「【UT-BASE主催】進振り相談会2022」化学分野イベントレポート

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この記事は、6月13日開催、【UT-BASE主催】進振り相談会2022」xx分野のイベントレポートです。進学選択に悩む1,2年生に向けて、各学科に進学された先輩が学科の内容から将来の進路までお答えします!

「自分の興味のある分野の人に話を聞いてみたいけれど誰に相談すればいいのかわからない...」
「そもそも〇〇学科って何するところなの?」
「学科のパンフレットだけではわからない、雰囲気やホンネを知りたい!」
そんな疑問にできるだけお答えできるよう検討し、国際/社会/経済/人文/心理・認知/化学/情報の7分野の先輩をお招きして相談会を開催しました!

今回は化学分野の紹介です。UT-BASEの学科紹介記事や、昨年度のイベントレポートとも合わせてぜひご一読ください。

登壇者紹介

NHさん
・理科二類→理学部生物化学科、以下「生化」
・興味分野:分子生物学全般、創薬、医療倫理
・迷った学科:薬(薬)、化学生命工学(工)
・将来の進路:院進

Uさん
・理科二類→工学部化学生命工学科、以下「化生」
・興味分野:有機化学、構造生物学
・迷った学科:農学部
・将来の進路:おそらく院進

NAさん
・理科二類→工学部マテリアル工学科、以下「マテ工」
・興味分野:バイオマテリアル、ナノ医薬
・迷った学科:化学システム工学科(工)
・将来の進路:院進

Hさん
・理科二類→薬学部、以下「薬」
・興味分野:分子生物学
・迷った学科:マテリアル工学科(工)
・将来の進路:院進

SSさん
・理科二類→工学部化学システム工学科、以下「化シス」
・興味分野:エネルギー問題、環境問題
・迷った学科:システム創生学科(工)
・将来の進路:院進

SAさん
・理科一類→工学部化学システム工学科、以下「化シス」
・興味分野:化学工学
・迷った学科:精密工学科(工)
・将来の進路:院進

Mさん
・理科二類→教養学部統合自然学科物質基礎科学コース、以下「物質」
・興味分野:量子力学、バイオナノテクノロジー
・迷った学科:精密工学科(工)
・将来の進路:院進

寄せられた質問&回答

Q1.それぞれの学科のカリキュラムについて教えてください。

A1.
Hさん(薬):薬学部は生化と似ているところがあり、応用というより基礎研究の研究室が多めです。しかし、薬学部と言うだけあって、最終的に医療/創薬につながる研究がほとんどです。時間割としては毎日必ず3コマ以上埋まるイメージで、午後の実習は実験が全て完了するまで帰れないため、バイトのシフトなどは調節しにくいかもしれません。

NHさん(生化/司会):なるほど、確かに生化の授業も基礎研究が多めですが、医療への応用に主軸を置いているというより生物の機構そのものに迫るような内容が多いため、確かに薬学部とそこで差別化されているのかもしれませんね。

NAさん(マテ工):マテリアル工学科はコースが3つあり、Aコースがバイオ系、Bコースは金属、Cコースは半導体という内容になっています。各コースの必修が少ないため、授業はみんな同じように取ることができます。2年生の時に、マテリアル工学科概論という授業があるのですが、そこで生命との関連に興味を持ちました。マテ工は実際の研究に触れるきっかけとなる授業が多く、その授業もそうしたものの一つでした。

Q2.工学部の化学生命工学科と薬学部で迷っています。両者の雰囲気、授業内容、良いところ悪いところを比較して教えていただきたいです。

A2.
Uさん(化生):化生に所属しているのですが、今学期は薬学部の授業もいくつか受講しています。その時に感じたことをお伝えすると、雰囲気自体はどちらの学科もよく似ています。人数自体は薬学部が80人前後と化生の倍ほどいますが、男女比など、その他のポイントはかなり似通っています。化生の良いところとしては、核酸医薬だったり、薬学に関してもかなり応用的な研究に触れられる点ですが、悪いところとしては、薬学に特化した授業があまりないという点が挙げられます。

Hさん(薬):薬学部は全体で80人ほどですが、学科が二つしかありません。そのうち6年制の薬学科は定員が8人で、狭き門ですが、薬剤師の国家資格を取るにはこちらの学科に進学する必要があります。薬学部のいいところとして、授業が生物学と化学に特化しているため、これらの分野を学びたい人にとってはぴったりだと思います。化生の授業は化学寄りで、生化は生物寄りだとよく聞きますが、どちらも勉強したい方にはうってつけです。しかし逆に言うと、どちらも必修として勉強する分履修に融通がきかず、他学部履修などはあまり現実的ではありません。

