下「社学」
・興味分野:計算社会科学、メディア論
・迷った学科:特に迷わなかった
・将来の進路:大学院(修士)進学後、就職予定
寄せられた質問&回答
Q1.社会福祉や障害学を学ぶときに文学部の社会学でなく相関社会学科を選ばれたのですか。
A1.
KKさん(相関):学科を決めるときに社会学以外のところもやりたかったっていうのがあります。相関社会科学って言われてるぐらいなので、他の社会科学に関係する分野も一応できることにはなっています。僕が特にやりたかった社会学以外の学問には政治哲学があり、そこもしっかり勉強したいなと思っていました。障害学との関連でいうと政治哲学的に例えば、より公正な分配のあり方のように、規範的にどうあるべきかっていうのを考えながら、社会学をやりたいなっていうふうに思ったので、相関に決めました。入った後での理由になりますが、市野川容孝先生という日本の医療社会学・障害学の第一線にいる方がいるので相関社会学を選んだというのもあります。
KTさん(相関/司会):KKさんは事前に別の分野をやりたいから相関社会学を選ばれたんですね。社会福祉関連で私も多少お話させていただくと、私もKKさんと似ていて社会学だけではなく、社会学以外の分野も攫いたいなというふうに思ったことがきっかけです。福祉政策とか勉強するときに福祉国家レジーム論という理論があのですが、それは社会学というよりも社会政策学の方に寄った議論です。社会福祉を学ぶにあたり、政治学や社会経済学なども勉強しておかないと議論できない分野だと思うので、私は相関を選びました。ちなみに文学部社会学専修で社会学以外の分野を学ぶことは可能なのでしょうか。Hさんいかがですか。
Hさん(社学):まず、社会学自体が経済学や法学と異なり、縦にトピックごとに分かれているというよりは、社会学的なものの見方を持って様々な分野の知識をつまみ食いする学問と言われます。そもそも社会学自体が他の学問との建設をどんどんやっていこうみたいな学問ではあるので、そういった意味での社会学だけでもかなり色々なところと繋がりあります。また制度として取らないといけない単位が70くらいあるのですが、そのうち3分の1が社会学の必修、3分の1が卒論、3分の1が他学部履修になっています。この他学部履修のところでかなり潤沢に授業取ることができるので、ご自身の興味に合わせて好きなものを取れるとは思います。
KTさん(相関/司会):ありがとうございます。他学部履修がどれだけできるかは社学と相関でだいぶ違っていて、今おっしゃった通り社学は3分の1ぐらい他学部の授業が取れます。ですが相関だと他学部履修が12単位までしか単位換算されないので、実質なんか6コマぐらいしか他学部の授業は取れないっていうことにはなります。相関の中でも色々な科目が開講されてはいますが、他に本郷の授業を履修したい方は、時間割を調整しないと難しいかもしれないですね。
Q2.社会学を勉強したいのですが、相関と社学、比教社での社会学の扱われ方教えてください。
Nさん(比教社):これに関して2つお話しようと思います。比教社はやはり教育学に所属しているので、社会学ど真ん中というよりは、文献とか授業で扱うものとしては、社会・文化・教育の関係についてが多いです。ただ、卒論のテーマは教育に関連していれば何でもありなので、社会学をしっかりされたい方なら教育に寄せられるテーマであれば、幅広く受け入れられと思います。社会学の使われ方は、一応教育学に属しているので、教育の規範を考える立場から社会と教育を考えるというような考え方と、社会学者的な立場から教育を実証的に捉えるっていうという2つが割と混ざっているような感じです。社会学の捉え方はざっくりそんな感じなんです。ただデータを用いて質的な社会学の質的手法を学びたいのであれば、一番手厚く面倒見てもらえるのは比教社ではないかなと思っています。文学部社会学専修にも同じく社会調査の授業がありますが、そちらは質的調査ではなく、質と量の半分半分を学ぶ感じです。また必修でもないので、時間をかけてデータ分析の手法を学びたいのであれば、比教社は向いていると思います。
