この記事は、6月8日開催「先輩に聞く!進学選択のリアルとホンネ」建築・まちづくり分野のイベントレポートです。進学選択に悩む1,2年生に向けて、内定者が学科の内容から将来の進路までお答えします!
「自分の興味のある分野の人に話を聞いてみたいけれど誰に相談すればいいのかわからない...」
「そもそも〇〇学科って何するところなの?」
「学科のパンフレットだけではわからない、雰囲気やホンネを知りたい!」
そんな疑問に答えるべく、Twitterのアンケートで特に人気の高かった6分野の先輩を集めて座談会を行いました。
今回は建築・まちづくり分野のダイジェストです。UT-BASEの学科紹介記事とも合わせてぜひご一読ください。
登壇者紹介
Iさん
・理科一類→工学部都市工学科計画コース(以下「計画」)
・興味分野:都市デザイン(広域視点の設計)、子どもの空間認知
・迷った学科:建築
・将来の進路:商業デベロッパー
時間割
Kさん
・理科一類→工学部社会基盤学科Bコース(以下「社基」)
・興味分野:交通、防災
・迷った学科:特に無し
・将来の進路:インフラを扱う企業
時間割
Tさん
・理科一類→工学部建築学科(以下「建築」) [https://ut-base.info/faculties/20]
・興味分野:文化人類学、建築施工など
・迷った学科:社基、都市工、法学部
・将来の進路:院進
時間割
Dさん
・文科一類→教養学部学際科学科A群 地理・空間コース(以下「地理空間」) [https://ut-base.info/faculties/15]
・興味分野:人口移動、観光、市町村合併
・迷った学科:教養学科超域、都市工
・将来の進路:公務員
時間割
Hさん
・理科二類→農学部環境科学資源課程緑地環境専修(以下「緑地」) [https://ut-base.info/faculties/21]
・興味分野:生態系サービス、土地利用
・迷った学科:都市工、社基、農業経済
・将来の進路:院進→公務員など
時間割
Yさん
・理科二類→農学部環境科学資源課程木質構造化学(以下「木質」) [https://ut-base.info/faculties/52]
・興味分野:建築
・迷った学科:建築、都市工
・将来の進路:院進
時間割
Hさん(資料のみ提供)
・文科二類→経済学部 経済学科[https://ut-base.info/faculties/5]
・興味分野:都市経済学
・迷った学科:都市工
・将来の進路:院進(都市工、経済など)
時間割
授業や学生生活の様子
学問の特徴は?
K(建築):座学ももちろんありますが、基本的には設計課題がメインです。部屋とか家の設計から、駅前の開発、公園、図書館の設計とかまで範囲は結構広いです。手を動かして模型を作ったり、図形を引いたりすることが多いので実践に寄っているかなと思います。
Y(木質):建築と似ているところもあるのですが、主たる専門は木材建築の良さの研究ですね。木材に電気を流したり熱伝導率を調べたりする授業が多いです。授業内容が建築と被ることもあります。
司会:木材に特化しているのでしょうか?
Y(木質):一応コンクリートとかも学べます。
I(計画):街区ごとに設計をしていくような研究室、交通や経済を学ぶ研究室、人々のつながり、コミュニティを対象にしている研究室もあって、都市に関することならなんでも、という感じです。一番広いところだと、都道府県単位くらいの規模感になります。
D(地理空間):元々地理学は理学部の学問だったので理論よりです。コミュニティについてはなんでもできるのが特徴です。部屋の設計を専門とする建築出身の先生も1人いて、部屋の内部のスケールを扱うことはできます。
授業の実態は?
**K(社基):どのタームの授業をとってもキツくない先生もいます。例えば、講義を聞いてターム末にレポート1,2本を提出するものもあります。演習は様々ですが、都市計画のようなことをする授業はハードで、授業時間外に自主的にやっていかないといい成果物ができないと思います。
H(緑地):3年のSセメスターに実習が多いです。しかし、時間内にレポートを書く形式です。一つだけ実験課題を自分で進めるのがあるが、大体は時間内に終わります。
T(建築):建築では、設計課題に時間をかけるほどよりいいものができるので、いつまででも作業できてしまいます。でも、実際に手を動かしてやるのは楽しいことです。実験、実習が多くて、古民家に住みながら改修する、という授業もあります。
I(計画):みなさんの話聞いていて、余裕ありにしちゃいましたが人によりますね。座学が楽なので余裕があります。演習は、模型を作ったり都市計画を実際にやる内容です。私は楽しめたので余裕ありとしましたが、授業内には終わらないし、発表前は徹夜連続が当たり前です。それが苦しい人にとってはハードだと思います。
司会:Iさんは卒論大変だった印象がありますが..どういうところが大変でしたか?
I(計画):設計って詰めれば詰めるほどいいものができて、終わりがないから自分次第で睡眠を削る、というところです。
質疑応答
Q1.緑地や工学部都市工学科の環境コースではどのくらい計画系が学べるのでしょうか?
A1.