NHさん(生化/司会):いまご指摘いただいた通り、生化は生物学によっているとのことですが、これは本当にその通りです。所属する前は、生物も化学もどちらもやるのかなと思っていたのですが、蓋を開けてみると分子生物学三昧で、分子生物学科に名前を変えた方がいいのでは?と思います。しかしもちろん、分子生物学をやる上で化学や物理の素養も必要になってくるため、完全に生物学だけというわけではありません。

Q3.有機化学に触れるにはどの学科が適しているでしょうか?

SSさん(化シス):ちょうど有機化学IIIという授業をとっているのですが、工学部の化学系3学科は有機化学I~IIIの授業がおすすめ授業として指定されており、これらの学科であればどこであっても有機化学に触れられるのかなという感じがします。有機化学関連分野の研究室も、どの学科にもあるため、有機化学の中でもどのような分野に興味があるのかによって選ぶといいかと思います。

Mさん(物質):2年生の時にゼミで有機化学の講義を受けました。そこでクロスカップリング反応など、種々の合成反応について学べましたし、研究室も有機化学に関連するものが豊富にあります。

SAさん(化シス):SSさんがおっしゃった通り、確かに化生系3学科では有機化学I~IIIを受講できますし、有機化学に触れることはできるのですが、ただ本当に興味分野が有機化学に固まっているのであれば、化生系3学科よりも適したところがあるような気がしています。化シスの場合、応用する上で必要な知識を教養として幅広く学び、その中に有機化学も含まれている、というくらいのイメージを持っています。

Hさん(薬):ちなみに薬学部には有機化学I~VIまであります。ただ、これらはターム制の授業ですので、分量としては化生系3学科の有機化学I~IIIと同じくらいだと思います。

Q4.理学部化学科について教えてください。

化学科の方への取材結果:まず進振りの点数についてお伝えすると、僕の代では60点台でも進学できました。底が割れることもあるので、必要単位数さえ抑えていればそこまで心配しなくても大丈夫かと思います。駒場の構造化学レベルの数学はある程度把握しておくことが望ましいですが、それ以上の数学に関してはどういった分野を志望されるかによります。ちなみに僕は物理有機化学を専門としているのですが、分子の挙動を解析する際に数式や行列を使ったりしますし、分子の対称性を議論する上では点群を理解しておく必要があります。ただ、合成が大半のため、普段はあまり数学に触れていません。また、他の学科との相違点に対しても触れておくと、理学部化学科は、理学としての化学、すなわち「ものの理を見出す」ことを目的としています。工学部の化学は実用性を、薬学部の化学は創薬を意識していることと対比させて考えるといいかと思います。また、理科の教員免許を取得したい方は、理学部か農学部に進学することを強くお勧めします。

Q5.工学部の化生系3学科で学べることの違いを教えていただきたいです!

Uさん(化生):化シスと応化と合同で授業を受けることがかなり多いのですが、3Sになってから少しずつ分かれてきたかなと思います。3Sの化生では分子生物学を重点的に勉強しており、僕もそうなのですが、そこからさらに他学部履修によって生物系の授業を履修する人が多いです。有機化学を志している人が半分、もう半分はバイオ系を志していると考えると良いかと思います。

SAさん(化シス):Uさんもおっしゃった通り、化生系3学科は取る授業が8割ほど似通っています。限定選択科目という、卒業単位数に一定の数以上含めなければならない授業があるのですが、それがかなりの数被っています。もちろん、学科別の限定選択科目もあるのですが、時間割さえ合えば他の学科からも履修することができますし、学べることの違いを判断材料にはしにくいと思います。入ることのできる研究室を判断の軸にするのがお勧めです。

Q6.東大で博士課程への進学を考えていらっしゃる方はおられますか?