KKさん(相関):社会調査の授業は開講されています。先ほど挙げた市野川先生は社会調査、特に量的調査全部を広く扱っていますし、あとは統計の授業もあります。ですが手厚くくサポートしてくれるかっというと、特に統計のプログラミングは、結構自分でやらなきゃいけないところもあるのかなという気はします。社会調査以外の理論であれば、基本的に、必修の授業でアメリカ社会学の教科書を読む授業があったり、日本の社会学者の有名な論文などを読む授業であったりします。他には例えばジェンダー、社会階層、組織などの分野の文献を読む授業もありますね。
KTさん(相関/司会):データ分析やプログラミングなどの授業は、各セメスターに1コマぐらいは開講されています。社学の方ではいかがですか、Hさんお願いします。
Hさん(社学):社会調査についてお伝えすると、2年のAセメスターに持ち出し科目として社会調査という科目が必修であります。僕のときは量的な調査だったのですが、そもそも社会調査の心構えというか、社会調査の基本的な概念は本質的なものでも量的なものでも大して変わらないのです。3年生になると2コマ質的調査の授業が開講されているのですが、こちらは必修ではなく自由選択になっています。社会調査ときの量的質的というのが大きく分かれるとは思いますが、今年着任された社会学の先生で計算社会科学という、Twitterの言説を丸ごと読み込ませるみたいな調査手法もあります。そうしたデータサイエンスの方の調査も今は正式なコマでありませんが、先生が個人的に行っている勉強会で学ぶことができます。社会学については、理論はもちろん必修で学びますし、実践的な研究例とかも見ます。個人的に社会学専修の特徴の一つだなと思うのが、ゼミに入り、そのゼミで8万字の論文を書くことだと思います。ここで実際に社会学的なものの見方を手に入れた上で、実際に社会を見てみようというところまで行います。ゼミの先生と一対一ではないのですが、結構少人数のゼミで密にご交流を持って論文を書き上げていくので、そういった点が社会学の独特で魅力的な点かなと思います。
Q3.教職を取るつもりなのですがどれくらい忙しいんですか。
Mさん(社会心理):そもそも社会心理自体そこまで必修が多くなんです。私の場合は演習を2つ取ってしまったせいで週に5つ授業があるのですが、それ以外基本的に自由なので、木曜日と金曜日に集中して教職科目を取るみたいな形にしています。私は教職で忙しいと思ったことはないですが、ただ少し教職の科目を取ってしまうと、他の取りたい科目が取れないというジレンマは感じています。
Nさん(比教社):逆に私は今(3S)必修が多くて教職の授業はあまり入れられていないので、今はそんなに忙しくないです。ただ今必修が多くかつ2年のうちに先取りして取ってたわけでもないので、3A4Sまでかなりの授業を残しています。そのあたりがちょっと忙しくなるかなという感じはしています。特に課外活動をたくさん掛け持ちしている人や、バイトがたくさん入っている人は忙しくなるかもしれないです。
Q4.社会心理学は実験レポートをはじめとして課題が多いと聞いたのですが、どれくらい課題は出ますか?
Mさん(社会心理):3Sは演習を2つ取ったので、そこそこ負担は重いです。でも、1つだけだったら、1セメスターあたり2回発表をやるだけなので、そこまでしんどくはないと思います。ただ、2A セメスターは大変です。毎週実験のレポートを5000字以上書くことになるので、その負担は思いです。また、Aセメスターで調査実習があり、週に十数時間その課題をやっていました。
Q5.交換留学に行く場合、どの時期に行くのが普通ですか?
Yさん(国関):国際関係論コースだと、3Aから4Sの1年間で行く人が多いです。一年学年を遅らせて(留年して)留学する、つまり、4Sに帰ってきてから4A、5S、5Aという形で一年半大学で勉強する人が多いです。国際関係というだけあって、半分くらいの人が留学に行きます。4年生から留学することを考えている人も数名います。
KTさん(相関/司会):確かに相関コースにも3年生から行く人だけでなく、4年生から留学する人もいます。社学はどうですか?