H(緑地):計画系がどういう意図なのか分からなくて、履き違えていたらすみません...デザインだったら、週に一度、公園、ランドスケープを考える授業がありました。しかし、都市計画をガッツリやるわけではありませんでした。学部の授業が忙しくないので、工学部の授業を受けに行っていました。
司会:他学部他学科の授業を受ける余裕はありますか?
H(緑地):かなり余裕があるというわけではないが、自分で調節できます。都市計画に興味がある先輩も受けていました。
I(計画):計画系の座学はどちらのコースでも選べますが、演習ではできないと思います。環境コースだったら水質を調べる実験が多いと思います。
Q2.建築学科では芸術的なセンスは必要ですか?
A2.
T(建築):なくてもやっていけると思います。もちろん、絵を描ける、立体的な感覚がある、とのは有利ですが、絵の描き方であれば透視図法を学べばいいし、立体も3Dのソフト使うことができるので。建築を見に行ったり、雑誌を眺めたりして、実際のものに触れて磨かれると思います。
司会:今はどういう研究室に入っていますか
T(建築):岡部研究室という意匠系の研究室です。
Q3.興味としては都市より住居なのですが、文系で理系の経験がないので建築は厳しいかな...と思っています。都市工学と建築の対象コミュニティの最小単位はどのくらいでしょうか?
A3.
I(計画):計画では建物単体を扱うことはないです。最小でも、建物2つ+公園の街区を対象にやっていました。ソフト面ではコミュニティを重視します。
T(建築):理系科目の経験がないと厳しいというわけではないです。数学も苦手でも心配はないくらいの数学しか扱いません。
I(計画):計画では暮らしにフォーカスしている先生もいるので、都市工と建築に絞らなくていいと思います。
Q4.文系からでも木質は行けますか?
A4.
Y(木質):木質は理系からしか進学できません。(『履修の手引き』p.107)
司会:もし文系の方で木質に興味があれば院進も考えてみてください。
Q5.それぞれの学部で取れる資格があれば教えていただきたいです。
A5.
K(社基):社基は、授業1コマと、夏休みにある3日間くらいの実習授業をとることで、測量士補という資格がとれます。さらに実務経験を積むと測量士になれます。大体みんな資格はとりますが、測量士として働く人は聞いたことはありません。測量士は試験で取るのは難しいですが、学科で取るのは簡単です。
D(地理空間):建築に関するものはないです。強いて言えば教職でしょうか。
H(緑地):緑地も同じくないです。
Y(木質):卒業すると建築士2級になれます。建築士1級も授業をたくさん詰めればとれますが、受験資格だけです。そこから試験に合格して、実務経験を積む必要があります。建築士を目指したい人は建築学科ですが、建築に行くのが難しいという方は木質というルートもあるということをお伝えしておきます。
Q6.社会基盤は何を扱っているのでしょうか。
A6.
K(社基):鉄道、道路、ダムなどのインフラに加えて、最近では公園なども社会基盤とみなして扱っています。授業の種類は、地盤、コンクリート、橋梁などのAコースの研究室がやっている授業と、交通、景観やランドスケープ、インフラ事業ににおけるマネジメントなどBコースの研究室がやっている授業と、国際プロジェクトがやっている授業があります。
司会:A、B、Cはどのくらい研究室選びに関わるのでしょうか?
K(社基):工学部の必修が2種類あるので、その枠が変わるくらいです。あとは、研究室の優先枠があるが、社基に進学してから興味が変わる人もいます。
Q7.緑地や都市計画、都市環境で地域おこし的な部分は学べますか?
A7.
H(緑地) :緑地でいうと、オープンスペースなどのデザインでしょうか。コミュニティは緑地の学科の授業では勉強しません。地域おこしの活動に関わる上で、緑地の勉強が役に立ったことはありました。
I(計画):座学の中で、実際に地域おこしをしている人の話を聞いたり、専門としている先生の話を聞いたりすることがあります。演習でも扱うことができて、私は福井で古民家や空き家を利用しつつ農業を体験するプログラムを計画しました。
Q8.都市工学と社基の1週間のコマ数や演習の頻度を教えていただきたいです。
A8.
I(計画):詳しくは時間割を参照してください。3年生からは週3で2コマあります。でも、2コマの時間内で終わることはなく家でやることになります。環境系も同じです。
K(社基):タームの授業が多いです。座学系の授業が2Aと3Sに多いですが、3Sは演習もあります。私は2Aで18コマ、3Sで22~23コマといっぱいとったので、3Aは演習2つに時間を注いでいました。4Sでは研究室のゼミとTAをやっています。演習は全部取る必要はなくて、2Aは導入プロジェクトと呼ばれる橋をみんなで作る授業が週1回、3Sの演習は4種類、3Aの演習は5種類ありました。力を入れたい演習に合わせて授業数を変えたりする人は多いです。
※時間割や授業の詳細は、この記事の冒頭やUT-BASEの紹介ページをご覧下さい。
分野横断ごとに学科を比較することで、より自分が興味のある学科を絞り込むことができると思います。学科のパンフレットを見るだけではなく、研究室のホームページを見たり教授にコンタクトをとったりするのもおすすめです。後悔のない進学選択を応援しています!