Mさん(物質):一応考えてはいます。研究室はそれなりに豊富にあるため、選択肢の幅は大きいのかなと考えています。

NAさん(マテ工):私も考えてはいます。先生方も、「絶対D進してほしい!」という感じではないため、自由に検討することができています。

Uさん(化生):研究室配属の後で考えようかなと思っています。教授からは、博士課程進学のメリットもデメリットもどちらも伺っているので、それらを踏まえた上で考えたいです。

NHさん(生化/司会):博士課程進学の際の留学についてですが、生化の先生方にはかなり海外推しの先生も、国内推しの先生もいらっしゃって、本当に人それぞれだなあと痛感しています。

Q7.薬学部の課題の量、実験レポートの大変さを教えてほしいです。

Hさん(薬):2Aは実習がなく、課題もそこまで多くありません。ターム末の試験が重いくらいですが、予習復習をきっちりやろうとすると大変です。それ以降は、研究室ごとで持ち回りとして行われる実習が始まります。これは6日周期のローテーションなので、レポートもその度に課されます。レポートは大体20ページくらいで、提出までの猶予は3週間程度なのですが、一度貯め始めてしまうと本当にキツくなります。

Q8.薬学や化学生命を学びたいと考えているのですが、高校では物理選択で生物系の知識がありません。学部に進むまでに何かしら自分で勉強した方がいいのでしょうか?

NAさん(マテ工):私も物理化学選択でした。基本的に前もっての勉強は必要ないかなと思うのですが、生物学用語の英語バージョンをいくつか知っておくと入った後の勉強がスムーズになります。生命系学科に進んだ他の先輩も大丈夫だよとおっしゃっていました。ちなみに、バイオエンジニアリング専攻という専攻が大学院にあるのですが、院試で生物が課されないようになったと聞きました。

SSさん(化シス):高校までで学んでいたことと、大学に入ってから学ぶことは、例えば同じ「化学」という名前であってもかなり異なっています。これまでは物理学だと思っていたことを、化学としていまの学科で習うこともあります。その意味で、高校で何を勉強し、何を勉強しなかったのかを気にする必要はあまりないのではないでしょうか。

Q9.物理と化学を同じくらい勉強できる学科はどこがありますでしょうか。

NAさん(マテ工):2Aで開講される量子力学や、色々ある金属系の授業、さらに固体物理の授業を取っている人がかなり多いです。固体物理は金属や半導体など、原子同士の構造を決定していくような学問で、量子力学や統計力学を基盤として考えています。また、熱力学も2A、3Sでしっかり勉強します。

Q10.化生や薬学では生物がある程度わかっていないと厳しいですか?

Hさん(薬):薬学部では、2Aの最初に細胞生物学や分子生物学、機能生物学といった授業があります。「細胞の分子生物学」という分厚い教科書をターム制の授業3コマで全て終わらせようとするペースの速さが特徴で、ついていくためには駒場の生物を復習しておいた方が良いです。ただ、他の科目に関しては高校で物理化学選択だったから不利、などといったことにはならないと思います。

NHさん(生化/司会):「細胞の分子生物学」は生化でも使っています。ただ、薬学部の方が分子生物学に特化しているイメージがあり、生化では「細胞の分子生物学」をみっちり勉強するよりも、速やかに最新の研究内容へ授業がシフトするような印象があります。

Uさん(化生):化生はどちらかというと化学を志している人が多いため、かなり初歩的なところから生物学を教えてくれます。ただ、先ほどご紹介いただいた「細胞の分子生物学」も、3Aの終わり頃には全て扱う感じです。僕は全く生物学を勉強していませんでしたが、学部に入ってからの勉強でなんとかなりました。一緒に頑張りましょう。

Q10.進振り前に化学の勉強はどのようなものをしましたか?

NHさん(生化/司会):私は生物物理選択だったため、化学の知識がほとんどなく、しかもそのまま進振りを終えてしまったので、生化に入った最初の頃はかなり苦労しました。その後、みなさんが高校生の頃にやったような参考書を読んで、生物化学に必要な化学の知識を補った感じです。

Hさん(薬):薬学部は有機化学の授業がたくさんあり、スミス有機化学という合計1300ページ程度になる教科書を1セメスターで終わらせます。そのため、あらかじめスミス有機化学を夏休みに購入しておき、少しずつ進めていました。

Q11.材料系を学ぶにはマテリアル工学科が一番でしょうか。

NAさん(マテ工):研究室によってやっている内容がずいぶん違うので、ご自分のやりたい内容と照らし合わせてみるといいと思います。聞いた話では、セラミックスについては応用化学科の方がやっていて、金属と半導体と高分子はマテ工が強いかなと思います。

分野横断ごとに学科を比較することで、より自分が興味のある学科を絞り込むことができると思います。学科のパンフレットを見るだけではなく、研究室のホームページを見たり教授にコンタクトをとったりするのもおすすめです。後悔のない進学選択を応援しています!

最後まで記事を読んでくださりありがとうございました!
最後に1点、この記事を作成したUT-BASEからお伝えしたいことがあります。

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