Hさん(社学):社学は留学に行きにくいです。なぜかというと、SセメスターAセメスター連続してゼミに入る必要があり、そのなかで論文を書く必要があるからです。ただ、実際に留学に行く人は数名います。留学に行く場合は、3Aから4Sの1年間で行く人が多いです。
Nさん(比教社):留学は2年生後期に行って3Aから合流するパターンが一般的かと思います。北欧に行く場合が多いです。卒論を終わらせてから行く選択肢もあります。
Mさん(社会心理):把握している限りだと、留学に行く人は2人います。Sセメスターに一個、Aセメスターに1個演習を取る必要があるので、留学した場合は3年生をもう一度やることになると思います。
KKさん(相関):僕自身も留学します。来年の6,7月に帰ってきて、国関のみんなと同様、一年間延長して卒業する予定です。
Q6.進振りではどれくらいの成績が必要でしたか?
Hさん(社学):例年77点位が必要と言われています。科類の差はそこまでない印象です。
Yさん(国関):国関と相関は同じ進振り枠です。結構レベルの高い戦いが繰り広げられている印象です。80点後半あると毎年絶対大丈夫という感じです。80点前半台だと、第二段階ではいけると思いますが、確実に行きたい場合は80後半あると安心です。第一段階と第二段階でかなり底点が変わるため、第一段階で諦めなくてもよいかもしれません。
KKさん(相関):文一・文二と文三だと状況は違うと思います。文三だと第一段階で80点台後半を要求されるかもしれませんが、文一・文二だと、83,4,5くらいあると第一段階で進学できると思います。
KTさん(相関/司会):今年だと、第二段階後半で70点台後半で行けたということも小耳に挟んだことがあるので、そこまで構える必要はないと思います。
Nさん(比教社):比教社だと、平均は70点台後半から80あたりで、底点は60後半でも受かったという話も聞いたことがあります。
Q7.卒論はどの学科も同じくらいのヘビーさですか?
Nさん(比教社):分量はそこまで多くはないと思います。忙しさのピークも4年後期になります。先生によってはかなり丁寧に面倒を見てくれると思います。4年からゼミに所属してそこで卒論も指導して貰う形になります。3年のうちからいろんなゼミを覗いてどのゼミに所属するか考えておくと良いと思います。
Mさん(社会心理):4年の最初に各先生の研究分野の紹介があって、そのあとでどのテーマでやるか、どの先生が指導教官になるかを決めます。社会心理は卒論以外にも特別演習というものがあって、それだけでも卒論書かずに卒業できるが、みなさん卒論を書いて卒業する方が多い印象です。
Hさん(社学):社学はたぶん一番卒論が大変な学科だと思います。8万字(新書一冊分くらい)を書くことがほぼ義務付けられていて、取り組み始める時期は3年、4年でゼミに入った頃です。ゼミ論を2万字〜3万字くらいで書く機会があり、それらを発展させる形で卒論を書くことになるので、かなり早い時期から卒論について考えることになると思います。社会学のなかで問いを見つめて自分で答えていくということが大切にされています。社会学全体で卒論をものすごく推しています。オムニバス形式で先生方の専門分野を知る授業もあります。
Yさん(国関):分量はかなり多いと思います。卒論の単位数が10あるので、かなり重要で、しっかりと先輩が書いている印象です。4年Sセメ以降は授業を減らして卒論に集中する人が多い印象です。国関と相関は研究室に配属されるのではなく、一人の指導教員の先生を選んで卒論指導していただく感じです。周りの学生も卒論モチベ高めな印象です。
KKさん(相関):3年生のうちに卒論について学部から卒論について指示されることはないと思います。4年生の5月くらいに卒論についての説明会があり、6月くらいまでに指導教官が決まる形です。1月中旬くらいに最終稿の提出という形になっています。4S、4Aで卒論をメインに書く印象です。うわさでは最低6万字と言われています。
KTさん(相関/司会):特に相関の場合は、履修の自由度が高いので、自分でテーマを決めて3年生のうちから勉強しておかないと、1つのテーマについて深堀りした論文を書くのはなかなか大変だと思います。
Q8.国関で学ぶことのできる社会学の特徴を教えていただきたいです。
Yさん(国関):社会学研究と計量社会学研究が国関のコース科目として開講されています。このようにオフィシャルに社会学の授業が開講されています。教養学部は他のコースの科目も取れるので、国関メインで相関の授業などを履修することもできます。国際に軸をおくか、社会科学系に軸をおくかで、国関、相関のどちらにするかの決断で重要になってくるかと思います。
KTさん(相関/司会):国関で開講されている社会学の授業は、社会階層論、計量社会科学研究、組織論の授業などが国関のコース科目として開講されています。
Q9.都市工学、都市経済学、観光学など実生活に即したテーマに歴史、科学、文化、経済など幅広く学問知識を使って研究をしたいと思っているのですが、そのようなことは社会学部でもできるのでしょうか?
Hさん(社学):学問単位ではなくて、実生活に即した具体的な問いがあるのならば(例えば都市における交通と社会の関係など)、社会学を使いながら歴史や文化も含めいろんな視点から捉えて研究していくということが可能だと思います。ただ、都市経済学をやりたいのであれば、少し大変かもしれません。問いがあることが何より社学を検討する上で重要だと思います。
KTさん(相関/司会):補足させていただきます。都市社会学のような分野も社学のゼミにあると思います。
Q10.社会調査というよりも教育問題に関心がある場合、比教社ではなく他の教育系の学部に行くほうがよいと思われますか?教育の中でも扱われるテーマが限定されるのでしょうか。
Nさん(比教社):比教社は、比較教育学、教育社会学、高等教育学あたりを含むので、そこに収まる感じだと問題ないと思います。学科同期だと、地方と都市圏の学力格差やジェンダー関連に興味がある同期が多いです。教育について哲学的に考えたいなどあれば他の教育系の学科でもいいかもしれないです。
Q11.比教社も社会学も、量的調査や統計学が必修という感じですか?
Hさん(社学):2年のAセメスターに、社会調査実習という持ち出し科目があり、量的調査を中心に社会調査を学べます。それ以外には統計は必修ではないです。
Nさん(比教社):同じく調査実習が週2コマ必修で一年間あります。Rという統計ソフトの使い方を勉強できる必修の授業もあるので、だいたい3コマが統計で必修の授業になります。
KTさん(相関/司会):時間になりましたので、以上でQ&Aを終了します。UT-BASEの学部学科紹介にもたくさんの情報が載っているので、もし良ければそちらの方もぜひご参照ください。最後に登壇者の方々から1,2年生に向けて一言ずついただきたいと思います。
Nさん(比教社):進振りでいろんな学部で迷いました。本を読んだり人に聞いたりして興味を深めた体験は今も役立っていると思います。ちょっと興味ある学科でもいろいろ調べてみるといいかなと思います。うまくいくことを祈っています。
Mさん(社会心理):進振りですべてが決まるわけではないと思います。進学先の先生がどのような分野を専門にされているか、調べてみるのもいいかなと思います。
Hさん(社学):社会学はいろんな先生がいろんなことをされているので、先生のゼミを見てみるなどして自分の興味と合っているか見てみるのもいいと思います。
Yさん(国関):教養学部は授業の幅がほんとに広いので、色んな分野に興味のある人におすすめです!いろいろつまみ食いできるので、学際に興味がある方は教養学部があっていると思います。
KKさん(相関):行きたい学部の先生をちゃんとチェックしたほうがいいと思います。教養学部だと、他のコースも勉強できます。進学後も他学部履修はできるので、肩肘貼りすぎる必要はないと思います。
分野横断ごとに学科を比較することで、より自分が興味のある学科を絞り込むことができると思います。学科のパンフレットを見るだけではなく、研究室のホームページを見たり教授にコンタクトをとったりするのもおすすめです。後悔のない進学選択を応援しています!